行列を行く
好んで行列に並ぶたちではないが、立ち止まることなく進んでいるならたいした不快感はなかった。
これは何の行列だっけと思いながら歩くうち、立ち止まり、向き直った誰かに出くわす。誰一人文句を言わず、ただ彼を避けて進んでいた。さらに少し進んだところで、歩みを止めてしまった誰かを前を行く誰かの動きにつられて避ける。
「これはまた、随分な行列だねえ」
どこかから不意に声がかかった。
「なんでも大きな事故があったらしいよ」
誰かが応える。
なんの話だろうと思いながら周囲を見回し、無意識に立ち止まっていた。
すぐ後ろにいた誰かが背にぶつかる。一言も声を上げることなく自分を避けて進んでいく。
そういう夢を見た。
第90回300字SS、お題は「流れる」でした。