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第4話 スキル

《レベルが10に上がりました》

《条件を満たしました。種族『スケルトンファイター』へ進化が可能です》


 現実時間で一週間ほど後。洞窟を歩きながら襲い来るスケルトンをバッサバッサと――というほど華麗な戦い方はしていないが――薙ぎ倒し。ようやくレベルが10に上がったところでそんなメッセージが表示された。


 レベル上げだけでなく探索も順調に進んでおり、すでに洞窟のほぼ全域をマッピングし終えている。マッピング方法はメニューにあるメモ帳機能を使用している。昔、別のゲームをしていた頃に覚えたテクニックであり、SotMにもメモ帳があって助かった。


 探索の際に出口も見つけたが、外が明るかったので手前で引き返している。たとえ夜だったとしても、あの亀トカゲにリベンジするまで外へ出るつもりはないが。


 そういえば一度だけ、出口付近で他のプレイヤーと出会ったこともあった。突然のことで硬直している間に「お邪魔しました。頑張ってください!」と謎のエールを残して引き返していってしまった。あれは一体何だったのだろうか。


 突然話しかけられてもすぐに反応できるはずがない。もう少し心の準備をさせて欲しかった。またはもう少し返事を待って欲しかった。いや、それはアリアの勝手か。せめて次誰かに遭遇したらすぐに声を出せるよう心の準備はしておくとしよう。


 閑話休題。


 話を戻して進化である。『スケルトンファイター』という名前からして物理攻撃主体のようだが、これは今まで物理で殴って、または叩いてきたからだろう。順当な進化と言える。


 ちなみにSPを使って魔法スキルを取得することもできる。βテストのとき、アリアは初期種族でスライムを選択していた。そこで魔法主体のビルドをしていたためか、スライムメイジというモンスターへ進化したのは記憶に新しい。


 進化をすると基本的にステータスが上昇する。尖った種族への進化であればステータスの上昇幅も高いが、苦手分野のステータスはむしろ弱くなる可能性もある。先のスライムメイジだと、魔法の威力と耐性が大きく上昇した反面、物理には極端に弱くなった。


 しかも進化は不可逆、元へ戻すことはできない。どの種族へ進化するかは慎重に決める必要があるというわけだ。一応戻す手段は存在するが、残念ながら結構お高い課金アイテムである。リアルだとまだ学生のアリアでは手が出しにくい。


「まあ、今はまだ進化しませんけど」


 あの亀トカゲにはスケルトンのままお返ししてやりたい。意地というのもあるが、アリアは昔からゲームでちょっとした制限をかけるのが好きだった。


 進化のメッセージはそのままクローズしておき、代わりにメニュー画面を開く。進化先が判明したことで、SPの使い道が決定したからである。


 スキル取得画面を開き、その中から『STR強化』や『VIT強化』といった能力値強化のスキルを端から取得する。ただし魔法系の『INT強化』と『MND強化』だけは除く。魔法の抵抗や威力の軽減には役立つが、あの亀トカゲが魔法を使ってくる可能性は低い。


「……おお、一気に体が軽くなりましたね!」


 能力値強化スキルは現在の能力値をもとに割合で上昇していく。つまり素の能力値が高い状態で取得すれば、その分一気に変化が感じられるわけだ。それに特に意味はなく、むしろ慣れるのに時間がかかるだけなので、本来は低レベルのうちから取得すべきなのだが。


 続いて新しく『拳』、『体幹』、『武器の心得』という三つのスキルを取得する。『拳』は素手の攻撃が強くなり、『体幹』は体捌きがより上手くなる。そして『武器の心得』の説明文は『あなたは武器となり得る道具の扱いに明るい。武器の使用時に補正』というものだ。


 ずっと使っているホネ武器だが、正直武器とは言い難く、かと言って他に例えようもない。まさに『武器となり得る道具』の代表と言えるだろう。


 最後に『解体』を取得しておく。このスキルは『敵を倒した際のドロップアイテムの質が上昇する』という効果を持つ。すなわち、より質の高いホネ武器が入手できるはずだ。


 この洞窟には残念ながら武器になりそうなものが存在しなかった。強いて言えば石くらいだが、手のひらサイズ程度のものでは叩いても大してダメージは増えなかった。投げるとしても『投擲』スキルのない素の命中率などたかが知れている。


 『解体』で質の良いホネ武器が手に入ったら『拳』はいらないのでは? と一瞬脳裏を過ぎったが、万が一壊れたときの保険は必要だ。決して取る順番を間違えたわけではない。


「質の良いホネ武器。名づけてニューホネ武器。……ホネ武器Mk-Ⅱ? ……いや、どっちもないですね。ともかく、武器を手に入れたらボスに再挑戦しましょうか」


 強化スキルの効果は絶大で、今までの倍近くの速度で悪路な洞窟内を移動できている。それでいて躓くこともないのは『体幹』スキルの影響だろう。


 たまにメモ帳マップを確認しながらしばらく進むと、一個目の武器……ではなく、野生のスケルトンのご登場である。


 一気に詰め寄ってホネ武器を振り抜く。勢いのせいか、アリアのSTRが急増したせいか、はたまた『武器の心得』のせいか。おそらくそれら全部だろう、たった一撃でスケルトンは光となって消えていった。同時にホネ武器も砕け散った。


「あ……やってしまいました……」


 新品の武器はボス戦まで使わず取っておきたかったが、壊れてしまったものは仕方がない。次からは『拳』の検証でもするとしよう。


 ドロップしたホネ武器を拾い上げる。長さは変わらないものの、前よりも少し重い気がする。骨密度でも上がったのだろうか。


 軽く振り回してみると、ブンッという小気味良い音が鳴った。


「うん、いいですね。せっかくですしもう一個取っておきましょう」

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