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異世界大陸  作者: キィ
第二章 魔学舎入門
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第14話「王との対面」

「リオ・アロンスフォート様と王国騎士団、緑所属副団長レミア・ベヒゲルテ入室!」


 中から声が聞こえると、門がゆっくり開いた。


「へー、あんたもか。今日は珍しい日だな」


「はい?」


「いや、ちょっとな」


隣で不思議なことを呟き、気になって声を出した。しかし、本人にとっては特になんともなかったようだ。少し間が空くが扉が完全に開くと、2人は部屋の中へ入る。中に入ると定位置まで歩いて、その場に膝をつき頭を下げる。


「この度は謁見を許可して頂き、ありがとうがざいます。王様への質問とお願いがあって参上しましたリオ・アロンスフォートです」


「同じく、ご謁見の同行を許可して頂き感謝申し上げます!王国騎士団緑所属、副団長レミア・ベヒゲルテ。ただいま参上いたしました!」


 そう告げると、暫くして国王からの声が届いた。


「面をあげよ、2人とも。立ち上がる事を許可する」


 2人は顔を上げると国王を視界に捉え、その場から立ち上がった。


「よく参った我が国の英雄よ。再び見えることを待っておった!」


「いえいえ、よしてくださいよ王様。俺の力はみんなのも…。でも、その後もお変わりなく安心しました」


 リオは小さく笑って王の顔を見た。


「2年ぶりですね」


「そうだな。その時は、少し強引に呼びかけてしまったな。だが、お主が望むなら家族を迎え入れる準備はしたぞ?」


「前にも言ったように、家族は、特に子どもは友と別れるのが嫌なようで」


「ハハハ、そうだったな。忘れておったわ。ガハハハは!」


「ご冗談がお上手で。あなたの特技は記憶力と以前伺いカードゲームまでしましたが?」


「すまんすまん。冗談だ。だが、お主が王都内に止まってくれたらどれだけの者が安心するか…」


「いえいえ、王様の危機なら雷の如く参上してこの国を命に変えてでもお助けしましょう!」


「また面白いことを言い出す。だが、それを為せるお主もまた面白い。ガハハハは!」


「ハッハッハ!」


(すっごい仲良しじゃない。カードゲーム?あの王様と?さすがリオ様!)


 暫く笑うと、次第に静かになった。


「前にも言ったが、お主は変わったな」


「王様や家族、仲間達のおかげです」


 そう言って2人は再び会話を再開した。


「お主と話し続けたいのは我の願いでもあるが、質問と願いがあってきたとな。本題に入ろう、申してみよ」


「では」


 リオは目に力を入れると、今までよりも強い声で話した。


「今朝方、騎士団に脅迫状があったのは本当ですか!」


 それを聞き、国王は顔をしかめる。


「もうお主に届いたとは、流石だな」


 王はそのまま少し黙ると周囲が静かになった。王は拳を握りしめると、再び口を開く。


「…お主の言う通り、今朝この国に予告状が来た。それも、我の国の柱を奪うと!!」


 徐々に声のトーンを上げながら話し、王は力を込めた拳で肘置きを叩いて声を荒げた。


「こんな事あってはならん、あってはならんのだ!」


 再び声を上げるとリオは現状が深刻だと確信してある提案をした。


「王様、提案があります」


「ほほう、言ってみよ」


 王は怒りを少し抑え、リオの発言の注目した。


「私は明日、サードント家の方に向かいますが、よろしいですか?」


 そこで、リオが護衛の一つを請け負うと言い出して王は喜んだ。


「おお!そなたが向かってくれるとは心強い。各領主達には王都へ召集しようとしたが、領民や土地の略奪が目的で仕掛けてくれば手が回せなくなる。それに、王都に集めても混乱が加速するだけ。ならば、せめて各箇所に主要人物を集め、力を固めて迎え撃つことにしたのだ。お主が力になれば心強い。ぜひ頼む」


「ありがとうございます」


 すると、王は話を続けた。


「丁度よかった。ここで決断してしまおうか」


 そう言ってレミアの方に向き直って言った。


「実は話には先があってな、そこで出てくるのがお前よエレナ!」


「はは!」


 エレナは自分が呼ばれた理由など分かっていた。だから、せめて堂々とこの場から去ろうと決意し返事をした。


「貴様の所属は緑!言えば守りの要、初動で迅速に動く事こそ役目だが、ファスラ領の方ではてこずっておる様だな」


「仰るとうりです!」


(やっぱり剥奪か。リオ様には見苦しいところ見せるな。でも、会えただけでもよかった)


 悲しんでいると、意外な内容が出てきた。


「ファスラ領には、我が命令して一箇所に集めるゆえ気にするな。あやつは考えが読めん奴だからの。ガハハハは!」


「ありがたき幸せ。感謝いたします!」


(嘘、国王めっちゃいい人じゃん!それなら、私はこのまま副団長?)


「よって、人員派遣はそのまま我の側近のベルラーナに任せる故、貴様に新任務を与える」


 近くでは1人の女性が前に一歩出て軽くお辞儀をした。


「はは!」


(新任務?)


 レミアは困惑した。今は人員が足りず自分でも重要な仕事をしている自覚はあった。が、王から直接任務を任命されるなど、緊急時でも滅多にないからだ。


「明日、白魔術士の行動部隊を使う許可をする。リオと共に一足先にレウィグ村へ行き、村の治整局とコンタクトを取って騎士団が来る頃には受け入れの体制を完全に整えよ!他の領にも先に副団長と信頼できる冒険者を向かわせる故、サードントはお主らに託すぞ!」


「はは!」


(やった!リオ様と2人っきりで行動!僅かな時間だけど頑張らなくっちゃ!)


 新任務に喜んでいると、王が話を切り替えた。


「では、もう一つの願いとやらを聞こうか」


「それで、もう一つのお願いですがエレメス・ドラグニアと言う若者騎士を連れていく事を許可してくださりませんか?」


(はぁ?)


 レミアはまた困惑した。何故、いきなりそこで新兵の名が出るのかと。


「ほほう。今年、緑に配属された若い騎士だな。何故、あやつを?」


 王は興味深そうにリオを見つめた。


「いえ、丁度道で出会った者でして。勢いで連れていく約束をしてしまい、その許可をと…」


「ガハハハは!その場のノリとな?貴様も行動が読めんのう」


 王は笑いながら聞き入れるとその許可をした。


「あい分かった!その者の同行を許可しよう。他に用は?」


「いえ、以上です」


 話が収束すると、王は最後に言葉を言い渡した。


「それでは任せたぞ、国の盾と英雄よ!」


「任されました国王様」


「は!」


 王とリオは互いの目を見て信頼し合っていた。


「それでは、下がって良いぞ!」


「「失礼します!」」


 そう言うと、2人はその部屋から退出しようと扉まで迫った。その時、謁見の間へ走り込んで来るものがいた。その者は門兵でレミアを煙たがっていた者だった。


「緊急!緊急!サードント領内のアバグ森周辺に活性化現象発生!」


「何?アバグ森だと!その隣はレウィグ村…。至急白魔術士と騎士団に招集!急いでレウィグ村に…」


 その時、飛び込んできた者にレミナが斬りかかった。


「貴様何者だ!」


 男は攻撃を横に飛んでかわすと、さっき立っていた場所からドス黒い水が吹き上げて来たので、レミアは追撃をやめた。その場に立ち会っていた人々は異変に気づき、その者へ目をやる。入ってきた男は不気味に微笑みながら話し始めた。


「何をするんですか?私はただ緊急の情報を…」


 最初に男が呟くと、レミアが答えた。


「ほざけ、たかが門兵がここまで走り込むか!貴様、どうやってここまで入った!」


 その言葉に答える事はなく、ただ微笑んだ。男は身につけている甲冑を外しながら、この場にいる者を確認するかのように周囲を見渡す。すると、外からは兵や騎士が続々入ってきて入り口を固め、部屋の内部にも展開して完全に退路を経った。王の後ろからも兵が流れ込んで、王の前に並んだ。


「…19、20人ですか。その内、5、6人は更に私の演出に品をもたらしてくれる」


 男は呟くと、ゆっくり王のいる方向へ歩み出した。男から殺気は感じないが、そこに居てはダメなような、何か体が生理的に受け付けない異物的存在感があった。すかさず、周りの物は危険を排除しようと攻撃をするため構えた。


「貴様、動くな!」


 1人の兵が声を上げるが、王が手で制してそれを辞めさせる。


「待て、貴重な情報源だ。我が話す」


 王はそう言って黙らせた。

 大勢の者が見つめるこの重たくて静かな空気の中を、男は楽しんでいた。王の前に展開した騎士達は少し威嚇するが、男は臆する事など無かった。


 やがて、部屋を照らすために上から差し込む光の中を、躊躇いもなく歩き始める。歩くたびに足音を響かせ、その姿を照らす光は黒に染まった。足元からは黒い花吹雪のようなものが吹き上がり、吹き上がった噴出物は羽のように、上からゆっくりと男に落ち始めた。

 そして、その噴出物は男を照らす黒い光に当たると、少し赤く輝いた。次第に床に落ちたものから床に染み込むように消え、赤い絨毯を黒に染め上げる。

 男はリオやレミアが先ほど立っていた場所まで来ると立ち止まり、再び口を開いた。


「初めまして国王陛下、私はアルタエコー。この世に救済をもたらす者」


 そこで初めて自己紹介をすると、男は左腕を広げて右手を胸に当てたまま軽くお辞儀をした。その姿は誰よりも似合わず、完全にこの場にとっては異物だった。が、そこに至るまでの謎の美しさは周囲を魅了するほどの美を完成していた。


 周囲は誰も反応を返せなかった。ただ、そこにいる者がアルタエコーを名乗っており、その者が謎の美しさを持っているのだけは伝わった。だが、王は臆する事なくアルタエコーを名乗る男に、正面から対峙した。


「我は、賊の上に立った覚えはない。その姿勢、賊風情が紳士だとでも?我の前での奇行など頭を悩ませるやつだのう」


 そう言って頭を抱えた後、再び男に向き直った。


「茶番はここまでだ。何をしに出た?何故、我が国を脅かそうとする!」


 王はそう言うと、拳を握りしめ椅子を叩いた。そこで、男は身体を起こして微笑みながら答えた。


「世界を救う為です」


 その男が言い放つと周囲はざわめいた。やっと、異変に気づいたのだ。こんな異物が世界に救済をもたらすはずが無いとようやく理解が追いついた。


「貴様は賊ではなく道化だな。聞くに耐えん」


 王は一歩も引かず、男を言葉で拒絶した。が、またも微笑むと男は楽しそうな口調で返した。


「今は、私の演出を楽しんでもらえれば結構」


 そう言うと、男は左手から黒い異物の塊を浮かばせた。


「こやつの奇行はもう許せません。王よ、失礼する」


 そう言うと同時にレイアは本能的に危険を感じ男に斬りかかる。しかいs、男が向き直って右手で止める様に示すと、レミアは動きを止めた。またしても異変があったのだ。


(何こいつ、殺気が感じられない。おかしい!こんなに身体が拒絶しているのに危機は迫っていないと?)


 レミアには殺気が感じられなかった。よって、そのまま攻撃に踏み込むことが出来なかった。そこで、男が再び話始める。


「いいのですか?この者の身体はこの国民の者。ここにいるのは私であって私ではない。それに、演出中に止めろと言うのは、私には酷。少し変化が必要ですか」


 そう言うと、近くの兵に向かって左手から黒い異物の玉を飛ばした。


「貴様、やはり!」


 レミアが叫ぶ間に、リオは電撃を放ち黒の玉をかき消す。同時にレミアは床を蹴って男の元へ再び飛び込み、前にのめりになりながら体重を乗せた突きを男の右肩に放った。が、男は右の中指と人差し指の間で剣を挟み止めると、剣を外側に投げ払ってレミアの体勢を崩す。


「ふっ!」


 レミアはそのまま回転して飛ぶと体勢を立て直し、左足で後ろ回し蹴りを放った。男は左腕でガードしながら後ろに飛び、勢いを消す。


「っは!」


 その機を逃さず、リオは電撃を数発放つが男は全て避けるとリオに迫った。その間、男が周囲に何度も闇の攻撃をしていたので、リオは対応できなさそうな者だけを見極めながら、別の電撃を放っていた。


「よそ見する余裕、あるかしら!」


 レミアはリオの元へ走る男の右横から斬りかかり、同時に男の足元から水槍が3本現れた。そこで、男はリオの元に行くのを止めると床を蹴って槍を避けた。と同時にレミアの方に方向転換した。


 剣は空を斬り、気づけばレミアの懐に姿勢を低くして入り込み、右拳を身体で隠しながら放つ準備をして迫っていた。しかし、レミアは笑うと、後ろに下がりながら左指全てに水滴を浮かばせ、気を見て放った


「おっと」


 男は攻撃しようとしていた拳に闇を纏って、水滴を全て殴り消した。


「お若いのにお強い。素晴らしい輝きです」


 男は立ち直ると、レミアへ言葉を放った。


「褒めて下さるなら、引き下がって貰えませんかね?」


「いえいえ、これでも観客は選んでるつもりでして。今回は特に素晴らしい!是非、他の観客も参加して欲しいのですが…」


 そう言って男が再び動く気配を見せた時、気づくとリオは既に後ろに回っていた。


「おっと、これは」


「もう、ついて来れないぜ?」


 リオはそう呟いたと思うと、男の首後ろに手刀を放とうとした。その時、


「ハウスト」


 男の身体からドス黒い闇が出てきてリオは触れるのを止め、後ろに飛びながら電撃を飛ばして気絶させた。男は気を失い倒れていたが、闇はドンドン広がってくる。


「始動!」


 王がその刹那に言葉を言い放つと、部屋の中心から魔力障壁の光が現れて闇を消し去った。全てが消えると、念のため暫く発動させ王は再び声を上げた。


「停止しろ」


 やがて光は消え、その場には男だけが残った。そして、その場に一枚の紙が置かれていた。


『活性化は本当ですよ?しっかり守ってくださいね?英雄様』


「性悪道化師め、クソ!」


 リオはそう言い放ち、紙を踏みつけた。床に傷をつけるほどだったが、紙は黒い光を一瞬帯びると破れることなく残っていた。


 周りの兵はその間に、男を取り押さえた。が、やはり何も異変はなくただ気絶していた。外では何人もの兵が昏睡状態で意識を失い、倒れているものが多くいた。次々に兵を運んだり、状況確認のため城は余計騒がしくなった。


「一体何がしたかったんだ?」


 王は男の奇妙な行動に、頭を悩ませ考えていた。


「宣戦布告と挑発が目的かと。そして、あわよくば国王様への攻撃…」


 側近が答えるが、王は振り払うように反応した。


「そんなのは分かっておる。だが、意味がなさすぎではないか?この場には戦力が少なからずおった。今でなくても、やり用はいくらでも…。賊のことなど我が考えても理解できるはずないか」


 王はそう言うと椅子から立ち上がってリオとレミアの方を向き言い放った。


「では、再び言い渡そう。明日よりレウィグ村に赴き、王国の柱を守れ!もはやこれは戦争だ!心して対処せよ!」


「はは!」


 レミアは返事をしたが、リオはまだ紙を見つめていた。


「ッチ、活性化にアルタエコー。さては、メノード達が最初っから標的だったな!クソが!」


 そう言って、リオはもう一度紙を踏みつけると、その場に響く衝撃音と深い足跡を残した。

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