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第10話 リネット

「落ち着いたところで自己紹介しましょうか。私はアリア。見ての通り種族は『スケルトン』の進化系です」

「わたしはリネットです! 種族は『ゴースト』から始めて、今は……えっと何だっけ? ……あ、そうそう、『ガスト・オ・ガイスト』です!」


 途中でメニュー画面をカンニングしていたようだが、確かに覚えにくい種族名だと思う。ガスト・オ・ガイスト――英語とドイツ語が混ざっている気がするが、訳すと突風の幽霊だろうか。なるほどさっきの風魔法と少女――リネットの姿にぴったり当てはまる種族名である。


 しかし『ガスト・オ・ガイスト』はもちろん、『ゴースト』も初めて聞いた種族名である。少なくともβテスト時では聞いたことがなく、初期種族選択の中にもなかったはずだ。となれば、リネットもアリア同様ランダム選択で引き当てたのだろう。


「それで、アリアさん」

「敬語じゃなくていいですよ、リネットさん。たぶんリアルだと同じくらいの歳でしょうし」

「あじゃあ遠慮なく。わたしのことも呼び捨てでいいよ。あと敬語も」

「これはもとからなのでお気になさらず」

「そうなんだ……? まいいや、で、この子たちって何? さっき眷属って言ってたけど」


 そういえばうっかり口を滑らせていたのだった。リネットが友好的だったから良かったものの、もしこれが敵対心を持つ相手だとしたら。そう考えると迂闊だったと言わざるを得ないだろう。


 とはいえ今さらリネットに隠しても仕方がない。アリアは骸の洞窟で起きたことをかいつまんで説明した。


「ほわあ……! 凄い凄い、わたしとほとんど同じだ!」

「同じ?」

「うん! わたしもこの洞窟、あ、ここ『死霊の洞窟』って言うんだけど――」


 それから語られたリネットのエピソードは非常に面白いものだった。


 ランダム選択で『ゴースト』になり、この死霊の洞窟でゲームを開始。徘徊している野生のゴーストを倒してレベルを上げ、最奥で待ち構えていたボスを討伐。そしてドロップアイテムを使用して『ガスト・オ・ガイスト』へ進化して今に至る。


 確かに概要だけ見ればアリアとほぼ同じではある。けれどリネットの語り口調がなかなか様になっていたのも相まって、思わず引き込まれてしまった。


「――で、最近は森をうろちょろ探検してたんだけどね。ひさしぶりに実家に帰ってみたらガイコツがいてもうびっくりだよ!」

「ああ、それは悪いことをしました。そういえば、さっき中級……スケルトンに使っていた風の魔法は種族的なものなのですか?」

「あー、あれね。進化してから覚えたものだけど、いちおう普通の魔法っぽいんだ」


 それからお互いのスキルについても共有しあった。


 リネットは『霊体』というスキルによってほぼ全ての物理攻撃に強い反面、魔法全般に弱いらしい。また攻撃は魔法に特化しているようで、物理型のアリアとは正反対のビルドと言えるだろう。


 もちろん共通している部分もあった。ともに『暗視』や『日光弱点』といった、アンデッドらしいスキルを初期から所持していたのだ。


「アンデッド仲間だね! あ、そうだ! せっかくだしフレンド登録しようよ!」


《プレイヤー名『リネット』からフレンド申請が届きました》


 言うが早いかメニュー画面を操作し、送られてきたフレンド申請。アリアはすぐさまその承諾ボタンを押した。


「えへへー。初めてのフレンドだ!」

「私もです。これからよろしくお願いしますね。……そ、そういえば。今度イベントありますよね?」

「うん。アリアちゃんはガイコツさんたちと一緒に出るの?」


 リネットが傍らに立っている下級スケルトン二体へ顔を向けた。釣られてアリアもそちらへ視線をやる。下級なので微動だにせず棒立ちしたままである。


 言われてみれば確かにスケルトン――眷属は参加人数に含まれるのだろうか。仮に含まれず、かつ連れて行けないのならまだ分かる。しかしいくらでも連れて行けるのだとしたら、イベントまでに大量に作っておき、それを持ち込むというパワープレイができてしまうのではなかろうか。


 また人数に含まれるのだとしたら、眷属で空いている二枠を埋めることも可能になる。そんな悲しいことをするくらいなら潔く一人で参加するが。いや、戦略的には連れて行くのが正解か。難しいところだ。


「……眷属が枠に含まれるかは運営に確認ですね。でも、もしよかったらですけど。その、い、一緒に参加しませんか?」

「え、いいの!? もちろん参加したい!」


 リネットの快い返事に思わずニヤけそうになるが、表情筋に頑張って力を入れてにっこり笑顔を浮かべるにとどめる。気を抜くと頬がだらしなく緩みそうだ。今以上にスケルトンのほうがよかったと思ったことはないだろう。


「ありがとうございます。なら、私とリネットの二人でパーティを組むということで。あと一枠はもし他に誰かいれば、いなかったらスケルトンか空きですね」

「はいはーい! ならさっそく、二人でアリアちゃん家のボスに挑戦したいです!」

「いや別に家じゃないですけど。でもいいですね。私もここのボスと戦ってみたいと思ってたところです」


 上手くいけばさらなる進化の手がかりになるかもしれない。そうでなくても経験値にはなるし、イベントへ向けたパーティの連携確認にも役立つだろう。


 遠距離攻撃の手段を持たないアリアは前衛決定。必然的にリネットが後衛になる。となると、今のホネ武器一本で前衛を努めるには少々心もとないだろう。これはイベントまでに何か考える必要がありそうだ。

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