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ふたたびクレメンザ邸へ

 汗ばむような陽気の中、今日も今日とてぎらぎらと輝くレモンイエローのクレメンザ邸に、私は到着した。昨日と同じように、門番さんに声をかけてから中に入ると、メイドさんにフランシーヌの居場所について尋ねた。


「フランシーヌお嬢様は、現在地下のトレーニングルームで、朝の運動をなさっております」


 地下のトレーニングルーム。

 そんなのあるのか。


 ……ああ、そうだ。

 確かあったわ、そんなところ。


 私の中のミリアムの記憶で、一度だけ行ったことがあるはず。ミリアムは、トレーニングとかスポーツとか、そういうの、全然興味ないから、今まですっかり忘れてたのね。


「そこまで案内してもらえるかしら」とメイドさんに頼むと、彼女は「かしこまりました」と丁寧にお辞儀をして、私を先導していく。


 目の前を歩くメイドさんのスカートがヒラヒラと揺れるのをぼぉっと見ながら、私はふと思った。


 ……なんか、クレメンザ邸のメイドさんのメイド服って、一般的なメイド服より、かなりスカートが短いわよね。みんな色っぽい美人で、なんかムチムチしてるし。フランシーヌのお父さんの趣味かしら?


 そんなことを考えているうちに、地下に到着だ。


 クレメンザ邸の地下には、いくつも部屋があり、その中に一つ、ガラス張りの、両開き式のドアの部屋があった。入り口には『トレーニングルーム』と書いてある。


 ここまでくれば、もはや案内は必要ない。私は「ここまででいいわ、忙しいなか、どうもありがとう」と、ムチムチのメイドさんにお礼を言い、ガラスのドアを開けてトレーニングルームの中に入った。


 すると、柔らかい風が、ふわりと私の体を撫でる。


 窓のない地下室なのに、不思議なことだ。

 どうやっているのかは知らないが、空調が効いているらしい。


『トレーニングルーム』は、打ちっぱなしのコンクリート壁に囲まれた、簡素な部屋だった。


 頑丈そうな床には、縦長のベンチが二つ設置されており、その近くに、いくつかのダンベルと、重たそうなバーベル。あと、大きさの違う黒い鉄球が置いてある。


 ……ダンベルとバーベルは、なんとなく使い方がわかるけど、鉄球なんて何に使うのかしら? まあ、私には一生、鉄球を持ち上げる機会など訪れないでしょうから、深く考えなくてもいいだろう。


 天井からは、二つ重ねの大樽ほどの大きさがあるサンドバッグが吊るされていて、少し離れたところに、これまた何に使うのか分からない太い綱が、無造作に垂れ下がっていた。


 フランシーヌは、その綱の向こうにある鉄棒にぶら下がり、何度も体を上下させている。動きやすそうなタンクトップとショートパンツ姿に身を包んだ今の彼女は、普段のフリフリがいっぱいついたドレス姿とはまったくの別人だった。


 えっと、これ、確か『懸垂』って運動よね。前に、テレビか何かで、ムキムキの消防士さんが黙々とやってるの、見たことあるわ。


 へえ~、凄い。

 よくもあんなに軽々と、自分の体を持ち上げられるものね。


 まあ、フランシーヌは小柄だから、体重が軽い分、楽に懸垂ができるのかもしれないけど……


 と、そこまで考えて、私は仰天した。

 よく見ると、フランシーヌの腰には重たそうなチェーンが巻かれており、さらにその下部には、先ほど見た、黒光りする鉄球がつけられていたのだ。

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