かつてゴーレム戦争の英雄は、エルフと二人暮らし
かつて。
魔法が最強と呼ばれる時代があった。
ゴーレム技術が高まるにつれ、誰でも優秀な魔法での攻撃を再現出来るようになると同時に、国は、一人の偉らぶる高慢な魔法使いを雇うよりも、優秀なパイロットの才能を選んで行くようになった。
結果、時代はゴーレム戦争へ移り変わったのだ。
スキャン、レーザー剣、銃、という武装をされた、巨体なロボットは、戦場を瞬く間に塗り替えた。
しかし、そんな中、魔法使いがゴーレムに乗ったらどうなるのか?という疑問を試した国があった。
優秀な魔法使いは強化が得意だ。
しかし、ゴーレムのアーマーは、魔方を受け付けない消石と呼ばれる魔方効果を消す石で出来ている為に、ゴーレム自体を強化は出来ない。
そこで編み出されたのが、人間の体と同じ仕組み、神経強化である。
ゴーレムの中に神経を通し、それを被い、ゴーレムの体の中を張り巡らせる。
それを強化すれば良いという科学者の意見により、産み出された悪魔の兵器。
ソリュードという機体。
5年をかけ、開発されたソリュードは、愚鈍なゴーレム戦争をまた塗り替えた。
ゴーレムのパイロットは、やはり優秀な魔法使いが乗る事で、より早く、無敵のゴーレムになるという結論に達した。
その独自の技術を固めた国は優秀なゴーレム使いを採用し、その中に、魔法適正が優秀な者をレイグと名付け、レイグは数字で呼ばれた。
決して逆らわないよう、厳重な洗脳教育を受ける。
甘美な異性をあてがわれ、毎夜、女達の悲鳴にも似た快楽の声がこだます寮。
昼には、上官からの厳しい罵声。
アメとムチにより、強力な洗脳をかけていく。
そうして3か月経過する頃には、優秀なレイグが完成する。
レイグ999。
現在125歳、35歳の時まで盗賊の頭をしており、長寿の霊薬と呼ばれる秘宝を国王の第五娘を搬送馬ゴーレムを襲い、手にいれ飲んだ。
王女を含む全員を楽しんだ後殺した。
その直ぐ後、憲兵ゴーレム部隊から急襲を受け、奪って使っていたゴーレムに乗って対決した後、才能を国の為に使えという隊長の意見を聞き入れ、捕縛された。
それ以来、35歳の姿のままだ。
レイグ999だけが今回の紛争も、一人と赤いソリュードと共に帰還を果たした。
レイグ999だけがいつも生き残る為、死神と呼ばれていた。
だが、必ず任務は果たして帰還する彼に対して、羨望の眼差しを向ける男女も多数居るのは事実であり、無下な扱いは出来ない。
王国騎士団のソリュードも、全く性能は一緒の筈だが、強化魔法と、運転の才能により、誰も999には勝てない。
毎夜毎夜、3人の違う女をあてがわれる毎日。
999は違和感を感じ始めていた。
抱いても、抱いても、満たされない。
殺しても、殺しても、満たされない。
何故なのか?
自問自答するが、解らない。
簡単に死ぬ敵。
股を開いて入れるだけの女達。
999はむせかえる人の欲望に、腹がいっぱいだった。
もういい。
もう、要らない。
女達はすり寄る。
振りほどく。
少しずつ睡眠も、食事も、細く、浅くなった。
それが、より、戦闘の才能を開花させる事になる。
敵の罠にはまり、味方からの支援も絶望、味方300機体VS敵2000機体。
まさに死を覚悟という状況。
細く深い谷に逃げ込み、味方は上の敵を、999は前方の敵を、武器は左肩の盾、左膝の盾と、両手大剣を捨て、片手剣を二本のみで戦い抜いた。
敵が半分になった頃、上から増援が到着。
敵は退却し、勝利した。
999は宴の席で、語った。
999「もう俺は死んだ、そう思ったら、体の力みがすっと抜け、頭に勝ち筋がどんどん見えた、パズルみたいに手順を間違わないようにするだけだった」
国王は感激し、沢山の褒美を取らせると約束した。
国王「何が望みだ?」
999「陛下、私はもう、疲れました、女も、金も、食い物も、酒も、もうお腹いっぱい頂きました、もう私は、ただ、ただ、休みたいです、休暇を頂きたい」
国王「・・ならぬ、そなたには、これまで以上に敵を殺して貰わねばならぬ、長期ではなく、短期休暇ならば、やろう、それで満足せよ、まだ味わっておらぬ亜人はどうだ?あれはあれでイケルぞ?ははははきっと違う扉が開く、今夜試してみよ、おお!そうじゃ!先日買ったばかりのホレ、あれをやろう、気に入るぞ!」
連れて来られたのは、処女のハイエルフ少女。
国王「わしが頂こうと思っておったんじゃが、お主にやろう、今夜は思う存分楽しめ、はははははは!!」
ハイエルフ「・・」
涙も出ていない。
999「・・ありがたき」
宴の最中でも、ハイエルフは小さな牢屋に閉じ込められ、魔法印により、両足に焼き印をされていた。
もし、逆らえば、足が爆発する。
999も両足に押されていた。
2つの月が、満月。
昼みたいに明るい夜だった。
999はハイエルフをベッドに横になるように命令。
ハイエルフは黙って従う。
999「もう寝る、お前も寝ろ」
ハイエルフ「え?」
999はハイエルフを抱き枕にして、寝てしまった。
寒い夜だった。
ハイエルフもいつの間にか寝てしまった。
翌朝。
任務が終了し、また一人生き残り、帰還してきた999。
証拠の敵大将の人首を保冷バックから取り出す。
上官「うむ、任務ご苦労、休んでよし!」
999「・・はい」
約束の短期休暇もなあなあにされ、結局休みは無し状態。
その代わりー。
ハイエルフ「・・」
999「・・おやすみ」
ハイエルフ「おやすみなさい」
何もせず、ただ一緒に寝るだけの夜。
ハイエルフ「不思議な人間・・」
999はイビキも無く、ハイエルフを優しく抱き枕。
そんな日々が続いた。
次第に、会話が多くなる。
ハイエルフは深い森で暮らしていたが、村が帝国に見つかり、連れて来られたという事。
母親は捕らえられたが、父親は殺された事。
魔法はゴーレムには全く効果がなかった事。
999は泣いて、許しを乞う。
ハイエルフ「私達は憎まないわ、全ては神のお導きよ、人間が強かった、それだけ」
999は顔を上げた。
ハイエルフ「私達だって、オークや、羽竜を狩るもの、大丈夫よ、解ってるから、貴方は悪くない」
999は、また、すまない、すまない、と泣いた。
ハイエルフとその夜、手を握り合って寝た。
999はその朝に満たされた感覚を得ていた。
理由は解らない。
あれだけ、食っても、喰っても、満たされなかったのに、口、魔力を動かさない食事があるのか?と悩んだ。
999は初めて知った。
心の食事。
何もしない、食べない、でも一緒に居るだけで、心が暖かく、満たされていく、仕事の信頼とは別の信頼という食事。
ハイエルフとただ、一緒に寝るだけの夜が3週間続いた後、国王から呼び出された。
国王「どうだ?ハイエルフの味は?旨いか?」
999「は、癒されております」
国王「そういう事ではないんじゃよ、999」
999「?」
国王「貴様、わしがご馳走を振る舞ったのを無下にする気か?」
999「滅相もありません、何故ご立腹なのか、解りません」
国王「ハイエルフは未だに貫通しておらぬ、何故じゃ?」
999の顔が冷えていく。
国王「何故未だに喰っておらん!?わしを馬鹿にしておるのか!?ああ!?」
椅子のひじ掛けを叩く。
999「私は申しました、女よりも、休暇が欲しいと、筋が通らぬのは、陛下、そちらです」
近衛兵が周りを取り囲み、槍を構える。
国王「余に逆らう意思を感じる、・・気のせいか?」
999「その気はありません」
国王「・・食事も、酒も、風呂も、女も、散々与えたろう?何が気に食わん?正直に申せば、さっきのは不問に致す」
999「何もありません、陛下、人には、何も食べたくない時がございます、そうでしょう?」
国王「・・確かに、あるやも知れぬ、だが!我が危惧しておるのはそこではない!!お前は、道具じゃ!何イッパシに人間みたいな行動を取っておるか!!お前は愛される資格があると思うてか!!ああ!?獣だったろうが!!道具だったろうが!!お前など、愛される価値があろうと思うてかあ!!お前は人間ではない!!獣だろうがあ!道具だろうがあ!兵器だろうがああ!ふーふー、お前ごときが、愛を知ろう等、人間になろう等、ふてぶてしいにも程があろうがあ!!ふーふー」
999「・・全て、仰る通りです、今夜、ハイエルフを犯し、殺します、それで疑いが晴れるのでしたらば」
国王「ふーふー、・・ああ、それで良い、獣は獣らしく盛っておれば良いのだ、餌はたらふく食わせてやる、だから、わしにこれまで通り忠実に仕えよ、番犬」
999「はは、この命尽きるまで」
国王「・・よし、下がれ、必ず殺せ、解ったな?」
999「はは」
その夜。
他愛ない会話。
美味しいお茶、お菓子を一緒に食べ、一緒に歯磨きをし、暫く喋り、一緒に寝ようとー。
ハイエルフにキス。
ハイエルフは拒まない。
999はキスをしながら、ナイフを後頭部に刺そうとー。
ハイエルフはキスを止め、抱きついた。
999「!?」
ハイエルフ「良いよ、貴方になら殺されても」
999はハイエルフを掴み、離し、改めてキスをした。
999「国から逃げる覚悟はあるか?」
ハイエルフ「・・貴方と一緒なら」
999「・・行こう、ハイエルフの森へ、そこで暮らそう、今あるこの国の軍隊は、全て殺す、俺が強かった、それだけの話なんだろ?」
ハイエルフ「・・それが、この世界のルールじゃなかったら、私の父親も、兄も、弟も、何故死んだか解らないから、ソレで良いんじゃない?ふふ」
999「ふ、よし、殺そう、生きる為に」
ハイエルフ「ええ、生きる為に」
足の焼き印を皮膚ごとナイフで削った。
半月2つ。
極秘任務だと整備士に言い、赤いソリュードに単身乗り込む。
その後、ハイエルフを回収し、狭いコックピット内で、太ももに尻を乗せ、腕を首に回し、座らせる。
狭い、高い、谷の岩山上で追っ手を待つ。
眼帯戦士「999が赤いソリュードに乗った時点で我らの負けです!勝てる訳無い!即刻追うのを辞めさせるべきです!死体か増えるだけじゃない!今大半のソリュードを失えば、国は傾く、隣国は黙って見過ごす筈がない!それどころか、999が逃げから攻めに転じれば我が国は終わりです!どうかご再考を!何卒!な〈パンパンパンパンチリリリン〉
国王「他に反対意見はおるか?」
《シーーーン》
国王「追え」
犬型ゴーレム、鳥型ゴーレムが大量に発見、仕掛けて来た。
ワイヤーナイフを器用に使い、鳥型ゴーレムを落としていく。
犬型ゴーレムは足に噛み付くが、アーマーの方が固く、無傷。
次々に現れる銃を持つゴーレム部隊。
ソリュード部隊も後方から来ているのが、見える。
赤いソリュードは犬を大半片付けると、崖わ、滑り降り、銃弾わ、かわしながら雑魚ゴーレム部隊の中心へ。
乾いた大地。
広い場所。
背中から、大剣を振り出した。
月明かりに鋭利に輝く。
大剣はただでさえ、間合いが独特で、遠心力を用いた片手の場合と、両手の場合とでは、間合いが異なるのだが、この大剣は特別製。
スライド式を採用しており、警棒みたく、伸びる。
柄の鍔部分にスイッチがあり、3段、自由に変えられる。
大げさには変わらないが、戦闘中となれば、話は異次元に異なる。
間合いというのは、白兵戦闘におき、最重要情報である。
仲間に当たる為に超白兵戦では銃は使用できない。
しかし、それが命取りとなる。
仲間ごと撃たなければ、この赤いソリュードには勝てない。
左肩、左膝の盾の使い方が上手い。
盾は頑丈で、まず、銃弾は刺さらない。
雑魚狩りを大半終わった頃、雑魚団を見捨てる勢いで構わず騎士ソリュード部隊が撃ってきた。
背中へ、逆方向に大剣を納めた。
雑魚1を持ち上げ、盾にしながら、また中心へ。
構わず撃ってきた。
地面を這うような動きで、背中の大剣が伸び、横に薙いでいく。
同士撃ち、背中の剣により、次々倒れていく、白のソリュード達。
白ソリュード5「貴様あ!国を敵に回して生きていけると本気で思っているのかあ!?何処まででも追い詰めるぞ!!絶対に貴様らの居場所を壊し尽くしてやる!!絶対に死ぬま《ズン》
赤いソリュードは頭に小さい角が沢山ある。
頭突き用だ。
コックピットからチョロチョロと液体が漏れている。
どうやら、追っ手はこれで終わりのようだ。
銃を拾い、弾を補充する。
背中の大剣が短くなり、両手に、銃を持つ。
その直後、赤いソリュードは走り出した。
方向は王国。
国王「ええい!報告はまだか!?何をやっとる!たかだか一騎に時間をかけ過ぎじゃ馬鹿!!」
《バン!》勢い良く扉が開いた。
大臣3「陛下あ!」
国王「やっと来たか」
大臣3「全滅です!放った部隊は全滅しました!」
国王「ああぐほえええ!?」
大臣3「今扱えるソリュードパイロットを緊急召集しております!」
国王「奴は何処へ逃げた!?解るのか!?」
《ズズウン》地響き。
国王の後ろの広い窓全体に赤いソリュードの目
大臣3「あ・・うあ・・」
国王「?何じゃこの揺れは?それよりあやつの行方は掴めるのか聞いとるんじゃ!答えんかい!!」
大臣3「ひゃああぁ・・」
腰が抜け、小便漏らし、人差し指で国王を指す。
国王はやっと察し、恐る恐る後ろを向いた。
巨大な銃口の穴が窓ごしに向いていた。
国王「か、金なら《《ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド》》
パイロットが乗っていないソリュード保管所、ドッグを全て撃ちまくり。
白ソリュードも念入りに踏み潰した。
城も、ソリュードも無くした国は隣国達から好機と攻められ、王族は全て処刑された。
ハイエルフの森に到着。
結界に入り、大量の弓矢、投石により、ソリュードが攻撃される。
赤いソリュードは正座。
暫く黙っていると、攻撃が止んだ。
ハイエルフの少女がコックピットから出てきたのを皆が驚く。
次に手を上げながら999が出てきた。
ハイエルフ達は弓矢を構える。
少女は、999を庇い、キスをした。
少女「この方は私の夫です!控えよ!」
少女はハイエルフの王族のたった一人の生き残りだった。
皆が片膝をつき、頭を垂れる。
一緒に狩りをしたり、一緒に食事をしたり、ハイエルフ達は思ったより気さくで、スケベだった。
だが、決して浮気をせず、よく話し合う民族だ。
番の誓いは絶対であり、破る想定等していない法律ばかり。
皆良い奴ばかりだ。
気に食わない事があれば、決闘をし、良い試合だったと、互いを誉め合う。
暖かい。
これには飽きは来ない、何故かそう確信出来た。
999では呼びにくいと、サンクと名付けられた。
999もそれで良いと納得した。
少女の名前はスメヤリタ。
スメヤリタは無理に大人ぶって、サンクの気を引こうと頑張る。
サンクは体が成長するまで待つと言うが、聞く耳持たない。
何故なら村の娘らは不老のサンクを好いており、アピールが凄いからだ。
人間ならば、寿命が違うからとエルフも遠慮するが、サンクは年を取らない為に遠慮の必要がない。
サンクはアピールに困った為、村長に相談。
村長は笑い、喜んだ。
サンク「嬉しい?何故?」
村長老婆「人間よ、それは愛をお主が知ったからじゃ、わしはそれが我が事のよいに嬉しい、スメヤリタを裏切りたくないんじゃろう?他にも美しい女は沢山おる、その中で、スメヤリタだけを抱きたいんじゃろう?」
サンク「少し違う」
老婆「何が違う?」
サンク「リタを愛してる自分が誇らしいんだ、リタに好かれてるなんて、俺には・・もったいない、だから、ありがたいと思う、特別な肉体関係じゃなくて、リタの気持ちに答えたい、答え続ける誇らしい自分でいたい」
老婆「・・」 カーテンの向こうをチラっと見た後。
老婆「・・そうかい、ならば、婚約発表を正式にするのはどうだい?そうすりゃ、他の娘も諦めるだろうさねひぇひぇひぇ」
サンク「そうか、解った、そうするよ」
老婆「指輪の作り方をマリンヌに教わるんだね」
サンク「指輪を作る?」
老婆「明日マリンヌに聞きな」
サンク「解った、ありがとうございました」
出て行った。
老婆「あんまり濡らすんじゃないよ」
背中越し、カーテンの向こうに話かける。
カーテンで仕切られた別部屋にスメヤリタの座り込んだ姿。
枕を抱え、声なき大声で泣いていた。
指輪は古い大木近くに咲いたヒラメルという花をつけたまま、採集し、茎を丸くし、ダイヤの部分に花が来るように作るのだという。
ヒラメルの花は、必ず2つセットで近くに咲く。
お祈りしてから、男性が採集する習わし。
お祈りなんて、初めてだった。
恥ずかしい。
マリンヌ「ほら!こう!違う、こう!そう、それでさっき教えた通りにやって」
古い大木の前に2つ咲いたヒラメル。
両膝をつき、祈りを捧げる。
サンク「私、サンクと、スメヤリタの間に永遠の愛を私は誓います、どうか、この誓いを信じてくれますよう、必ず見捨てない事を誓います、アリーア」
マリンヌ「ん、良いよ、地面から少し上を切って、根っこから抜いちゃ駄目よ」
サンク「ん」
採集成功。
マリンヌ「帰ろう」
帰ってから指輪を作り、マリンヌにお礼をやろうとしたが、成功してからで良いと言われた。
夜。
透き通る綺麗な池の畔。
スメヤリタが来た。
白いドレスにお化粧。
村の娘達が愚痴りながらもやってくれたのだ。
綺麗な2つの満月に反応している光苔と、ホタルの舞。
老婆のオススメスポット。
サンクは箱を見せ、片膝をついた。
スメヤリタは顔を隠したい衝動を押さえる。
サンク「スメヤリタ、俺は、ずっと一人で、ずっと満たされなくてそれ・・で・・・・」
止まった。
スメヤリタ「?」
おろおろ。
様々な思いが溢れて来た。
満たされなかった。
ずっと満たされなかったソレを、一緒に寝ただけで満たしてくれた女性。
感謝の気持ちは沢山溢れている。
しかし、それは過去だ。
ここで述べるべきは過去ではない。
サンク「・・いや、違うな」
立ち上がった。
スメヤリタ「??ふえ?」
止めちゃうの?スメヤリタはショックをー。
サンク「俺は、お前と結婚したい、お前がどんなに醜くなっても」
スメヤリタは始まった安心感と、意外な言葉の羅列に、自身のこれから来るであろう心境に心の準備が出来ていないと、戸惑う。
サンク「お婆さんになっても」
スメヤリタ「・・(待って)」
サンク「お前が死んでも!お前を忘れない」
スメヤリタ「・・(待ってよ)」
サンク「永久の愛をここに誓います」
スメヤリタ、限界。
サンクは片膝をついた。
サンク「俺と、結婚してください」
箱を開いた。
指輪の花が月明かりに反応して、白く光っている。
スメヤリタ「・・」
無言、耳を真っ赤にし、顔を両手で隠す。
サンク「?リタ?」
顔を下から覗く。
サンクの顔に涙がポタポタと落ちてくる。
次の瞬間、サンクを抱きしめ、倒れた二人。
泣きながら何かを言っているスメヤリタ。
サンク「・・」
黙って頭を撫で続けた。
婚約成功パーティー。
気さくな男達が裸踊りで笑いを上げる。
爆笑したのは、人生で始めてかもしれない。
婚約初夜。
スメヤリタ「・・」
黙って脱ぎ出した。
サンク「・・」浴衣を着せる。
スメヤリタ「何で?」
サンク「焦るな、体が産める体型になるまで、待つよ、妊娠死亡率が高いのは、早くするからだ、俺は待てるよ、リタを死なせたくない、肉体関係が無くたって、俺の愛は変わらない、絶対に」
オデコにキス。
スメヤリタ「・・オデコは嫌」
サンク「はいはい」
唇を重ねた後、一緒に抱き合い、ただ、寝た。
隣国が亜人平等主義だった事もあり、平和が保たれた。
2000年後。
巨大な赤いゴーレムの前に、スメヤリタ、サンクの墓。
その墓前に一人、人間の耳の少女が片膝をつけ両手を組んでいる。
お祈りをし終わり、弓、鞄を背負い、走り出した。
結界を抜け、森を抜けた。
崖。
青い空、春の風が冷たい。
遠くに街が見える。
どうやら人間街に行くようだ。
少女「おー?アレがそうかあ!いやっほー!!待ってろ冒険!待ってろ彼氏い!!きゃっほっほうい!!」
走り、街方向の森に消えて行った。
苔だらけの赤いゴーレム。
未だに心臓部分が小さく起動していた。
《END》