斎藤さん家のクリスマス~父と猫科のモンスター2~
どうも、お久しぶりのラブリーな鯖トラ模様のオス猫、チョビ(2才)ですにゃ。
僕の住むこの斎藤家は、クリスマスとかいうのにちょっとウカレた感じになってるにゃ。
リビングにはへんてこりんな木になにやら飾りが施されて、僕の昼寝場所を占拠されてちょっとムカついてるにゃ…。
しかも、このへんてこりんな木はどうしてか、猫の狩猟魂をたきつけて止まないのにゃ!
ああ、あの真っ赤な丸〜い球っ!
是非とも僕のウルトラ猫パンチを食らわしてやりたいにゃっ!
……でも、それをやったら、和美さん(斉藤家の真のボスにして僕の心の師匠にゃ)に叱られるのにゃ。
う〜ん、クリスマスとは猫にとってはストレスなのにゃ……。
「お父さ〜ん♪」
むむっ…、アンナちゃん(斉藤家の一人娘10才)の猫撫で声にゃ。
ソファーに座り新聞を読むとしひろ(一応斉藤家の主)は、アンナちゃんの声に反応して新聞をたたみ置き、
「アンナ、最近随分とご機嫌だね。」
相変わらずしまりのない顔で笑ってるにゃ…。
としひろはアンナちゃんが最近毎日優しく話しかけてくるのがとっても嬉しいらしいのにゃ…。
アンナちゃんのその無邪気な笑顔には、当たり前のように《裏》がある事に、いい加減気付けにゃいのか??
毎度の事ながらに僕は呆れてため息をついたにゃ…。
「サンタさんはアンナのところに来るかなぁ?」
アンナちゃんはとしひろの隣に座り、ごろにゃーんと鳴き声をあげそうな感じで甘えてるにゃ。
「うーん、どうかなぁ?それはサンタさんじゃないとわからないね。」
とか言いつつ、としひろの顔はとろけそうな幸せ笑顔にゃ。
…としひろ、目を覚ませ。
アンナちゃんは「サンタ」は本当は誰だかもうとっくに知ってるにゃ…。
アンナちゃんはただ、自分の欲しいプレゼントがちゃんと貰えるように媚びを売ってるだけなのにゃぞ!
…まあ、そんな事を僕が教えてあげようと思っても人間に猫の言葉は通じないのはわかっているから無駄な事だとは百も承知にゃんだけどね。
そして、アンナちゃんのお目当てのプレゼントは、キッチンの右上の棚の中にもうすでにスタンバイして、クリスマスイヴを待っているという事も実は僕は知っているのにゃ。
「サンタさんにアンナのお願い、届くといいなぁ〜♪」
としひろのハートをわしづかみするキラースマイルを披露して、アンナちゃんは物欲の為に頑張っちゃってるし。
「その前に通知表よねぇ〜♪」
アンナちゃんの母で、この斉藤家の陰の支配者である和美さんは、おやつのクッキーと紅茶を運びながらにんまりと笑みを浮かべる。
アンナちゃんの顔色が一瞬曇るのを僕は見逃すわけがなく…。
「通知表が悪かったら、多分サンタさんは来ないわよ。」
クッションを座布団代わりにカーペットに座り、クッキーをパクリと頬張りニヤニヤとアンナちゃんを見つめる和美さんにアンナちゃんは、
「だ、大丈夫だもんっ。アンナ、超頑張ったし」
ふふんっと大ミエをきってるけど、実は部屋で
「算数ヤバイ…社会もヤバイ……ぶつぶつ……」
な〜んてずーんと沈み、呪文のような言葉をつぶやいていたにゃ。
だからアンナちゃんはこうしてとしひろに、ごろにゃーんと甘えてるのにゃ。
まぁ、人間の子供も中々大変なのだにゃ。
しかし、僕はおおいに不満だね。
だって、僕は斉藤家の家族のはずにゃのに、クリスマスプレゼントを貰えにゃいのだから……。
いや、この際クリスマスプレゼントなんて別にどうでもいいにゃ。
僕が欲しいのはただひとつ………むふふっ。
◇
「……算数、下がってるし…。」
和美さんは通知表を見つめて小さくため息をこぼした。
終業式を終えて帰宅したアンナちゃんは、リビングのカーペットの上に正座して眉をしかめて、口をへの字にして俯き何やら考え事をしているようだにゃ。
「…社会もちょっと微妙よね…。」
和美さんの眉毛と眉毛の間にしわが……。
「で、でもね、アンナ、体育は5だよっ!家庭科だって頑張って、4に上がったんだからっ!」
アンナちゃんは和美さんに擦り寄り自らの頑張りをアピールする。
「んんっ?」
通知表を凝視して唸る和美さん。
不安げな顔のアンナちゃん…。
うーん、やっぱりアンナちゃんは和美さんには勝てないと見た。
普段は傍若無人な猫科のモンスターも、ボスの前ではかわいい子猫だにゃ……。
いやはや、さすがは和美さん。僕はやっぱり和美さんを師と決めて正解だったにゃ〜。
「…アンナぁ…」
和美さんはソファーから降りて、アンナちゃんの前にちょこんと座り、
「…お父さん、喜ぶねぇ〜…♪」
通知表を指さした後、和美さんはアンナちゃんをぎゅっと抱きしめた。
ん?何が起きたにゃ?
さっぱりわかんにゃい。
アンナちゃんは、頬をほんのりと赤らめて、
「べっ、別にたいした意味はないんだからっ!ただ、家庭科の授業で……………。」
なにやら照れながら、和美さんにごにょごにょと言ったのにゃ。
「うんうん、よしよし♪もうお説教はやめやめっ♪さて、お昼ご飯にしよう♪」
和美さんはご機嫌で立ち上がって、リビングから台所へと歩いていった。
「……ふぅ…、何とか助かった…。」
アンナちゃんはホッと胸を撫で下ろしてつぶやいた。
◇
お昼ご飯が終わり、アンナちゃんと僕はいつも通り部屋へと向かう。
部屋に入って僕はアンナちゃんのベッドに飛び乗り、心地よい毛布の上でくつろぐ。
アンナちゃんは、机の引き出しから何かを出して、
「…ねぇ、チョビ…これみてっ♪」
僕に向かい笑顔を向けたのにゃ。
「にゃ〜…(何なのにゃ?それ)」
僕はアンナちゃんが手に持つそれを見て首を傾げた。
「…ふふっ♪じゃーーんっ♪ほら見てっ♪マフラーだよ♪」
アンナちゃんは何やら長〜いふかふかとしたものを伸ばして笑った。
ふにゃっ!!
長〜いものの先には僕の胸をくすぐるふさふさの毛っ!!
僕はベッドの上、耳をぴーんと立てて、尻尾をゆっくり揺らして、
「うにゃーーーんっ!」
長いものの、ふさふさに飛びついた。
「あーーっ!!ダメっ!」
アンナちゃんは絶叫するけど、一度火がついた僕の遊び心は止まらなくて、
「にゃにゃにゃっ!!」
僕は長いマフラーとかいうのに爪を立て、戦った。
にゃっ!つっ、爪が 引っ掛かったにゃん!
「チョビっ!!!!」
僕はアンナちゃんの怒鳴り声にビクッ!と体をすくめたにゃ。
「・・・にゃ?」
僕は恐る恐るアンナちゃんを見た。
アンナちゃんはとても恐い顔で僕を睨みつけて、僕の爪に絡まるマフラーを外した。
「……毛糸がほつれちゃったじゃん。」
アンナちゃんは悲しそうな顔でマフラーからぴよーんと飛び出したひもを見つめて、
「チョビのバカっ!!これはお父さんのクリスマスプレゼントにアンナが学校で一生懸命作った大切なマフラーだったのにっ!!!」
アンナちゃんはくりっとした目から、ぽろぽろと涙をこぼして
「チョビなんか大嫌いっ!!」
僕は、ひょいと抱えられて、アンナちゃんの部屋から追い出されてしまった。
…僕はとんでもない事をしでかしてしまったのにゃ……。
あのアンナちゃんが心をこめてとしひろの為に作ったマフラーを、おもちゃと勘違いして台なしにしてしまったのにゃ………………
「にゃぁああ〜(ごめんよぉ、アンナちゃん)」
僕はアンナちゃんの部屋のドアの前で謝ったけど、中からは何の反応も帰ってこなかった。
…どうしよう。
どうしよう、どうしよう。
はっ!困った時は和美さん!
和美さーん!助けて下さいっ!!
僕は和美さんのいるリビングへ走った。
◇
リビングへ行くと和美さんはテレビを観ていた。
「にゃーっ!にゃーっ!」
僕は和美さんの足元に擦り寄り、何とか和美さんを二階のアンナちゃんの元へと連れだそうと頑張った。
「何?チョビ、お腹空いたの?」
和美さんは僕を抱きあげるけど、僕は暴れて和美さんの腕から飛び降りて、
「にゃー、にゃー、にゃー、にゃー!」
ひたすら鳴いて二階を見た。
すると、
「…何?…もしかして、二階に行けって事?」
「にゃあああ〜っ!」
僕は「そうです。」と返事をして二階の階段へ。
和美さんはソファーから立ち上がり、僕の後について二階に上がる。
二階のアンナちゃんの部屋の前に止まり、小さく「にゃぁ…」と鳴いた。
和美さんはドアの前に立ち、耳を澄まして中の様子を探る。
すると、中からしくしくとアンナちゃんの泣き声が……。
「アンナ、入るよ。」
コンコンとノックして和美さんはドアを開け、中に入っていったにゃ…。
僕はアンナちゃんに叱られるのがいやだから、中に入るのはやめた。
一階に降りて、アンナちゃんがどうしたら怒りを鎮めてくれるか考える……。
考える……。
考え………ZZz……
すまん。。。
猫ののーみそなんてそんなもんにゃ・・・・
◇
(う〜、寒いにゃ…)
目を覚ますと、窓にはしっかりとカーテンが閉められ、リビングには電気がついていたにゃ。
台所からは何やらおいしそうな匂い−−−と言う事は、もう夕方を過ぎている時間だにゃ…。
僕は台所へ歩き、和美さんの足元に擦り寄り小さく「にゃー」と鳴いた。
「チョビ、起きたの?」
和美さんは夕飯の支度の手を止めると、僕を抱き上げて、
「もう大丈夫よ。アンナのマフラー、治ったからね。」
和美さんは僕の頭を撫でて優しい顔で笑った。
「にゃあ〜…(和美さん…ありがとう)」
僕が人間なら、きっと涙をこぼして和美さんに抱き着きお礼を言えるのに……。
僕は猫だから、体を擦り寄せて和美さんに喉を鳴らして甘える事くらいしかできないにゃ…。
本当にごめんなさい。
和美さん。アンナちゃん。
そんな僕の気持ちを察してくれたのか、和美さんは、
「いいんだよ、チョビも十分反省してるんでしょ?」
僕の頭を撫でて、冷蔵庫を開けて、
「アンナが泣いてる事、教えてくれてありがとう。さすがチョビはウチの家族ね。」
僕にちくわをひとちぎりくれた。
ちくわも勿論嬉しかったけど、それよりも、ウチの家族って言葉が嬉しくて嬉しくて……。
でもちくわもおいしくて……。
僕は斉藤家に来た事を心から幸せだと感じた。
ちくわを食べ終えると、アンナちゃんが二階から降りてきた。
僕はアンナちゃんに駆け寄り、
「うにゃ〜んっ!(アンナちゃん!本当にごめんよぉおっ)」
アンナちゃんの肩に飛び乗ってほお擦りした。
「…もう、チョビはいたずらっこなんだからぁ。」
アンナちゃんは小さく照れ笑いして、
「…さっきは怒ってごめんね…。」
僕の頭を撫でてくれた。
アンナちゃん……。
僕のほうこそ本当にごめんね。
僕はアンナちゃんの頬に顔をすりすりした。
アンナちゃんは、くすぐったそうに笑ってた。
◇
時間は進み、12月24日。
斉藤家は朝からとても浮足立っていた。
朝ごはんを済ませ会社へ向かうとしひろを、和美さんとアンナちゃん、そして僕は玄関で
「いってらっしゃ〜い、車に気をつけてね。」
「お父さん、今日はなるべく早く帰ってきてねっ♪」
「にゃ〜(頼まれたケーキ、忘れるなよ)」
見送った後、
「アンナ、今日はご馳走作っちゃうから買い物とお手伝い、お願いね♪」
和美さんはにこやかに笑う。
「お母さん、今日シチュー作る?」
アンナちゃんの問い掛けに
「もっちろん♪だってお父さんの大好物だもん♪」
和美さんも幸せそうに笑ったにゃ。
う〜ん、シチュー…、僕も大好物にゃ♪
「さてと、お洗濯とお掃除を済ませて、買い物買い物っ♪」
僕はちゃんとおウチで留守番してるにゃ。
斉藤家の留守は僕が守るのにゃっ!
◇
和美さんは家事仕事を、アンナちゃんは冬休みの宿題を済ませ、買い物に出掛けたにゃ。
僕はリビングのレースのカーテンから降り注ぐ、あったかーい陽射しの中でまったりとお昼寝にゃ。
いやいや、ちゃーんと留守は守ってるにゃ…
ZZz………
目が覚めるとほんわかと漂ういいにおい♪
シチューの匂いにゃ♪
あ〜ん、早く食べたいにゃっ♪
台所からは和美さんとアンナちゃんの楽しそうな声。
僕は台所に歩み寄り二人の足に絡み付く。
「…チョビ、シチューのおねだりしてるし。」
アンナちゃんは笑う。
「ダメよ〜、チョビ、今日はお父さんが帰ってくるまで我慢だよ。」
にゃふ〜ん……。
としひろ、早く帰ってこーーいっ!!
ピンポ〜ン
うにゃっ!としひろにゃんっ!♪
僕は一目散に玄関に駆け出す。
その後にアンナちゃんが続く。
「ただいま〜。」
としひろはケーキの箱を片手に笑顔で帰宅したにゃ。
「お帰りなさいっ♪」
アンナちゃんはご機嫌で笑う。
「おっ、アンナ、エプロン姿だ。お母さんのお手伝いしてたんだね。」
としひろはにこやかにアンナちゃんの頭を撫でた。
「アンナは超いい子だってサンタさんにアピールしなくちゃっ♪」
アンナちゃんは、えっへっへと浮かれ笑う。
としひろはうんうんと頷きほほ笑むと、いつものように着替えとお風呂に向かった。
◇
台所の横のテーブルにはケーキに、シチュー、緑の葉っぱに……。
ごくりっ
はにゃにゃはぁ〜ん♪
我が麗しの、鳥の丸焼きだにゃ〜〜っ♪♪
う〜ん、かぶりつきたいっ!
独り占めしたいっ!
あれをまるごと食べられるなら、僕は明日死んでも悔いは残らないにゃっ!!
…うそにゃ。死んでしまうのは嫌なのにゃ。
僕はこの斉藤家で尻尾が『二股』に分かれるまで生きていたいのにゃ♪
おっ!としひろが風呂から出てきたにゃっ♪
やっとご馳走が食べられるのにゃっ♪♪
狂喜乱舞したい気持ちをぐっと堪えて、僕はテーブルの下でご馳走をまつのにゃ。
ああ、和美さん。
僕にもどうか鳥の丸焼きのおすそ分けをお願いします〜っ♪
僕は和美さんの背中を見つめて心の中で拝んだ。
「さて…と♪」
席についた和美さんは、「アンナ。」
和美さんはアンナちゃんの腕を肘で軽く突く。
テーブルの下のアンナちゃんの膝の上には、赤い袋と通知表が…。
「…あ、あのさぁ、………………これ。」
このもじもじした声は、照れてる時のアンナちゃんの声だ。
テーブルの下の赤い袋と通知表がテーブルの上に上がる。
「……。」
ん?沈黙してるにゃ。
僕は気になり台所の調理台から冷蔵庫に飛び乗ってそのやり取りを見つめた。
「……。」
としひろは、あの時の和美さんと同じように通知表を見つめてるにゃ。
「アンナね、家庭科の時にとても頑張ったんだって♪」
「…うん。お父さんの為のプレゼント作りを、一生懸命頑張っていましたって書いてある…。」
としひろは目をうるうるさせてるにゃ。
袋から取り出されたねずみ色のマフラーをしげしげと見つめて、
「嬉しい…、本当に嬉しいよ、アンナ…ありがとう。」
あ〜あぁ、やっぱり泣いちゃったにゃ…。
でも、今日はとしひろのその涙の気持ち、僕にもわかる気がするにゃ。
大事な娘からの心のこもったプレゼントは、やっぱり嬉しいものなんだにゃ。
「明日から早速会社にこのマフラーをしていくよ♪会社のみんなに自慢しなきゃ。」
そう言って、としひろはマフラーを大切そうに袋にしまい、急いで自室にしまいに行った。
「よかったね、アンナ、お父さんすごく喜んでるよ。」
「…ふん、お父さんはいっつも大袈裟なんだよ。」
そう言いつつ、嬉しそうに笑うアンナちゃん。
全く、素直じゃないにゃ〜。
それから、テーブルについて、いよいよご馳走を食べる時間が訪れる。
僕は冷蔵庫から床に飛び降りて、鳥の丸焼きの行く末を見つめる。
和美さんは鳥をナイフで切り分けて、銘々の皿に盛り付ける。
か、和美さぁあ〜ん!
僕にも鳥をっ!!
僕は和美さんに熱い視線を投げ掛ける。
「はいはい、チョビにもちゃんとあげるからね♪」
か、和美さぁあ〜んっ!♪
僕は猫だけど、思わず尻尾をふりふりしたくなってしまうくらい嬉しいにゃっ♪
和美さんは僕のお皿に程よく冷めたシチューと、鳥を入れてくれた。
うにゃっ!
す、少ないよっ!
僕はとしひろの皿にギラリと目を光らせた。
「うにゃ〜ん♪」
僕はとしひろの膝に飛び乗り、その体によじ登ると、としひろの皿の鳥をバクリっ!とくわえて膝から飛び降りた。
エッヘッヘ♪いただきにゃんっ☆
「あ〜〜っ!!!僕のチキンっ!」
としひろは立ち上がり叫ぶ。
むふふ〜ん♪
油断したとしひろが悪いのにゃ♪
としひろのモノは僕のモノ♪
これぞ斉藤家の暗黙のルールにゃ♪(僕が勝手に決めたんだにゃ)
「こらっ!チョビっ!よくも僕のチキンを盗ったなっ!!」
としひろは怒ってるけど、うん、別にとしひろが怒っても恐くないにゃ。
和美さんもアンナちゃんもあははっと笑ってるし♪
「とし君、いいよ、まだあるからぁ。」
和美さんはテーブルの鳥を切り、としひろの皿に再度乗せたのにゃ。
「さ、シチューも冷めないうちに食べよ♪」
「見て、この人参♪アンナが星型にしたんだよ♪」
「うわぁあ、本当だ♪よくできてるね。」
としひろはシチューを一口食べて、
「うん、すごくおいしいよ♪」
満面の笑みを二人に向けたにゃ。
うんうん。シチューはほんと〜においしいにゃ〜っ♪
クリスマスバンザイにゃのだっ☆
毎日クリスマスだといいのににゃ〜♪
僕は心からそう思ったのにゃ。
◇
そして、翌日。
「ヤッホーいっ!!」
アンナちゃんは朝から大きな声で叫んだ。
…うるさいにゃ〜、僕は昨日遅くまで起きてたからまだ眠いんだぞ。
ガサガサと何やら袋を開ける音がする。
「きゃはっ♪やった、やった、やった〜〜〜っ!」
アンナちゃんはベッドから飛び降りて、鏡の前に立ち、
「願い通りの『CUTiE-GIRL』のファー付きコートだぁああっ♪」
アンナちゃんは喜び勇んで部屋のノブに手をかける。
すると、
「キャーーーーッッ!!!」 一階から和美さんのけたたましい悲鳴が……。
僕もアンナちゃんもとしひろも驚き慌てて一階に駆け降りた。
「かずちゃん!どうしたんだいっ!?」
「お母さん!大丈夫!?」
「にゃ〜っ!(和美さんっ!どうしたのにゃっ)」
和美さんは涙目で足踏みをして、
「げ、げっ、玄関っ!」
指をさして震えてるにゃ。
ん?もしや、和美さん、僕からの日頃の感謝のクリスマスプレゼントに気付いてくれたのかにゃ?
僕は、むふふ〜ん♪と心の中で笑みを浮かべた。
「うわぁああああっ!!!」
としひろも絶叫したにゃ。
そんなに喜ばれると、照れるにゃ♪
「きゃぁああっ!何あれっ!キモ〜〜〜イッ!」
え? キモい???
「何でっ!何で玄関にネズミの死骸がっ!!!」
和美さんは泣きながら怒りまくってるにゃ・・・
「「「………!!」」」
え? みんな…、何で僕を睨んでるにゃ…?
ネズミ、捕まえるの結構大変だったのに。
昨日夜遅くまで頑張っんだよ。
も、もしかして、ネズミはお嫌いなのか…にゃ?
「チョビのバカ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
和美さんの怒りの雄叫びに
「ふにゃあああ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!(ごめんにゃさーいっ)」
僕は慌てて猫出入り口から外へ逃げたのにゃ。
はぁ…、ほんと人間って難しいにゃ〜・・・
おしまい。




