第8話「そんなのアリですか?」
「最初にやるのは色調べ。どの系統の魂色を持っているのか調べることだ。つまり、魂は何色ですかって事。魔術は魂塊って言う魂のような物に門を開き通す事でイメージを反映させ発動できる。魂塊の規模や門の開きで魔術の質や魔力の通る量も変わるけど、魂色と同色なら使いやすくなる。ちなみに、父さんは赤だったからエネルギーの赤系統の魔術を多く使う。でも、別に赤以外も使えるが使いやすいのが赤ってことだな。赤以外の簡単なのを使ってるやる。ほれ」
そうしてリオは、地面を凹ませた。
「うん、地味だね」
「危なくないように、一番安全な例を見せてやったんだよ。本気になったら、こうもっと…」
「で、色の確認はどーするの?」
「…まぁいい。色の確認?そうだな、色は、死にかけたりするとよく見えるとか言うが」
「いやだよ!」
リオは命を代償に色を調査すると言ってきたので勿論拒否した。
「わりーわりー、ビビらせすぎた。実は、特製の簡単な方法があるから。じゃあ、ちょっとこれ持ってくんねーか」
リオはポケットから石を出した。
「この石何?」
「これは魔物といえば魔物なんだけど、まわりの魔力を吸い込み、その色に合わせて色とおんなじ性質で周りの環境に擬態するメレって言うのでな、危険はないぞ。そいつは今、緑の性質で周りと同じように石になってるが、5分ごとぐらいに魔力補給するから、いっとき握ってろ。この環境じゃおそらく、赤なら氷、青なら木片、緑ならそのままだな」
(魔物だったのか、さすが異世界。変な生き物もいるな。とりあえず、結果が出るまで待ってみよう)
5分くらいしたら、石に変化があった。
(ん?石が熱くなってきた。ポカポカとカイロみたいで…)
「あちっ」
握っていられなくなって、メレを落としてしまった。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないよ!熱くなるとか聞いてないのに!」
暑くなるなど知らされて無い為、ゼクシオはびっくりした。そして、聞いていない現象が起こった事に怒った。すると、リオは驚いていた。
「こりゃ驚いた。おまえ、多色者か。羨ましいなー」
「多色者って何?」
「多色者ってのは、色の複数持ちだ。石が熱くなってしまったのは、2色で反応に困って形態はそのまま、赤の性質だけが出てきたんだろうな。ま、熱いのもいっときで治る」
「色は普通1色なの?」
「だいたい単色者だな。でも、多色者も多くない程度にはいるぞ。おまえはおそらく2色持ちだな。3色持ちの多色者の方が希少性は上だ。でも、多色ってだけで出来ることが増えるから羨ましいな。伸びは人次第だが、色持ちと色無しじゃ全然違うからな。努力すればある程度まではいけるから、普段は困らないけどな」
この世界では、ちょっと恵まれているみたいでゼクシオは嬉しかった。多色者ってことは、才能みたいなものだと思うから浮かれた。でもリオからはいいことばかり聞くなぁー。
「おい、ゼクシオ。今『やったー』なんて思っているのか?だったら間違いだぞ。ちゃんと練習しないと、色無しより使えない奴になっちまうぞ。それに各系統の中にも得意不得意分かれるから、なんでも出来るなんて思っちゃいけない。だから、努力するのさ」
(ウゲェ、俺の嫌いな言葉、努力様だ。そうかー、この人生では頑張ろうとは思ってたけど、魔術でも努力様がついてくるのか)
努力が付きまとって来ることに気づき悲しそうな顔をしたら、リオはアドバイスをくれた。
「それは嫌そうな顔だな。まぁ父さんもこう見えて結構頑張ってきたんだ。気楽にいけ。気楽じゃないと気長に頑張れないからな。はっはっは」
リオは俺の頭をゴンゴン叩いてメレを拾いにいった。
(それにしても、心を読まれたな。顔に出るんだろうか?ん?)
リオはかがむと動く気配が消えその場で固まっている。
(早くして欲しいんだけどな。魔術!魔術!)
心の中で魔術コールしてると、リオがやっと呟いた。
「…嘘だろ、……る、目、目、目開けてるぞ!」
ビックっとなったが、気になって見に行くと、さっきの熱い石ころのメレが目を開けていた。
「メレって目開けないの?」
生き物だから目があって当然のように思うと、リオがすごい目をして答えた
「メレっていうのはな、環境に合わせて擬態する生物で、独自の進化を各個体ごとにしていくんだ。でも、動くことも珍しいし、そもそも生物的な特徴をなかなか見せないんだ。たまに他の魔物にくっついてたり色々変な魔物だったけど、目を開くなんて聞いたことないぞ」
「ならすごい大発見じゃん。他の人にも教えようよ!」
(そしてあわよくば、国に提供してお金ががっぽがっぽ、ウヘヘヘヘ)
ゼクシオの野望が組み上がったら、リオが難しい顔をしていた。
「新発見はいいんだが、ばれたら研究するために取り上げられるぞ。こいつは父さんが持ち歩き続けてて愛着ついちゃったし、どうしよう…。メレもそもそも発見するの大変なのに」
すると、今度はゆっくり動き出してゼクシオの方に来た。そしてずっと見つめてくる。
ジー…
ゼクシオはだんだん可愛く見えてきた。
(誰だよ!こんな可愛い娘を差し出してお金にしようとするやつは!いたらそいつは人じゃない、悪魔だ!)
気づいたら手に持って、メレと喋りはじめてた。
「おい、大丈夫か?ゼクシオ。外から見たら石ころと会話しているかわいそうな子だぞお前」
そんな言葉は聞こえず、俺はあることを思いたった。
「父様、いや、お父様。この娘を僕にください」
「ん?」
「この娘を今日から僕の友達にします」
「お、おう、そうか。…でもいいか。お前好懐かれてるし誰にも渡さないだろ?で、名前はどうすんだ?」
「うーん…メメ」
「安直だな」
そう言って、リオは笑った。
「いいの、今日からこの娘はメメ。他の名前はダメ」
そう言って、また熱くなる前に、肩に乗せた。もう目は開いてないが、しっかり肩にくっついていた。
(ポケットじゃかわいそうだし、外の世界を見せなきゃね。よし、今度こそ魔術!)
「父様、色分かったから次魔術」
「ああ、じゃ、簡単なのから行くか。手に意識を集中して色を濃くしろ。そして、頭の中で、火をイメージする」
手を開き、すっごく力を込めるようにして意識を集中する。次に、火をイメージして数分。
…
…何も起きない。
(何故だ?何故できない。しっかり意識集中してイメージしたのに)
「いきなりは難しいか。なら緑の方で行くか?イメージを石に変えてみろ」
数分後
「う、うぅ」
「だ、大丈夫。しっかり頑張れば出来るから」
「父様は何日目で出来たの?」
「…1日」
「そっか、1日かかったのか」
「………」
「…ぼ、僕も今日ずっと頑張るよ!」
ゼクシオはほぼ涙目だった。
(だって、リオは単色者で俺は多色者だったんだよ。 しかも、リオ絶対今から魔術使わせようとしてたじゃん。何かの間違いだ、絶対嘘だーー。もう泣いていいかな…)
その後様々なイメージを行なったが、結局今日は魔術を使えず家に帰った。帰りは、誰も親子に声をかけれなかった。
「「……ただいま」」
家に帰るとルザーネが気づいて玄関に来た。
「お、お帰り、遅かったわね。それに、2人ともすごいよ、なんか色々」
リオはいつもの明るさはどっかに行き、ゼクシオも凄いやつれていた。そして、目は絶望で光は失っいゼクシオの周りにはどす黒い空気が漂っている。
「母さん、そっとしてやってくれ」
「え、ええ。そ、そうだ!ご飯、ご飯準備してるわよ。さ、さあ行きましょう。ね?」
部屋に入ると、アメルが人形と人形をぶつけて遊んでいた。俺たちの音に気づいて振り向き、どたどた近づいて来た。
「ねーねーパパ、今日ね、セナちゃんとね、遊んでたら、お花が綺麗で赤いお花でね、花束作ったの。そしたらママがいつも使ってるメラメラした火みたいだなー、って思ったの」
リオはアメルが来て光を少し取り戻した。
「そうかー、よかったなー。花束作ったのか、父さんも見たいなー」
「うん、いいよ。でも待って。まだお話があるの」
「なんだ、ほかにもいいことがあったのか?」
リオはニコニコしている。
「うん。その花束がママの火みたいだなーって思って私、手を握ってお願いしたの。ママみたいに火が使えたらなーって。そしたらぼ、っぼおってちょっとだけど火が出たの!セナちゃんはそれは魔術だよって教えてくれて、でも危ないからママやパパがいないと使っちゃダメーって。でもね、今はパパもママもいるし、パパが花束見たいーって言うから、花束みたいな火を見せてあげるー」
リオは顔に雲がかかり、アメルを止めようかと止めまいか迷っていたが遅かった。アメルは既に両手を結び、その願うようなポーズは完成していた。すると、
…ぼ、っぼお
(っぁー)
ルザーネは先に聞いていたのか、少し感情を抑えつつも微笑んでいた。リオは困惑して、喜びたいが血の気は引き顔の上で感情が暴れていた。アメルは満面の笑みでニコニコしていた。
そして、ゼクシオは目の前が真っ白になった