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異世界大陸  作者: キィ
第二章 魔学舎入門
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第29話「鮮兆」

「さぁ、皆さん。今日も張り切って魔術の練習をやりましょう!」


 日が真上に登る時間帯、生徒達はグラウンドに散らばり、各々の練習を行なっていた。まだ大きな力を操る事はできないが、グラウンド上では火が飛び交ったり、水飛沫が散ったり、様々な状況が生み出されていた。

 そんな中、ゼクシオは1人、恐ろしい規模で魔術を行使していた。


「アイスグラウンド!」


「こら、グラウンドはアイスではありません。全く、全ての子供が貴方のような力に目覚めたらどうなることやら…」


 そう言いながら注頭を抱えているのはAクラスの担任。その容姿は眼鏡が似合う顔立ちに清楚な黒髪、もちろんロングだ。そして、見た目どうりの若さに加え、やや心許ない胸元。最近のゼクシオ内では、彼女に対するブームが到来していた。


 それは何故か?まず、仕草が可愛い。

 物事を考えるときには眼鏡を掛け直し、怒るたびに眼鏡がずり落ちる。そして、それを再び元に戻す姿。


 はたまた、風にたなびく黒髪に、ミスマッチかと思いきや意外と似合う異世界に有りそうなローブ姿。

 そして、なんといっても譲れないのが、眼鏡無し顔と眼鏡有りの間に存在するギャップだ。

 このゼクシオは、現在どのくらい重傷的かと言うと、終始彼女の姿を追いかける1日が存在するくらいだ。

そんな彼が彼女を見て最初に思った事は、


『果たして、前世にここまで完結していた教師が居たか?』だ。


 そんな記憶は勿論ないが、ゼクシオの欲望の象徴となった彼女は、いつしか、ゼクシオを支配していた。

 現に、今は目の前の彼女の反応を見て満足げに笑うと、足底に作った氷を使って、スイスイと移動しながらからかっている。


(あー、キョウカ先生可愛いなぁ。あんなに可愛い人が教師なんて、異世界捨てたもんじゃないなぁ)


 自ら生み出した簡易スケートを楽しみながら、生徒の間を潜り抜ける。地面に張った氷は、体力消費や魔力効率などを考えて、最低限の力しか使っていないのですぐに溶けてしまうだろうが、それでも十分な効果だ。


(アイスムーブはだいぶ固まったな。これで水上歩行も夢じゃない!でも、動きながらじゃ他の魔術が使えないよな……。よし、それなら自動追尾でもする魔術開発するか?んー、でも最近結構ネタ切れなんだよ…)


 ながら思考は危険を伴う。周りを見ずに陸上を滑れば、よそ見運転となんら変わらない。そこで、ゼクシオが他の生徒と激突してしまう。


「ててて、ごめん。大丈夫……。なーんだ、アフィナか。気を付けろよ?お前、身体弱いんだろ?」


 そう言って、自分は紳士であると意識しながら手を差し伸ばすが、彼女はその点を手を払い除けてしまう。


「やめて、馬鹿に触られると馬鹿がうつる。それに、身体が弱いんじゃなくて、少し体力がないだけ。鍛えればすぐにでも…」


 そう言いながら立ち上がろうとするが、彼女は足元をふらつかせてうまく立てない様だ。そこで、ゼクシオは仕方なく彼女を支えた。


「ほら、大丈夫か?魔術は体力も必要だからしっかり食うんだぞ?」


「……昨日はスープ3杯お代わりした」


 視線を逸らしながら、彼女は口を尖らせて意外な発言を行う。ゼクシオは会話が成立したことに動揺を表すも、言葉を続ける。


「そ、そうか。だったら、後は簡単。お前が嫌う馬鹿になればいいんだよ?」


「意味わかんない」


「簡単なことさ。魔術に恋してひたすら走る。それだけで、こんな俺でもここまで来れたんだ。他はまだ長続きしないけど、魔術に込めた時間だけは誇れるぜ?」


「………」


 話しを最後まで聞いた彼女は何も言わずに向こうへ行ってしまった。すると、周囲に水が噴き上げて、彼女を覆う様に水壁が誕生した。


「なー、お前のそれってすごいよな。俺も真似しようと思ってもできないんだ。教えてくれる?」


「……」


 彼女は無言で何も答えず、代わりに水が刺々しい形で現れて、気持ちを示す。


「早くあっちいけ」


「いや、そんなゴミを見るような目で見るなよ。怖いだろ?」


 だが、同時になぜ彼女は疲れないのか疑問に思う。ゼクシオですらできない魔術、どんな仕組みが存在するのだろうか?と、聞いてみる。


「でも、よくそんな出力維持してて体力持つよな。やっぱり素質がやばいとか?」


 学年一ともてはやされているゼクシオからのその言葉、日々啀み合っている相手からだとしても少し嬉しい様で、アフィナは少々照れた。が、我に帰って自分を棚に上げる。


「当たり前でしょ?私はバカと違って、ゆ、ユウ……、ユウノなの」


「有能な。うが抜けてる。そう強がって、難しい言葉を使いたがんなよ」


 彼女と久しぶりにまともな会話をしていると、いきなり後ろから肩を掴まれて一蹴全身がビクついた。ゆっくり後ろを振り返ると、そこには先程の教師が追いついていた。


「はぁ、はぁ、全く。手間のかかる生徒です。大規模演習は、はぁ、はぁ、別時間にあるから、はぁ、はぁ、今は使ってはいけないと何度言わせれば気が済むんですか?」


(可愛いぃー……)


「……バカ」


 ゼクシオは間抜けなアホヅラを周囲に曝け出し、アフィナの彼に対する評価はプラスマイナスマイナスで低評価に移行した。はぁ、と彼女らは同時にため息をつき、アフィナは再び先程の続きを行う。すると、アフィナも規模が大きくと注意を同時に受ける事となった。


(あー、清楚眼鏡はいいよなぁ)


 その間、ゼクシオが常に癒されていたことなど、誰も知る由はないが、話はまだまだ続く。すると、周囲が空を1人、また1人眺めてはその場で呆然と立ち尽くし、生徒たちはやがて魔術を使うことを辞めていく。


(なんか周囲がおかしいな)


 その事にゼクシオが気づいた時には、キョウカも叱責を辞めて上空を見つめ、声を溢した。


「え…」


 その異様な変化を感じ取り、ゼクシオは目の前にいるキョウカから仕方なく視線を動かした。すると、そこには奇妙な光景が広がっている。


「は?オーロラ?」


 そこには七色に光る光のベールが村全体、ましてや森全体を覆うように存在していた。その光景を見たゼクシオは、他の生徒同様にその場でただ空を眺めていた。

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