俺の夏休み。
夏だ!! 海だ!! 太陽が俺を呼んでるぜっ!!
この季節に生まれた夏男の俺のテンションは、超うなぎ登りなのだっ!!
…と言うわけでっ!今年の俺の夏休みの目標を発表しよう! パフパフ〜♪♪イェーイ♪
それは!『ビーチで誰よりも真っ黒な身体である』ことだ!! オトコなら常にNo.1を目指すべきだからこれ!! 超簡単にできるしこれっ!!
さっそく俺は今年の目標達成の為に動いた。
身体を焼く為、まず日当たりの良い場所として、自宅の庭をチョイス。海パン一丁でサンオイルを身体に塗りたくり、そのまま1日中ぼけぇ〜っ…、と突っ立つ! はい、それだけ!! あえて寝転ばないのは全身をバランス良く焼くためだ! 炎天下の中、熱中症と闘いながら、俺はこの行為をひたすら2週間続けるコトをここに宣言するっ!
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初日の晩は全く眠れなかった。
「うう〜、痛すぎやろ…これぇ…、」
俺は膝を抱え涙し、クーラーに恨み節をぶつけた。
2日目は、何もしなくてもとにかく身体が痛かった。サンパワーがピークの昼間は、倉庫の中から、昔使ってた青いビニールプールとあひるちゃんを引っ張り出して、体育座りでチャプンと浸かり、あひるちゃんを見つめながら、しばし童心にかえりつつ乗り越えた。しばらくは痛くて風呂無理…しかも寝不足……。
5日目、今思えば5日目が痛さのピークだった。さすがにジッとしてるのがタルくなり、走って風を感じれば少し気が紛れることに気付き、海パン一丁でバンザイしてワーイと庭を走り回った。壁の向こうの通行人のイタい視線…そんなの無視無視♪イェーイ♪
…ハァ…ハァ……、
寝不足の身体で走り過ぎて疲れた。……ぐったり。
8日目、身体の痛さや身体のかゆみにも少し慣れてきた。普通に風呂に入れた。鏡に写る自分の姿を見て、
「ヘイYO‐♪チェケラッチョ♪」何となく言いってみたくなった。
ふっふっふっ……♪
10日目、もう身体の痛みはなくなった。今の俺はそこらの野球少年もビックリの黒さだ! もう普通に風呂に入って、普通に寝れるので、気力、体力共に絶好調だっ。
13日目、いつものように身体を焼いていると、黒人の男性が通りかかったので
「ヘェイ♪ブラザー♪」と声をかけて、2ショットをお願いした。
現像すると・・・・ よし、大差ない!
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身体を焼き始めて2週間、ついに俺は海へと向かった。
俺の身体の色はすでに黒人クラス、誰にも負けるはずがない!! 今なら、ボビーにもゾマホンにも負ける気しないね、フハハハハーー!! 待ってろ! 白い砂浜!!! 今年は俺の『黒一点』だぜっ!!
し・か・し!! 俺の目標は、突如ビーチに現れた『ヤツ』の存在によって粉々に打ち砕かれた・・
スラッとした肢体に細くしなやか身体、大きな目と漆黒に艶めく『奴』のあの凄まじい存在感・・・・・
…まさか……こんなことは予想外だ!!
「く、黒猫かぁあああああ!!!」
「にゃぁぁぁん♪」
クソッ!! どんなにひいき目で見ても、黒猫の方が俺より黒い・・・・・・・・フッ…負けたよ。あんたにゃ勝てる気がしない。認めるよっ! あんたがこのビーチの『真の黒一点』だ!!
なぁに、いいんだよ。気にするなって…。
俺の心がそう認めちまったのだからさ…………
夏休みも終わりに近付き、ビーチで黒猫を抱っこして通行人に撮ってもらった写真を現像して見ると……………………
「おーまいがっ・・・」
俺は驚愕の事実を知る事となる!
黒猫を抱き笑っている俺の少し後ろで、何と!黒いラブラドル=レトリバーがめちゃめちゃナイスなカメラ目線で写っちゃってるし・・・・。
どこか吹っ切れたような良い笑顔を浮かべている写真の中の俺に、小さく
「ドンマァイ…俺…」
とつぶやいた………。
しかし、ちょっとおもろいからこの写真を友達に見せ、この2週間の俺の頑張った話をすると、
『お前バカか?』と言われた・・・・
冷静になって考えると、俺の夏休みって一体・・・・
(めげずに来年の夏に続くっ!)




