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異世界大陸  作者: キィ
第二章 魔学舎入門
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第18話「行動の理由」

「デリネア様、ゼクの様子がおかしいよ?大丈夫?」


 周囲に不穏な空気が流れる中、セナはその姿を見て少年の異常性を心配した。


「大丈夫です。私に任せてください」


 心配させない様に微笑んで反応すると、少年に向き直った。


「少年に世界の加護が届きます様に」


 祈りを告げると、右手を伸ばして魔術を使い始めた。


『綺麗…』


 その姿は、誰が見ても美しく感じる青いベールで包まれていた。


「………」


(あれ、発作が起きない…。もしかして、これが彼女の力?)


 ゼクシオはいつもの反応に対して構えていたが、次第に身体の調子が良い方へと変化していることを実感して驚いていた。


(これならいける!)


 後は意識に集中すれば良いので、全神経を傾けた。


「はっ!」


 ゼクシオは一筋の電撃を発生させ、止まる事なく直進し、木に衝突して爪痕を残すと消滅した。その衝撃音は庭中、屋敷中に届いた。


「やべ、魔力込めすぎた…」


「お嬢様、何事ですか?」


 屋敷からメイドが騒ぎを嗅ぎつけて迫ってきた。


「なんでもないわ、グム様に魔術を教えて貰ってたの。心配してくれてありがとう、でも下がって良いわ」


「左様でしたか、では失礼します」


(危ねー、セナのお陰でなんとかごまかせた。こんなの貴族の家でぶっ放したら反逆罪とか疑われて良いレベルだし、本当に死ぬかと思った…)


 その場で問題は発生しなかったので、取り敢えず息をついて胸を撫で下ろした。


「今の凄かったね」


「…うん、でもゼクがいつも通りに戻ってよかった」


 少女達に少し心配をかけていた様なのでゼクシオは反省した。


「ごめんな、心配かけて」


「本当に、最初心配したんだから!でも、デリネア様が魔術を使い始めたらその心配も無くなっちゃった。それに、あの姿綺麗だったぁ」


「うん、綺麗だった」


 少女達の目は輝いていて、ゼクシオもその姿が気になった。


「へぇ、俺は結構余裕なくて周り全然見てなかったよ。そんなに?」


「うん!」


 そこで、話題のデリネアを見ると彼女も胸を撫で下ろしていた。


「無事終わって良かったです」


「デリネア姉さん、俺に何したの?」


「そうですよね。少年には最初に全てを知る権利があるのに、説明を省いて申し訳ありません。全ての事の顛末を知らせなくては」


 デリネアは一度落ち着き、穏やかな口調で話し始めた。


「まずは、少年に『何をしたか?』ですね。施した物は、魔力を流し込む事と同時に治癒魔術で神経の縫合及び再生をあらかじめ・・・」


 内容は、?MAXで周囲が白目を向いていると最後には簡単に説明してくれた。


「つまり、神経を取り替えたと思って頂ければ結構です」


(絶対普通じゃない!)


 施された内容は取り敢えず置いておいて、フラッシュバックで発作が起きる様な現象はもう無いから安心してもいい。しかし、衝撃に対しての記憶との連動はどうしようも無いから電撃にだけ気をつければ雷の魔術は使えると聞いて安心した。

 明るい雰囲気になると、デリネアだけ少し申し訳無さそうな顔をしていた。


「これは結果論であって失敗していたかもしれない。だから、危険を侵してまで立ち向かってくれた少年には真実を伝えておかなければ…」


「その真実って何?そんなに俺は気にしていないし、デリネア姉さんを信頼して頼ったんだよ?」


 ゼクシオはそんな顔をされても困るので、なるべく笑顔で接した。


「少年にいきなりこの様な事をお願いしたのは……、私が師匠の元を卒業する為の最終試験の内容だったから」


「え…」


(それって実験に使われたと思っても差し違えないんじゃ…)


 彼女は少しの間の後、一呼吸のうちに真実を語った。だが、その事を口から聞いた時は、どんな反応すれば良いかゼクシオには分からなかった。だから、この話に対する感情に結果を出さずに聞き続けた。


「少年は隠していた様ですが、例の件依頼、身体に異常が残りましたね?」


「そうなのか?貴様、怪我が残っていたのか?」


 ソニアが心配してゼクシオを見やると、彼は諦めた様に肩を下ろして真実を話した。


「隠してもいつかはバレると思っていたけど、実は・・・」


 ゼクシオの身体の現状を伝えると、彼女達は怒っていた。


「どうして教えてくれなかったの?そんなの知らなかったら余計危ないじゃない!」


「それならビリビリ遊びしなかった…」


「最強の好敵手には弱点があったとは…、だが心配するぞ?これからも闘えるのか?


「闘えるのかは別として、普段はいつもと変わらないかな。でも、みんなには気を使って欲しく無かったんだ」


 すると、セナが頬を膨らませて拗ねた。


「もう、もっと素直になってよね。友達なんだから」


「素直になるのはセナの方…」


「ん?」


 リゼの一言でソニアは笑った。セナは理解していない様でずっと首を傾げていた。


「セナはいつも素直だろ?」


 ゼクシオもそう思っていたらしく、リゼとソニアはますます笑った。


「強がりも良いですが、これからは周囲には頼りましょうね?支えてくれる人が増えればそれだけ安心出来ます。私は言えた義理ではありませんが…」


「ああ、そうするよ」


「……、ええ、是非」


 ゼクシオは笑顔で真っ正面から返事をするが、まだどこか寂しそうな顔をしていた。


「話に戻りますが、少年の詳しい事情を聞いたのは師匠からです。が、私も魔眼を通して異変には気付いていました。私の魔眼は色を見通す。瞳に込めた魔力と同じ魔力が色として色別できる”色別の魔眼“。少年が師匠に鍛えられている間、魔力の循環などを観察していました」


「ん?魔眼があるの?」


「ええ」


「無理にとは言わないけど、見たりする事って…」


 そこで、懇願すると彼女は一度目を閉じて暫くすると目蓋をゆっくり上げた。


「綺麗…」


 その瞳を見た時は、思わずさっきの少女達と同じ声が漏れ出た。一度閉じられた瞳の色は、周囲を照らす元の鮮やかな黄色から、全てを見透かしている様な深い青色に変色していた。


「これが綺麗に見えるなら喜ばしい限りです。産まれ持った甲斐があります。しかし、勝手に覗いた件はしっかりはお詫び申し上げます」


「いやいや、こちらこそ。その目のおかげで今日魔術が使えたんだし、大袈裟だよ」


「そう言ってもらえると幸いです」


 彼女の丁寧な謝罪と感謝に戸惑いながらも、ゼクシオはしっかりと気持ちを受け取った。


「お陰と言って良いのか分かりませんが、魔眼を使いながら少年と師匠の様子を観察していた私は、ある異変を気づきました。」


「異変?」


「少年は赤色をお持ちと聞いていて、とても優秀な師匠の生徒なのに、父親であるリオ様の代名詞でもある雷の魔術を一度も使用しない事です。そればかりか、話題に出せば命脈が揺らいで見えました」


「それは気づくよね…」


 意図していた訳では無いが、話しを聞けば誰でも気づけるような確証がたくさんあった様だ。隠しているつもりが丸裸だったゼクシオは自分の不器用さに苦笑した。


「はい。ですから師匠に質問したら詳細を聞かされました。そこで、師匠は少年の症状を完治させる事を最終試験として私に言い渡し、それを承諾してました。ですから、少年を自分の出汁として扱わせていただく立場なのに、詳細も伝えず危険な行為を行わせてしまいました。2度目の謝罪になりますが、申し訳ありません!」


 そう言って精一杯頭を下げていた。


「なんだ、そんな事だったのか。爺さんにも姉さんにも変な気使わせてたんだな。俺なんかの為に頭は下げなくていいよ。『ありがとう』『どういたしまして』それでいいじゃん!俺の為に行動してくれてありがとう!」


 デリネアはゼクシオの反応が予想外で驚いた。自分は怒りを向けられる立場だと思っていたからだ。笑顔で真っ正面から言われてしまえば、もう笑うしか無かった。


「…少年はやはり優しくて賢い、不思議な子です」


「そうよ、ゼクは優しいんだから!」


「たまに意地悪……、でもいい奴」


「我が好敵手!時には僕!」


 少女達に太鼓判を押され、自覚が無いゼクシオは照れながら頭をかいた。


(俺っていい奴になったのかな?周りの影響って凄いんだな)


 その様子を見て、デリネアはもう一度ゼクシオに向き直ると言葉を伝えた。


「少年、」


「ん?」


「さっきの会話の続きです。どういたしまして」


 そう言って頬に口づけをすると、ゼクシオは顔を赤面させ、周囲の少女は声を上げた。


「あ、あわ、あわ、わ…」


 当事者のゼクシオはその後、口をパクパクして困惑していた。


「少年はカッコいいですね。フフ」


「ねぇ、デリネア姉さん?今何歳?」


「私ですか?15ですよ?」


「え?またまた、魔学舎の話とかしてたじゃん!」


 ゼクシオは茶化されたと思って、信じる気が失せた。第一、見た目はとても若いと思っていたが、精神年齢がとても高く見えるので成人はしていると予想していたのだ。15だなんて、メイドのエレナと1つしか変わらない。


「魔学舎は15歳と入学規定はありますが、発展期で見聞を深めるための口実に過ぎません。優秀な生徒は少人数ですが飛び級は可能。そして、私は13歳で入学し、グムレフト様と出会ってからは自主退学して14歳からついてきてます!賢人の弟子としての証があれば、学園学歴が無くてもほとんどの場所で就職できますよ?」


「わぁ、大胆だなー」


 もう棒読みになるしか無かった。まさか、そこまで破天荒で濃い人生を送っているとは思わない。見た目は温室育ち、中身は活動派エリート。そんな予測が出来ようか。


「少年も好きな道を進んでみてください。では、私は中へ入りますね」


 普段より軽い足取りで屋敷へ向かう彼女の姿を、彼らは黙って見送っていた。

最近忙しいので三日に一回出来ればいい方だと思ってください。すいません、、、

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