優男だってたまにはね~木塚良介の小さな逆襲~
雪よ降れ そしてみ〜んな 凍っちゃえ
「あゆみ、怒りの俳句」
まるでとも〇ーのようにそうつぶやく彼女−−渡辺歩は18才の高校生で僕の彼女だ。
「こればっかりは仕方ないよ…。」
僕はため息混じりにそうつぶやいた。
「いいのよ…、どうせ私は日陰の女。」
彼女はズーンと沈んだ低くか細い声でつぶやいた。
「りょーすけはこのうら若き私の白く透き通る柔肌が目当て−−−」
もういい加減ツッコんでおこうと、僕は彼女のおでこをピシャリ!と緩めに叩いた。
相変わらず彼女のジョークは意味不明だ。
もうすぐ付き合って一年になるのに、まだ慣れないと言うか…、慣れてたまるかとも言いたい。
「あ〜あぁ…。」
陰鬱なため息混じりに
「な〜んでクリスマスイヴに出張なんてイジメ的な行為を引き受けるのか、私には理解できないよ。りょーすけのどM。」
…心なしか頭痛がする。
「クリスマスイヴだよ!クリスマスイヴっ!恋人達の『性なる夜』バンザイ♪なクリスマスイヴだよっ!」
…表現がどことなく間違っているのではないかとツッコミたいところだが、ここはあえて気づいていないフリで逃げておこうと思う。
「仕方ないよ。仕事なんだから…。」
僕は再度ため息混じりで彼女をなだめた。
「出会って丸一年目の記念日なのにぃ…。」
本気で悲しそうな瞳を覗かせた彼女に、
「ごめん…。」
僕は彼女の頭をそっと撫でた。
「りょうすけぇ……」
「ん……?」
「今まで何人の女の子と付き合った?」
…また唐突な彼女の質問に、若干戸惑った。
「…さぁ…、…忘れたよ。」
何となくごまかして小さく笑ってごまかした。
「……忘れる程、いっぱい女の子と付き合ったんだ……。」
口を尖らせ、彼女はつぶやく。
「…い、いや、そう言うわけではなくて……。」
僕は焦る。
「何人もの嫌がる女子をてごめにしてきたんだ。この悪代官は…。」
「あ、悪代官って!人聞きの悪いっ!」
「…着物の帯くるくる〜っと、あ〜れ〜〜っ!とかやって楽しんじゃったんだ……。」
彼女の妄想よ、どこまでゆくんだ…?
「だからっ!そんな事してませんって。」
再度おでこにツッコミを入れた。
「あ〜んっ!私も出張についていく〜っ!!」
彼女は手足をバタバタさせて駄々をこねだした。
「そんな事無理に決まってるでしょ…。」
僕はため息をついてこめかみを指でぐりぐりと押さえた。
「無理じゃない〜っ!バッグの中に入ってでもついてくんだから〜っ!」
「…できるわけないじゃん。」
「エスパー伊東にできて私にできないワケがないっ!!!」
…何故そんなに自信満々に言い切るんだろう…
いや、彼女ならやり兼ねないからちょっと恐い。
「あゆみ、いい加減にしなさい。」
僕は彼女に厳しい視線を向けた。
「う〜〜っ……。」
彼女は泣き出しそうな顔で僕を睨みすくっと立ち上がると、僕のベッドにごそごそと入り、布団を頭からすっぽりとかぶり篭城してしまった。
「あゆみ……」
「………。」
勿論返答はナシ。
僕はやれやれと大きなため息を床に落として小さく首を振った。
「イヴはダメだけど、翌日のクリスマス、急いで帰ってくるから…。」
僕はなだめるように駆け布団をポンポンと叩いた。
「…いいもん。イヴの日に街へ出てナンパされてやるんだから。」
布団の中からくぐもった彼女の恨み節。
「知らない行きずりのナンパ男と『性なる夜に乾杯』してやる…」
……はぁ…。
僕は再度ため息を落として彼女から掛け布団を剥ぎ取り、
「そんな事、できるワケないくせに。」
「できるもんっ!超やらしい事してやるもんっ!文字では書けないR18指定の限りを尽くしてやるもんっ!」
…ちょっとこの我が儘娘に、大人的お灸を据えてやらなければと僕は思った。
「じゃあ、今からそのR18指定の限りって言うのを尽くして貰おうか。」
僕は彼女の上に覆いかぶさり、彼女の瞳をじっと見つめた。
「……りょ、りょ−−−−−−−−」
耳まで真っ赤になりどもる彼女の唇を、僕の唇で塞ぐ。
ちょっといつもよりギアを上げての深いキス。
彼女の唇から首筋にやんわりと唇を這わせ、カーキーのセーターの腰元からスルリと左手を入れ、彼女の生肌に滑らせる。
「……っ!!!」
彼女は茹で上がる顔で目をぎゅっとつぶり、ぷるぷると震えている。
Vラインのセーターの鎖骨付近を唇でなぞりながら、右手も腰元からセーターの中へ……
ゆっくりとセーターをたくし上げ、彼女の腹部の肌があらわになる。
「あわわわわわ………………りょ◇☆×○△」
「R18指定、するんでしょ?」
僕は小さく笑みを浮かべてスルスルとセーターを上へと捲くり上げながら、背中に両手を滑り込ませて、ブラのホックに手をかける。
肋骨の辺りまであらわになった白くきめ細かい肌に、僕はそっと唇を這わせながら………
「ちょっ!!!ちょっとちょっとちょっとタイム〜〜〜〜っ!!」
彼女は声を震わせて足をバタバタさせて絶叫する。
僕はクスッと小さく笑い、
「ギブアップ?」
尋常じゃないくらいに赤い顔の彼女の瞳を覗き込む。
「ま、参りました。」
よほど恥ずかしいのか、今にも泣き出しそうだ。
僕はそんな彼女の頬に軽くキスをして、セーターを直し、
「ほら、R18指定なんて無理じゃん。」
彼女を抱き起こす。
「…だ、だって…、心の準備が。」
「じゃあ心の準備が出来次第、続きをしましょうか?」
僕はにこやかに笑う。
「い、いや、今日はちょっとぉ……。」
口ごもる彼女を見つめて、
「別に背伸びしなくてもいいんだよ。君は君のペースで大人になればいいんだから。」
僕は彼女を抱きしめて、そっと唇を重ねた。
「出張から帰ったら、遊園地にでも行きましょうか?」
「絶叫マシーン乗り放題で♪」
「お化け屋敷にもね。」
「うぅ…、そこは無理」
彼女はえへへ…と苦笑いした。
「夕飯はスペシャルクリームパスタで♪」
「じゃあ、待ち合わせは、僕らが出会ったあの場所で。」
僕の提案に、彼女は
「うんっっ♪」
少し幼さを残す笑顔で大きく頷いた。
こうして、僕らはゆっくり未来へと続いていく。




