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『彼のことを信じる自分』を信じるということ

 そういう美嘉はというと、高校時代から付き合っている彼氏とまだ続いているのだから信憑性がある。阿子から見ると本当に雑誌に載っていそうなくらいの美男美女で、それなのに相手を疑わないのかと聞いたら不思議そうな顔をされたことがある。

 美嘉の場合は自分も綺麗な顔立ちをしているから、自信があるのかもしれない。自分に自信が持てない阿子にとって、彼氏が他の女の子と楽しそうに話しているのをおおらかな心で包み込むということはできないかもしれない。


「真信君もさ、阿子の気持ちがまっすぐ伝われば、あまりそういうことしなくなるんじゃない?」

「やめさせるんじゃなくて、向こうの意思でやめてもらうってこと?」

「そゆこと。なんていうか、これ言ったら負けだー! とか、これ言ったら勝ちだー! とか、恋愛ってそういうことじゃないと思うんだよね、私」


 たしかに、『浮気されたら浮気します♡』という文章を見たことがあるが、それは『騙されたから騙し返す』ということであって、こんなのは恋でも愛でもなんでもなく、ただの人間の醜さなんだと、美嘉の言葉を聞いた阿子は納得した。


「結局さ、彼氏のことを信じるってことよりも、彼氏を信じる自分を信じることの方が、難しいんだよね」


 美嘉は教祖様にでもなった方がいい。どんな人生を歩んだらそんな思考ができるのだろう。90歳くらいにならないと自分には無理だろうな、と阿子は思った。


「ランチ終わったら一緒に真信君のところ行こっか」

「え? どうして?」

「阿子の訓練のため」

 まったく、美嘉はどこまでも世話焼きだ。


 阿子の恋愛はいつだって、阿子だけが苦しんできた気がする。

 恋愛はひとりではできないもので、必ず2人でするものなのに、自分だけが苦しんでいるのは腑に落ちないな、と思っていた。

 だから、相手も苦しめばいいのに、と思っていた。


 けれど、その考え方は間違っていた。そういう醜さは捨ててしまおう。やり返したりする心は捨てて、自分は相手のことが好きという心を大切にしよう。

 阿子は、自分が苦しいということを真信に伝えることにした。それで真信がどう出るかはわからない。振られたらそれまでだ。


「美嘉、私、今日真信君と一緒に帰るから、その時にちょっと賭けに出てみる」

「おー、どうしたの、いきなり?」

「美嘉の教えを聞いて、決めた。自分が苦しいっていうことを、素直に言ってみる」

 美嘉は阿子の頭をぽんぽんと撫でて、

「何があっても私は味方だよ」

と言ってくれた。この言葉がどれほど阿子に勇気をもたらしたかわからない。

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