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好きって気持ち

「じゃあ、フランのこと、好きになってくれる?」


 お願いするように両手を組み、キラキラと目を輝かせる私に対し、ヒルデガードは呆れ半分、諦め半分と言った感じの笑みを浮かべ、頷いた。


「……まあ、努力だけはしてみましょう」


「ありがとう、ヒルデガード! だからあなたのこと、好きなのよ」


「それはどうも。時にミリアム様、あまり軽々しく好き好き言うものではありませんよ。言葉の重みがなくなりますからね」


「あら、『好き』って気持ちは、言葉にしないとなかなか伝わらないのよ? 何度も口にすることで言葉の重みが軽くなるって言うなら、軽くなった分、これまで以上に、いっぱい『好き』って言うわ♪」


「また、子供みたいな理屈を……」


「いいじゃない。もったいぶって好意を隠すより、『好き』って気持ちをオープンにしていく方が、ずっと自然だと思うけど」


 そこでとうとう、ヒルデガードは降参したように肩をすくめ、笑った。屁理屈好きで生意気な子供に花を持たせてあげる、優しい母親みたいな笑みだった。


「はいはい、では、そういうことにしておきましょう。……ところで、ミリアム様。先程、『あだ名で呼び合う』という話になりましたよね」


「ん? あー、うん、そうね」


「ミリアム様は、フランシーヌ様のことを『フラン』と呼んでいるようですが、フランシーヌ様は、ミリアム様のことをなんと呼んでいらっしゃるのですか?」


「あはは、あの子、私のこと、『お姉様』って呼ぶのよ。ずっとお姉さんが欲しかったみたい」


「なんですかそれ……気持ちわる……」


「そういうこと言わないの!」


 そこでひとまず、職業安定所とフランシーヌに関する話は終わり、話題は、今朝大騒動になった『お父様のご乱心』に移った。……そう言えば、今日の朝は、どこにもヒルデガードがいなかったわね。どこかに出かけてたのかしら?


 私がそう問うと、ヒルデガードは頷いた。


「ええ、今朝はちょっと、私用があったもので。……ローゼン公爵閣下が激昂されたことは他の使用人から聞きましたが、大変だったようですね」


 ヒルデガードは眉間に手をやり、瞳を閉じると、悲しげに首を左右に振る。


「正直に申し上げて、信じがたいことです。閣下は以前にも、ミリアム様に関することで使用人のミスがあると、激しくお怒りになることがありましたが、それでも、絶対に体罰をおこなうことはありませんでした。それがあろうことか、怯える使用人たちに、強力な攻撃魔法を使おうとしたなんて……」

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