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 私の人生初めて使う魔法のために、公爵邸の裏庭へと出てきた。

 裏庭は魔法専用の演習場まであり、ここでグレス様は鍛錬をしているそうだ。


「初めて放つ魔法は、適性者の基礎魔法が発動されます。私は水属性のため、もしも火が出てきたとしても止めることはできるでしょう」

「頼りになります。属性は大きく分けて火、水、風、無の四種類ですよね」

「そうです。仮にファルアーヌさんが風属性だとしても、水魔法の氷壁を出して止めることもできますのでご安心ください。無属性ならば何も起こりませんが、魔力を放ったと同時になにかしら特殊な固有魔法が使えるようになるはずです」


 私はどの属性魔法なのかがようやく知れると思うと、楽しみで仕方がない。

 希望としては、適性者が少ない無属性魔法。個人魔法とも呼ばれていて、その人の個性を活かした魔法が一つだけ使えるようになるという。

 さっそく初魔法をお披露目といこうではないか。


 魔導書で覚えたとおりに、体内に流れている魔力を両手に集めるように意識し、それを放出した。


『放て~!』


 この日をどれだけ待ち望んでいたことか。

 つい浮かれてしまい、楽しみながら詠唱してしまった。

 横で見守ってくれているグレス様は真剣な表情だったのに。


 ところが……。

 火も水も風も発動しなかった。かと言って無属性適性のようになにも起こらなかったわけではない。

 代わりに手から妙な光が閃光しただけで終わってしまった。


「あれ?」

「これは、まさか……」


 グレス様が驚いた表情を浮かべている。

 もしかして、私には魔力があっても、四属性いずれの適性もないのでは……。


「魔導書には書かれていない、伝説の光属性かもしれません!」

「はい?」


 なんなのだろうそれは。


「遠い昔、人類が滅亡しかけたと言われる厄災に襲われた際、四属性に属さない特殊な魔法で人類を救った者がいると聞いたことがあります」

「へ……? すると、私にもなにかそのような魔法が使えるということですか?」

「もしかしたら。しかも手に集めた魔力……相当なものです。明らかに私よりもはるか高い魔力をお持ちかと」


 スケールが大きすぎて頭の中が追いついてこない。


「光属性は、王宮にしか存在しない禁書に書かれていまして。あらゆる治癒ができるものの、過去百年間使える者は現れていないため禁書にだけ記しておく、と書かれていました」

「治癒……。苦い薬草を飲んで風邪を治したり、ヒリヒリする草を使って怪我を治したりすることをしなくても良いということになるのですか」

「そうだとしたら、これはとんでもないことですよ」


 治癒か……。それならば真っ先に試してみたいことがある。

 もしもこれで治すことができれば、グレス様が隠している怪我も……。


「もう一度魔法を放ってみてもよろしいでしょうか?」

「構いませんが、万が一にも光属性となれば、私は対処できないでしょう。魔力の消費も未知の世界です。くれぐれも無茶をしないでくださいね」

「ありがとうございます。では早速……」


 魔法の発動は詠唱しながら魔力を集中するのが基本だが、詠唱名は特に決まっておらず、人それぞれ。

 なるべく覚えやすい名前にしておくことにした。


『治癒したまえ、ヒール』

「なっ!?」


 私自身に魔法を放ったことに驚かれてしまったようで、慌てて近寄ってきた。しかも、私の顔のすぐそばにグレス様の美しい顔。

 別の意味で心拍数が上がっていることは言うまでもない。


「なにを考えているのですか! いきなり自分自身に魔法を使うなど、どれほど危険なことかお分かりでしょう?」


 ひどく心配されているようだ。親身になって怒ってくれているのが良くわかる。

 アルミアに対してもこういうことで怒っていたのかなと、ふと思った。


「申し訳ございません。治癒魔法だとすれば、自身で試してみるのが最善かと思いまして」

「確かにそうかもしれませんが、それでも念のために何度か試すべきです」


 一歩下がり、グレス様に頭を下げて謝罪する。


「ご心配おかけしてしまい、申し訳ございませんでした」

「無事で良かったです……本当に! ところで、なにか変化はありましたか?」

「え……えぇと……その……」


 私は、背中に残った傷を治癒しようと思い魔法を発動してみたのだ。

 服が触れるたびにヒリヒリとしていた背中の痛みが消えている。


 私……治癒魔法を使えるようになってしまった!


「グレス様の足の傷、治してみてもよろしいですか?」

「なぜ骨折していることを知っているのです?」


 骨折とまでは知らなかった。ただ痛めているんだなぁとしか……。

 折れているのにも関わらず歩くだなんて、無茶すぎる!


「以前一度だけお会いした時と歩き方が全く違いましたし、どこか右足を庇うような歩き方でしたので」

「はは……王宮では誰にも気が付かれなかったのに……。ファルアーヌさんは見抜く力も素晴らしいようですね」


 グレス様は右足の服をめくり、傷口を見せてきた。

 ……おいおいおい、腫れているし変な方向に曲がってしまっているではないか。

 骨折ってしっかりと安静にして治さないと、変な方向に骨が固定されてしまうこともあるんじゃないの?

 相当な無茶をしていたと思われる。


「どうしてこうなってまで無茶を!?」


 立場が上とか下とか、そんなことは後回し。

 グレス様のことが心配だったため、強い口調で聞いてしまった。

 なぜかグレス様は喜んでいるようだ。


「このくらいは耐えられます。それよりももっと苦しんでいる方が大勢いますから、弱音を吐くわけにはいかないと思っていたまでですよ」


 怪我をした痛みや苦しさは死ぬほど経験してきた。グレス様もこの痛みに苦しんでいたに違いない。


「治癒魔法をかけてみてもよろしいですか?」

「お言葉に甘え、お願いします」

「先ほどは人に魔法を発動することを心配されていましたよね……?」

「それはファルアーヌさん自身に発動したからですよ。私に対してならば構いません」


 言いたいことはあるが、ひとまず覚えたての治癒魔法を使ってみよう。

 先ほどと同じように両手に魔力を集める。

 そういえば、魔導書では何度も魔法を使うと疲れてくると書かれていたが、今のところなんの変化もない。

 まだまだ発動できそうだ。


『治癒したまえ、ヒール』

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