5 アルミア視点
レイナお姉様が帰ってきましたわ。
わたくしの身代わりになってほしいとお願いしましたが、果たしてどうなったのか。
気になって気になって仕方がなかったため、レイナお姉様が帰ってきたことがわかったと同時に玄関まで急ぎました。
「おかえりなさいレイナお姉様ー! ちゃんと縁談をまとめてくれたのでしょう?」
「えぇ。ありがとう!」
なんだか妙に明るいレイナお姉様ですわ。きっと、地獄のような公爵邸から帰ってこれたから嬉しいのでしょう。
「アルミアは本当にこれで良かったのですか? 後悔しませんよね?」
レイナお姉様ったらなんでそんなことを聞くのかしら……。
まるで私がものすごーく勿体ないことをしたかのように言われいるような感じがします。
「ぜんっぜん! レイナお姉様が身代わりになってくれて、本当に感謝していますわー!」
「それなら、このまま私が嫁ぎますね」
主旨が読めましたわ。
レイナお姉様ったら、あまりにも酷い公爵令息を相手にしてきたから、疲れてしまったのでしょう。
だから私に擦りつけようとしてきているのですわ。
その手には引っかかりませんから!
レイナお姉様でも耐えられないということは、どう考えたってわたくしには荷が重すぎるもの。
お父様もお母様も、お金がいっぱい手に入ると喜んでいましたし、レイナお姉様には頑張って縁談を進めてもらわなくては。
レイナお姉様は、いつもわたくしのことを助けてくれたから、きっと今回も助けてくれます。
そう信じてお願いしたので、頑張って身代わりになってくださいませ。応援だけはしますわ。
「お父様たちにも報告しないと。そのあとすぐに荷物をまとめて出ていきますから、貸していた物は返してくれますか?」
「え!? それは困りますよー」
レイナお姉様ったら、そんなに急がなくても良いでしょう。
まだまだレイナお姉様の持っていた服やアクセサリーは持っていたいんです。
できれば返したくないんですよ。
「暫く帰ってこれないと思いますので……」
うわぁ、さっそく公爵邸の命令ですか。
きっと『あまりにも教育ができていませんからね、住み込みで公爵邸のルールを覚えてもらいますよ』とでも言われたんでしょう。
わたくしに対しては、ケチつけて公爵の部屋よりも狭い部屋を用意されましたっけ。公爵邸のルールとか言うのならば、わたくしの扱いも公爵夫人とした扱いをしてもらわないといけなかったのに。
ジュライトは敬語のくせに文句とお叱りしかしてこない悪魔のような人でしたわね。思い出しただけでも腹立たしいですわ。
あぁ、レイナお姉様ったら、お可哀想に。
同情の気持ちも込めて、せめて少しくらいは返してあげないといけませんわね。
「わかりましたよ。ちょっと待っててくださいね」
すぐに部屋へ戻り、借りている物の中で、ゴミだと思えるものを探しました。
「うーん……このスカートはわたくしのお気に入りになっていますし、このアクセサリーは絶対に返したくありませんわ。あ、これはもういいですわね。わたくしはもう着たくありませんし」
白いワンピースなんですが、ごはんを食べている時にソースをこぼしちゃいまして……。目立つところがソースまみれになってしまって……。
こんなもの着て外に出れませんが、レイナお姉様は一番気に入っているワンピースって言ってたから、これは返しましょう。
良かったですわー、これでレイナお姉様も少しは笑顔になってくれますわ!
「はい! これはもう着ないから返します。今までありがとうー」
「これだけ……ですか?」
「はい! 一番気に入っているって言ってたから、これは返します。でも残りのものはまだわたくしも使っているので、もう少し借りていたいのです」
「…………」
わたくしは、ちゃんと返したのだからお礼を言ったのに、レイナお姉様の表情が曇っているのはなぜですの?