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第14話 ハーピィ三姉妹

 マリ姉と呼ばれていたハーピィが戦闘開始ののろしを上げ、三人が時間差で突っ込んでくる。速い。けれど対応しきれない速度ではない。トカゲ亀のドロップを加工して作った甲羅の盾を使い、四方八方から繰り出される鉤爪の攻撃を防いでいく。


 しかしアリアの攻撃も当たらない。攻撃を防いだ次の瞬間には距離を開けられ、ホネの剣が届かないのだ。三次元的な動きによるヒットアンドアウェイとでも言うべきか。厄介極まりない。


「リネット、攻撃は任せました! スケルトンはリネットの援護を!」

「任された! 『ウィンドスラッシュ』!」


 当たらない剣は諦め防御に専念。攻撃はリネットに任せる。魔法ならヒットアンドアウェイも立体機動も関係ないだろう。


「させないわ!」

「それはこちらのセリフです」


 リネットのほうへ向かおうとした三人へ剣を振るう。マリ姉だけは引き止めることができたが、ユリとルリという二人は行ってしまった。


 まあ、あちらには上級スケルトンもつけている。そもそも『霊体』スキル持ちのリネットは物理相手に強いし、問題ないだろう。


 チラリと横目で見てみれば、リネットが放つ薄緑色の風の刃がハーピィたちを襲い、接近を拒んでいた。しかし彼女たちも魔法の対処には慣れているのか。ひらりひらりと紙一重で躱されてしまっている。


 その後もリネットは魔法を放ち続けるが一向に当たる気配がない。かなりMPの多いリネットとはいえ無尽蔵に魔法を撃てるわけではない。またアリアや上級スケルトンのHPも徐々に減ってきている。このままでは倒れるのも時間の問題だろう。


「アリアちゃん! あれ撃つからよろしくっ!」

「――! 分かりました!」


 何か対抗策を、と練っていたところでリネットから声がかかった。


 ハーピィたちに緊張が走るが、残念ながらそれはアリアの内心も同様である。なにせ符号など決めていない。『あれ』なんて言われても全く心当たりがないのだ。リネットが自信満々に告げたので、アリアもいかにもな風で応えただけ。要は出たとこ勝負である。


 攻撃の手を止めてマリ姉が上空へ逃げる。上級スケルトンに阻まれていた二人も合流し、防御体勢に入っている。下手な攻撃では受け切られるかさらに上空へ逃げられてしまうだろう。


「『パラライズ・ブリーズ』!」


 ――なるほど。上手い。


 魔法の発動とともに辺り一体に吹き始めたそよ風。しかしそれ以上何も起こらないことに不穏な空気を感じたのか。ハーピィたちが動こうとしたが、しかしすでに遅い。


「なっ! 体が!?」

「……しびれびれ」


 リネットが撃った――いや、まさに()()()()()魔法、『パラライズ・ブリーズ』。発動の間、術者は動けず、またMPを消費し続ける代わりに、この風の範囲内にいる相手を強制的に麻痺状態にするというデバフ攻撃である。


 おそらくアリア同様、あのハーピィたちも攻撃魔法が飛んでくると構えていただろう。その隙をついた見事な選択である。先のいかにも大技撃ちますよという合図もブラフになっていた……のかもしれない。


 そんなことを考えながらもハーピィたちに詰め寄る。相手は麻痺状態ながらも中空にいるため少し距離があるが、ならば届かせるまでである。


「『眷属生成』、屈んでください」


 手前に下級を一体作り出して屈ませ、背骨を蹴って跳躍。そして目の前に迫ったハーピィたちへ、ホネ剣を横一文字に振り切った。


 くぐもった叫び声が漏れるが、さすがにここまで勝ち残っている相手。一撃では倒せないようだ。とはいえのんびりもしていられない。おそらくあと十秒も持たずにリネットのMPが尽き、麻痺状態も解けてしまうだろう。


 三人とも倒すのは諦め、次の跳躍でリーダー格のマリ姉へホネ剣を突き刺す。さらに肩を掴み、そのままマリ姉を下にして地面へと落下した。


「ぅぐうっ!?」

「マリ姉! こんのっ!」


 さすがにホネ剣プラス墜落ダメージには耐えられなかったのか。マリ姉はポリゴンとなって砕けていった。と同時に麻痺が解けたのか、残った二人が突っ込んでくる。


「『ウィンドスラッシュ』!」


 さて二人相手にどうしようか、と考えたところへ飛来した魔法により片方が光へ。あっけに取られた様子の最後の一人も、すぐさまホネ剣で斬り伏せた。


 振り返るとサムズアップしているリネットの姿が。どうやらMPが尽きて『パラライズ・ブリーズ』が解けたわけではなく、あえて自ら解除してMPを温存。トドメの一撃へ回してくれたようだ。


「おつかれー、アリアちゃん」

「リネットもお疲れさまでした。凄く助かりました、ありがとうございます」

「いやあ、えへへ」


 リネットは照れたように頭をかいた。


 今回はリネットがいなかったら確実に負けていただろう。もしかしたら最初の一撃も避けられずにそこで終わっていた可能性すらある。本当に心強い相方だ。


 改めて周囲、今度は上空も含めて誰もいないことを確認。休憩がてらメニュー画面を開いてみると、残り50チームに減っていた。確か先ほど確認したときは54チームだったはずだ。一つは今のハーピィたちだとして、この戦闘の間に他にも3チーム倒れたことになる。


 やはりあまり悠長にしている時間はないようだ。


「リネット。ある程度回復したら、森の近くまで移動しませんか?」

「あ、さっき言いかけてたやつ? うん、いいよ。何か作戦があるんでしょ?」

「ええ。実は――」

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