ガキンチョ狂騒曲(後編)
しゅんたが偶然トイレで聞いた岩木達の悪巧みは、本当に単純バカなことだった。
三宅の家は岩木の家からわりと近い校区の端にある。
いつも三宅と仲良しの田辺、堀田とあけぼの神社の手前で別れて、そこから一人で家まで帰る。その距離は三宅の足で多分十分ないだろう。
岩木は、仲間の鈴川、八嶋と一緒にあけぼの神社で三宅を待ち伏せして、そこに連れ込み、日頃のムカつきを晴らすみたいだ。
いくら三宅が運動神経のいい乱暴モノとは言え、やっぱ女子だ。男子三人相手じゃ、きっと負けるだろう。
鈴川、八嶋はたいしたことはないが、岩木は体がデカい。身長は162センチ。体重は60キロ。
何かしらスポーツをやってるわけじゃないが、五年三組の中でもダントツに力はあるし何よりデカい。
三宅は身長152センチ。体重はわかんないけど、体は細めだ。動きは俊敏だけどパンチやキックは軽い。
実際俺も殴られてもさほどダメージはないのだ。
俺はというと、身長は145センチ。体重は40キロ。身長はチビだけど週末は少年野球をやってるから、腕力、体力にはちょっと自信がある。
しゅんたは俺と身長は変わらないけど体重は30キロしかないちょっとガリっちょだ。もちろん体力はさほどないから戦闘となるとあてにはならないけど、その頭脳は中々大したもんだ。
「ゴンザレスに隙を与える為にさ、やまいち(行き付けの駄菓子屋)で、クラッカーボールを調達しよう。ユウジ、この前梅祭りで買ったパチンカー、まだあるよね?」
「持ってるぜ!」
「それ、忘れずに持ってこいよ」
しゅんたはうひひっと笑う。
「おうっ♪絶対持ってく」 俺もうひひっと笑い返した。
「よし、ダッシュで帰って、自転車に乗ってやまいちで待ち合わせな♪」
◇
それから学校が終わり、俺としゅんたはダッシュで家に帰る。
学校から走って十分くらいで家に着いた俺は、ランドセルを部屋に放り投げて、机の中から小銭が少し入ってる財布と、パチンカーを出してポケットにねじ込み、白いヘルメットを被って階段を駆け降り、玄関を飛び出した。
自転車にまたがり、いざ駄菓子屋「やまいち」へ。俺より学校から家が近いしゅんたは、もうすでにやまいちの前で待っていた。
そこでクラッカーボール(五発入り五十円)を二つと腹ごしらえのお菓子をちょっと買って、戦闘の準備を整える。
俺はしゅんたにパチンカーを渡して、
「しゅんた、お前は援護射撃だけで絶対にバトルには加わるんじゃねーぞ。ヤバくなったら、絶対に三宅を連れて、三宅ん家に逃げろよ。今回お前は三宅を守ることが一番の仕事だ。じゃないと、クラスの女子に恩を売ることができないからな」
俺はしゅんたに念を押した。
「いやいや、大丈夫。絶対に俺らが勝つからさっ♪」
しゅんたは何故だか自信満々に笑う。
「…お前、絶対なんか企んでるな…?」
俺はしゅんたの笑顔に嫌でもワクワクが止まらない。
「別に~♪作戦はさっき立てた通り、俺の威嚇射撃の二発目でユウジが敵に突っ込む。で、俺は三宅を奪還して逃げる。ただそれだけ」
楽しそうにそう言って、しゅんたは自転車をこぎ始めた。
◇
やっちまった事に反省はちょっとだけするけど、すぐに忘れる。
んで後悔は絶対しない。
それが自分で正しいことじゃないって本当はわかってる。
でも、全部が正しくないなんてこと、実は世の中にはないって思ってる。
俺はまだ子供だけど、知らないことはまだまだたくさんあるけど、《大人》が子供はなんにも知らないと決めつけて、これが正しいことだって押し付ける《常識》ってやつは、いつだって全部が正しいことではないんじゃないかと疑いを持ってる。
だからさ、俺は自分がこれは正しいって思ったことを絶対に否定しないことに決めてる。
例え大人にワルガキ扱いされたって、ワルガキにはワルガキなりの《ルール》も《モラル》もあるんだ。
完全懲悪の無敵のヒーローにはなれない。でも、きっとこんな俺にだって誰か一人くらいを助ける為の力はあるはずなんだ。
俺は自転車のハンドルのギアをカチャカチャと切り替えて、胸の高鳴りと共に、ペダルを強く、強く踏み込んだ。
「しゅんた!ちょっと急ぐぞ!」
「了解っ!」
進路は(多分)北。
決戦地は、あけぼの神社。
◇
自転車を飛ばして岩木達に気付かれないよう回り道をして、十分くらいであけぼの神社に到着した。
自転車を表通りから見えないように裏手の茂みに隠して、俺達は周りを警戒しながら神社の階段をのぼり、境内の右横と左横に分かれ身を潜めて、ことが起こるのを待った。
五~六分待っただろか?何やら階段の下で声がするのが耳に入ってきた。
その声は聞き慣れた声で、俺は(来たな!)と心の中で気合いを入れる。 きっとしゅんたも、俺と同じように戦闘態勢に入ってるだろう。
「返せよっ!!!」
三宅の甲高い声が静かな神社に響く。
「返せして欲しけりゃ、黙ってついてこい!」
相変わらず鼻につくウザイ声は岩木の声だ。
俺は境内の横から様子を探る。鈴川が三宅の携帯電話を開き、握りしめてニヤニヤと笑ってる。
どうやら、携帯を人質に捕られているようだ。きっと、黙ってついてこなけりゃぶっ壊すって感じで脅したんだろう。卑怯なあいつらなら遣りかねないな。
「早く返せよ!!!」
三宅は、いきり立ち、鈴川をにらみつけている。
「返す前に、お前に散々やられた恨み、晴らしてやる」
岩木はポケットから携帯を取り出て、鈴川と八嶋に目で何やら合図を送った。
その合図で鈴川と八嶋は、両側から三宅が身動きがとれないように体を押さえつけて、境内の左の鳥居の横に立つ大きな樫の木に引き摺るように引っ張り、樫の木に押さえつけた。
「!!!なっ、なにすんだよっ!!!!」
三宅は暴れようともがくけど、さすがに男子二人に押さえられてるから、思うようにいかない。
「お前の恥ずかしい写真、ネットでばらまいてやる」
岩木は携帯を構えて、勝ち誇ったように高笑いした。
「!!!そっ、そんなことしたら、犯罪だぞ!!!」
三宅は自分の身に突然降り掛かった恐怖に顔を引きつらせながら叫んだ。
「は?犯罪?別に俺子供だもん。関係ないね」
岩木の言葉にますます顔を強張らせた。鈴川と八嶋は、三宅のスカートに手をかけて笑った。
「や、や…だ…、や…め」 三宅の顔はみるみるうちに泣き顔になっていく。
(ヤバイ!!!しゅんたぁああああっ!)
俺はしゅんたの合図を待つ余裕がなくなるくらいに腹ん中が煮え繰り返り、ムカつきがピークに達して、しゅんたの名前を心の中で叫び、境内から飛び出すつもりだった。
その時――――
パァアアーーンッッ!!!
とクラッカーボールの炸裂音が岩木の足元に響いた。
「!!!!」
パァアアーーンッッ!!!
今度は樫の木の鈴川達のちょっと上に響く炸裂音にびっくりした岩木は、携帯を落として、頭を抱える。
俺はしゅんたの二発目を合図に樫の木へと駆け出して、
「女子に何卑怯クセエことやってんだよぉおおおっ!!!!」
岩木に全力でタックルをかまして吹き飛ばした。
奇襲を受けた鈴川、八嶋は、はっとして三宅を押さえつけた手を離して、俺に向かってくる。
パァアアーーンッッ!!!
「うわぁあっ!!!」
鈴川、八嶋の足元にスナイパーしゅんたの放つクラッカーボールが炸裂して、二人は足を止めて辺りをぎょろぎょろと見渡し、しゅんたを探す。
「三宅っ!!!!何やってんだ!!さっさと逃げろっ!!!」
俺は茫然としている三宅に怒声を上げた。
はっと我に返り、鈴川が落とした人質の携帯を拾いあげて、
「よくも、よくも下衆いことしてくれたなぁあ…」
三宅は完全にぶちギレて、鈴川と八嶋に飛び掛かっていく。
「ば、バカヤローっ!!!!逃げろって―――!!!」
三宅に気を取られてたら、いきなり肩から肺にかけて重い痛みが走って視界がグラリと揺れた。
(何が起きた??)
空を仰ぎ考えた刹那―――
「げはっっ!!!!」
俺の上に岩木がドスンと馬乗りになり、
「お前、マジうぜえよ、消えろ」
ニヤリと笑う岩木の顔が見えた瞬間、左頬に鈍い痛みが響いた。
「ぁ……」
一瞬頭が真っ白になったけど、やられたらやり返すのが俺だ!!!
その時、
「岩木ぃいいっ!!!!」
しゅんたは名前を叫び、 俺らの足元に何かを投げつけた。
シュルシュルシュルシュル――――
「「げっ!!!!」」
俺と岩木はその音にビビって、慌ててそこから逃げようとしたが、
パァアアーーンッッ!!!
「いひゃあっ!!」
「うへやぁあっ!!!!」
炸裂音に耳を塞ぐ。
「ね、ネズミ花火っ!!!!」
そんなの聞いてねーぞ!しゅんたのヤローっ!!!!
「ほいさっ♪」
再度ネズミ花火に火をつけて、楽しそうにこっちに投げてくる。
「おまっ!!!!味方まで巻き添えかよっ!!」
焦る俺にしゅんたは、
「ちゃんと援護して助けたじゃん♪」
けらけらと楽しそうに笑ってやがる。
「そーれ♪」
しゅんたは三宅達のほうにもネズミ花火を投げ込み笑う。
「きゃぁああっ!!!」
「えへぁあっ!!」
「うわぁああっ!!」
慌てて逃げまどう三人を見て、
「三宅ぇー、だから逃げろっていったじゃーん♪」
何とものんきに笑ってやがる。
俺は岩木をにらみつけて、
「テメーみたいな男のクズは絶対に許さねーからな」 身体を構えるが、岩木の様子がおかしい。
「ぁ…ぁ…」
俺を見つめて、みるみるうちに顔が青ざめていく。
(なんだよ?こいつ)
そう思った瞬間………
ポタ ポタ ポタ
俺の耳の後ろから何かが地面に落ちた。
「ぁ…ぁ…お、…俺…」
岩木は地面を指さしてガタガタと震え出す。
「??………」
地面を見ると、赤い染みが点になり、ポタポタと俺の足元に広がっている。
「ぇ…?」
俺は耳の上の頭に手を触れた。
ぬるりとした冷たい感触に、背中がすっと寒くなり、手をみたら、真っ赤に染まってた。
(やべぇ、頭切れた!)
辺りは静まり数秒静まり返り、
「「うわぁあああああっ!!!」」
鈴川と八嶋は叫び声を上げて逃げ出した。
「や、や、やべぇっ!!!!」 岩木も青ざめたまま慌てて逃げ出してしまった。
「ユウジぃいっ!!!」
「森山ぁあっ!!!!」
慌てて瞬間と三宅が俺に走り寄る。
「び、病院っ!!お、お母さんにっ!!!!」
三宅は俺の血をみて相当パニックになってるみたいで、ポケットからハンカチを取り出し泣きそうな顔でおたおたしている。
「ったく…、大げさだって。あのな、頭ってちょっと切れただけでも、血はいっぱいでるもんなんだって」
実は俺は頭を切ったのは初めてじゃなくて、もう3回目だから、たいして慌てない。
三宅からハンカチを借りて、傷を押さえて笑った。
「ぁ…の……、」
三宅は俯いて、両手をぎゅっと握りしめて、
「ご、…ごめ……」
緊張から解放されたのか、三宅はぼろぼろと泣き出して、小さく「ごめん…、ありがとう…」とつぶやいた。
「いや、俺のほうこそ、……そのぉ、この前は…本当悪かったな。スカート破っちまって…」
俺は何だか照れくさくて笑ってしまったが、けじめとして、ちゃんと三宅に謝った。
「それに、岩木達はあんなのでもうちのクラスの男子だ。一応仲間だから、やっちゃいけないことを止めるのは当たり前だ」
「……私、女子にクラス戦争やめるように言うよ」
三宅はトレーナーの袖口でぐしぐしと目を擦り、
「もう、バカみたいな戦争はやめよう。あんたは、敵の大将であるはずの私を守ってくれた《英雄》だよ」
三宅は真っ赤になった目と顔でにかっと笑ってそう言った。
「俺も《智将》として称えて欲しいよな」
そう言って笑うしゅんたに、
「あっ、お前、さっきはよくもネズミ花火なんて怖えー攻撃しやがったな!」
「つーか!中嶋ぁ、子供だけで火なんか使っちゃダメだろ!学校にばれたらヤバイことに―――」
「もう、しっかりばれてるぞぉおっ。」
「「「か、川島先生」」」
万事休す……。
最後の最後でこれかよぉおお………。
◇
俺達は学校へ連れていかれ、親を呼びだされ、とりあえず俺は先に病院へ行き頭を三針ほど縫って学校にとんぼ返りした。
車ん中で母ちゃんに事情わ話したら、
「全くぅ、バカばっかりやって心配ばっかりかけて!」
母ちゃんはそう怒ったけど、
「でも、偉いよ、あんたよく助けたよ。火遊びは許さないけど」
「ち、違うって!あれはしゅんたが勝手に―――」
言い訳無用!誰がとかは関係ないよ。悪さに関わった奴らはみんな同罪なんだから」
母ちゃんはニヤリと笑って俺のほっぺたにぺちんとデコピンした。
「いってぇ…怪我してんだからちょっとは優しくしてよ」
俺はほっぺたを擦りながら苦笑いした。
◇
学校での事情聴取が終わり、解放されたのは、六時半を過ぎた頃。
携帯で悪事を働こうとした岩木は、岩木の母ちゃんにしこたま叱られ、泣いて三宅と俺に謝った。携帯電話は没収されて、岩木の母ちゃんも俺の母ちゃんと三宅の母ちゃんに泣きながら「金輪際、二度とこのような…」と謝りながら何度も頭を下げてた。
三宅の母ちゃんは、俺としゅんたに何度もありがとうと涙ながらにお礼をいってくれた。
「いえ、俺、この前はスカートのことで三宅に迷惑かけたから。あの時は本当にごめんなさい」
もう一度そう謝った。
なんか、しゅんたとちょっとすっきりいい気分になってたら、しゅんたの母ちゃんはしゅんたの頭をぺしんっと叩いて、「子供がライターを持って使うなんてっ!火事になったら取り返しがつかないんだよ!」
案の定、スゲー叱られた。
「おばさん、ごめんなさい。しゅんたを怒らないで。しゅんたがいなかったら、俺、きっとこんな怪我じゃ済まなかったと思うから」 俺はしゅんたの母ちゃんに頭を下げた。
「私も!中嶋と森山が助けてくれなかったら……」
三宅も中嶋をかばって頭を下げた。
「……俊太、…あんた、よかったね。いい友達に恵まれて」
再度しゅんたの頭を叩いて、しゅんたの母ちゃんは声を潤ませた。しゅんたは「へへへ…」と照れくさそうに笑った。
「今回は充分反省してるようですので、私のほうからは子供達に何も言うつもりはありませんが、私の監督不行き届きでお母さん方に大変なご迷惑をおかけした事、深くお詫び申し上げます。今後はしっかりと…」 川島先生は深々と頭を下げて母ちゃん達に謝った。
母ちゃん達もそれぞれ謝罪の言葉を掛け合い、今日の騒動は幕を下ろした。
帰り際に川島先生が、
「森山ぁ、悪かったな。ちゃんと気付いてやれなくて、怪我させちまって…、」 そう言った後、小さな声で、「三宅を助けてくれてありがとな」と言って笑った。俺は小さく頷いて、
「先生、クラスの戦争はもう終わるから」と俺も小さな声で言って先生に笑った。
川島先生は、嬉しそうに頷いて笑ってた。
◇
翌日、傷を縫った頭に白いネットをかぶり登校した俺に、クラスのみんながどよめいた。
「なになに?」
「ユウジ、なんかメロンみてえだなぁ♪」
「森山、またバカやって怪我したんじゃない?」
「本当、男子って最悪」
「だよね」
何事かと集まってくるクラスの男子に、わざと聞こえるように陰口を叩く女子。
三宅は自分の席から、教卓に移動して、机をバンッと叩く。教室は三宅に注目して静かになった。
「女子のみんな、五年三組のクラス戦争は今日でおしまいにしようっ!森山の頭の傷は、私を助けてできた名誉の負傷だ!」
「えーっ!!!!そうなの?」「森山がまりちゃんを助けた?」
「うっそー!!!」
クラスがどよめく。
「私が階段から足を踏み外して転びそうだったところを森山が助けてくれた。んで、その時に頭が切れて三針も縫う怪我をしてしまった」
もちろん全部嘘だ。
でも、岩木達もクラスメートだから、本当にあったことは言わないでおこうと決めたのは、三宅だった。
俺もそれは賛成だった。
やったことは悪いこと。でも、岩木達を悪者扱いしてそんな目で見るのもぶっちゃけ馬鹿らしいと思ってる。昨日の岩木達の涙、そして何よりも、岩木の母ちゃんの涙が忘れられないから。
馬鹿な息子を持って苦労すると笑って許してくれた俺の母ちゃんも、岩木の母ちゃんも、きっとおんなじ気持ちなんだよ、きっと。
『バカな子ほどかわいい』 うちの母ちゃんがよく言う言葉だけど、岩木の母ちゃんだって、きっと、岩木のことをそう思ってると思うから。
こうして、俺達のクラスの戦争は終戦を告げた。
◇
それから、待ちに待った給食の時間がやってきた。
「今日の給食はソフト麺♪ミートソース♪それから、ヨーグルトぉおっ♪」
俺は浮かれて配膳係の登場を待つ。
「「森山ぁ……」」
俺の目の前の女子二人がすまなそうに、
「お願い、牛乳、飲んで。あと、ソフト麺、私達半分しかいらないからさ、ひとつ、食べてくれる?」
ひゃっほい!!!
待ってましたぁああっ!!!
「しょうがねーなぁ♪」
とかいいながら、明らかに浮かれる俺を見て、
「やっぱ、男子と喧嘩になると、私達も困ることがたくさんあったよ。体育の準備とか、重いもの運ぶ時とか、残しちゃいけない給食を食べなきゃいけないとかさ…」
「俺らもだよ。給食は乏しいし、掃除とか大変だったし…」
そんなことを言い合い、お互い、へへへっと向かい合わせで笑った。
「やっぱ、クラスは仲いいほうがいいよな♪」
となりでしゅんたが笑う。
「おう、そうだな♪」
俺は増えた給食を見つめてほくほくと笑った。
いただきますをして給食が始まり、俺はウキウキ気分でソフト麺を食べる。ミートソースはもち、おかわりで。
ちらっと教卓の前の三宅を見ると、スゲー勢いで食ってるしっ!
(くっそ、あいつもおかわりだな!)
俺も負けじとソフト麺をかっ込み、ミートソースの寸胴へ小走りする。
でも、やっぱ三宅の方が早い。
「へっへへーん♪お先にぃ~♪」
「ぁああっ!!!お前っ!!盛り過ぎじゃね?」
「うるせー、早いもの勝ちだ!」
いつものようにたっぷりと器に盛り笑う。
「むふふ、今日もデザートは私がいただくぜ♪」
「ちきしょー、今日は絶対勝つぞぉお!!」
「はんっ♪ザビエルの分際で生意気な」
「うるせー平安美人」
「なんだとうるぁあっ!」「テメーが先にザビエルって言ったんだろーが!!」
「また始まった…、お前ら漫才師にでもなったら?」
川島先生はクスクスと笑って俺らを見た。
「「誰がこんな奴と!!」」
あ、ハモッちまった。
「仲いいなあ~」
「ひゅーひゅー♪」
「お前ら付き合っちゃえよ♪」
「「じょーだんじゃねーよっ!!!!」」
俺と三宅のハモリでクラスは大爆笑。
((…ま、いいか。ウケたなら))
俺と三宅も顔を見合せて笑った。




