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あの日見た星空を今度はあなたと

なろうラジオ大賞4の応募作です。


 寒さが身に染みる冬。父に連れられて私は星空を見に行った。「寒いからいやだ、行きたくない」という私のわがままを「おもちゃを買ってあげるから」と半ば無理やり連れていかれたような記憶がある。

 

 けれど、実際に澄んだ空気の中、満天にきらめく星空を見た私は買ってもらう予定のおもちゃのことは忘れてしまっていた。それくらい、あの星空はきれいで子供のころの私は興奮を抑えられなかった。

 

 「こら、走ったら危ないだろう。」

 

 興奮で走り出しそうな私を捕まえて肩車をしてくれる。ほんの少しだけ星空に近づけた気分になって私は空へ向かって手を伸ばした。

 

 「三つ並んでる星が見えるかい?あのあたりがオリオン座だよ。"W"の形になっているのも分かるかな、それがカシオペヤ座。あ、オリオン座の隣にふたご座も見えるな。」

 

 父は指をさして私に教えてくれる。私はようやくオリオン座とカシオペア座を見つけることに成功した。けれど、ふたご座についてはよく分からないままであった。

 

 約束通り、父は私におもちゃを買おうとしたが、私は星座に関する本を父にねだった。その本を読み漁って、いつの間にか私は父より星座について詳しくなってしまっていた。

 

 

 

 

 そして、今。私はあの日父と一緒に星空を見た丘に来ていた。あの時と同じ冬。凍てつく寒さが私たちの身を縮こませる。

 

 「走ったら危ないよ。」

 

 私は息子に声をかける。あの日の私と同じように息子は走り出しそうになっていたので、すぐさま捕まえて私は肩車をした。

 

 「三つ明るい星が並んでいるだろう?それがオリオン座。あっちには"W"が見えるな。それはカシオペヤ座。オリオン座の隣にこんな形のふたご座もあるんだけど、分かるかな?」

 

 あの日見た星空と全く変わっていない。澄んだ空気に、満天の星空。私は指をさし、丁寧に星座をなぞっていく。息子はふたご座までも見つけ出し、「ほかには何があるの?」と私に聞いてくる。

 

 この後にはきっと星座に関する本をねだってくるのかもしれない。

 

 

 

 

 星座には一つ一つ物語がある。それは決して良い物語ばかりではない。同じように私たちにも一人ひとり違った物語がある。けれど、あの日見た星空を大切なあなたと見に来れた私はきっと幸せなのだろう。

『あの日見た星空を今度はあなたと』を読んでいただきありがとうございました。感想・評価・いいねなど全部お待ちしております。

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