holiday
薄いクリーム色のカーテンから、柔らかな朝の光が瞼をくすぐる。
ゆっくりと目を開け、ベッドの傍らに置いてある携帯で時間を確認する。
時刻は午前9時を少し過ぎたところ。
今日は日曜日。
慌ただしい平日とは打って変わり、時間を気にせずにゆっくり眠れる、なんとも愛おしい日である。
セミダブルのベッド。
その上で、私の右側から聞こえる小さな寝息…。
身体を左側に向け、すやすやと眠る彼の少し長めでふわりとした黒く、艶のある前髪をそっと撫でると、
何とも言えない気持ちが胸にじんわりと広がる。
一重で切れ長の目。
長いとは言えない程々な長さのまつげ。
面長な輪郭。
少し広めでいて、ちょっとぽってりした唇。
二十歳をゆうに越えてるのに、あどけない彼の寝顔をまじまじと見つめていると、不思議と心がほんわかとしてくる。
私はもう一度ベッドに潜り込み、彼を観察する。
華奢で長い、だが骨っぽい指。そっと彼の手を指でなぞってみる。
くすぐったいのだろうか?指が小さく動く。
まるで、眠っている猫が耳をピクッと動かす動作とイメージが重なり、何とも可愛いらしく、ほほえましい。
そっと手を重ねてみる。
2つの体温がひとつに溶け合うような感覚に、何とも言えない感情が込み上げ………
ちょっだけ、と泣きそうになった。
彼の右手を自らの頬にあてて目を閉じてみた。
左頬の愛おしい温かさ。
この温もりを失くしたら、私はきっと心の体温を失い、からっぽになってしまうだろう…。
そう考えたら、少し恐くなった………。
泣きたい気持ちを払拭する為にちょっと深めに深呼吸をして、ゆっくりと目を開けると、
彼が優しく笑って私を見つめていた。
「……おはよう。」
三日月のように目を細めて、くすっと小さく笑い、彼は私の頬をそっと撫で、その手を私の背中に回し身体を右側へと引き寄せる……。
しっぽりと彼の胸に収まる私の頭を撫でて、
「大丈夫、どこにもいかないから……。」
彼は小さく囁いた。
「……うん…。」
小さくつぶやくと、いよいよ堪えきれなくなって
涙が零れてしまった…。
そんな私に気付いた彼は、
「よし、今日は1日ベッドで過ごそう…♪」
わざとぎゅうっとその両腕に力を込める。
「ちょっ……!苦しい〜って!」
軽くクラクラする頭。
上気しっ放しの頬。
若干苦しくなってもがいてみるが、その腕から逃れられるはずもなく……
泣き笑いの私。
私の身体を包む彼の腕にしがみつき、重なる体温と2つの心音を全身で噛み締める……。
腕をそっと緩ませ、身体を少し起こして私を見つめる彼の瞳に吸い寄せられるように視線を合わせる………。
時間の流れが急にゆっくりになるような不思議な感覚…。
彼の顔がゆっくりと近付く……。
私はゆっくりと目を閉じて……。
甘い吐息が静かな部屋に漂う…………。
重なる体温は徐々に熱を帯びていく。
私は彼の首に両腕をそっと回した。
それから…………。
おしまい。




