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time will tell


 今日も時計の秒針は変わらず動く。

止まってくれない時間は憂鬱へ繋がるのか、希望へ繋がるのかは、日々様々ではっきりとしない。


 明確な答はわからない。

 でも、きっと足を進めればいずれはわかると思ってる。


 そんなことを考えながら、日々私は前に進む。

いろんな気持ちと一緒に。

『明日へのズルい近道はないよきっと…』

 誰かが歌ってた曲のフレーズを思い出す。


 うん、確かにそうだ。

近道できないからこそ、この些細な日常が苦しくとも愛おしいと感じるんだ。


 悩みながら迷いながら進むこの些細なことの繰り返しの日常が。



  ◇



  ―月――日土曜日。


 朝目が覚めたらどうしようもなく泣けてきた。

だって半端なく辛かったんだもん。


 ほんとはとても楽しい日になるはずだったのに、私は一人部屋の中。

 ベッドの上で膝を抱えて窓の外に広がる空に八つ当たり。


 梅雨のくせに!


 こんな日に限って、空には薄日が射してやんわりと青空を覗かせて!

全くもって腹が立つ!


「土曜日なんて嫌いだよ!」

 ついでに枕にも軽く一発入れてパタリと倒れ込んだ…。


 情けないよ…本当。

枕に顔を埋めてみっともない声を上げて延々泣いた。

 会いたかったよ。

 元気に笑うあの人に。


傍らの携帯電話は沈黙を決めこむ。

私も沈黙するしかできなくて。


 立ち直るのには少々時間がかかりそうだなぁ…。


泣いたら余計に頭痛が酷くなった。


 体温計で熱をはかる。

『37、3℃』

もう、なんか色々中途半端で……。




 ―月――日 木曜日



 やまない雨はない。

かといって晴れの日ばっかじゃない。

良い日もあれば悪い日もある。

それを痛感した日だった。

 曇り空の中、久々自転車で通勤してみた。

風が生温い…。

だけど、車とは違いガラスを通さずゆっくりと流れる景色を肌で感じるのも中々悪くない。


 気がつくと鼻歌混じりで歌ってた。

遠い昔に歌う事をやめたあの歌を。


 長く緩い下り坂。

頬を撫でる生温い風もどこか心地良い。



 帰りは少し小雨がぱらついた。


 家へ向け軽快に自転車を走らせる。

いいや、嘘です。

歩いて押してます。


 まさかの大誤算!

行きは下り坂、帰りは逆に上り坂。そんな当たり前な事に「気付くの遅っ!」と込み上げる苦笑い。


 でも、ゆっくり歩いて帰るのもたまには悪くない。


 たまにはね……。




 ―月――日土曜日



 今日は朝からすごい雨。窓を閉めても部屋に響くような雨の音。

でも、なんだろう。

雨音を聞いてふと思い出したんだ。


 ベッドから出て、正面少し横の木製の棚の小引き出しに歩み寄る。

左端の引き出しの中、小さめの黒い箱。

箱の横のねじを巻き蓋を開けると、10代の頃大好きだった、あの歌の優しく澄んだオルゴールの音色が。


『あの頃はよかった』なんて決して思わない。

でも、時間が経って気付く事や解る事は沢山ある。


悩んでよかったよ。

迷ってよかったよ。

たくさん、たくさん、泣いてよかったよ。


 馬鹿な事も沢山したけど、今の自分が『生きて』存在している事に繋がっていると思えば、馬鹿だった自分も可愛いらしいもんだ。


 時間が経ち気付く事。


 時計の秒針は止まる事なく時を刻む事。

 それに併せて私もそれなりに進んでいると言う事。


 どんな自分でもきっと、許してあげよう。

今はそう思える自分が何となく好きだ。

 そんな気持ちになれた今日は土曜日。


 ちょっぴり辛さはまだ残ってる。

でも、時間が経てばきっと痛みは和らぐ。


 だから、止まらないで進もう。


 私が私らしくある為に。



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