魔力測定
「アレクシア様はどの部活に入られるのですか?」
「わたくしは……刺繍クラブと料理クラブに入ろうと思っております。レティシア様はどのようになさるのですか?」
「わたくしは、音楽クラブと刺繍クラブに入ります」
フィーリアとレティシアは席を移動し、アレクシアと隣合って座っている。レティシアとアレクシアが話しているのをフィーリアは聞いている、という状態である。
「フィーリア様。ヴィセリオ様は何の部活に入っておられるのですか?」
レティシアがフィーリアを見てそう尋ねた。
「お兄様は、騎士クラブに入っていらっしゃいます。ですが、どの部活からも声がかかっているようで、色んな部活に顔を出している、と仰っていました」
ヴィセリオは運動神経も抜群で、どの競技にも対応できる。更に、彼の能力が飛び抜けているので、助っ人要請や指導を求める生徒が多いようだ。
彼が騎士クラブに入った理由は、顧問の教師から熱烈に声をかけられ、断る方が面倒だと判断したからだそう。兄らしい理由である。
「ヴィセリオ様は凄い方ですよね」
「学園には多大な迷惑をかけているようですけど」
レティシアの言葉に苦笑しながら、フィーリアは机の上で指を組んだ。兄が凄いという言葉に間違いは無いが、先日の様子を見ていると、普段から問題を起こしているのだろう。
「そういえば、次は魔力測定ですね」
アレクシアが時計に目を移してそう言った。彼女の言葉にフィーリアとレティシアは頷く。
魔力測定では、魔道具を用いて個々の魔力を測る。このように魔力の量を知る機会は少ないので、これはいい機会である。また、魔力量が多ければ多いほど、今後の魔法指導などで上位レベルの指導を受けることができるのだ。フィーリアの魔力はヴィセリオから少ないと言われているので、あまり期待はしていないが。
「早めに移動しておきますか」
アレクシアが立ち上がったので、フィーリアとレティシアも続いて席を立った。
魔力測定の会場は、入学の式が行われた場所と同じだった。会場には魔力測定の魔道具が約十個並べられている。魔道具の傍には測定結果を記録する人が立っている。
この魔道具には、透明な魔石が付けられており、魔力の量で魔石の色が変化する。色の変化がかなり細やかなので、詳しく知ることができる。
三人で並んで歩いていると、フィーリアは奥の方に見慣れた白髪の兄がいるのを見た。
「あら。あちらの方はヴィセリオ様ではありませんか。それに、ルーンもいます」
レティシアも兄の姿が見えたのか、そう言った。そして、ルーンオードがいるという言葉にフィーリアは反応して周囲を見渡す。
ヴィセリオの隣の魔道具に、遠目でも分かる深い蒼い瞳をした彼を見つけることができた。
フィーリアは驚いて目を丸くした。同時に視線を感じたのか、ルーンオードはフィーリアの方を見る。深い蒼い瞳とエメラルドの瞳が、交わった。
しばらく二人は見つめあっていたが、すっとルーンオードが視線を外した。
「ルーンというのは、聖騎士様のことですか?」
「ええ、そうです。ルーンオードは聖騎士で、わたくしの護衛を行ってくれています」
にこりと微笑んだレティシアの瞳には、彼に対する信頼が込められていた。その瞳を見ないよう、フィーリアは目を伏せる。
しかし、前方から足音が聞こえてきて、彼女は顔を上げた。
「フィア。次は君のクラスが魔力測定なのだね」
予想はしていたが、やはりヴィセリオである。彼は優しい笑みを浮かべ、フィーリアの頬を撫でた。




