第13話「王城内」
アクラナ王国の王城では、国の最大戦力とも称される三大貴族への挑戦上とも取れた予告上が騎士団に届き、とても慌ただしかった。
「ファスラ家の関係者が多すぎて現状が把握し切れないだと!『御三家の内の1人を頂く』なんだぞ!御三家の誰かなんだ。時期当主かもしれないぞ!早く一箇所に集まってもらい守備を固めろ。国としての威厳にも関わるんだ!いいな?」
「は、はい!」
「全く、このままでは時間も人手も足りないぞ…」
「失礼します、副団長」
「今度はなんだ?」
彼女の名はレミア・ベヒゲルテ。世界の十騎士家の中でも分家の、しかも女として産まれるもアクラナ王国騎士団緑の副団長にまで上り詰めた実力者である。現在は脅迫状の対処に追われ、王都で頭を悩ませていた。
(あー、もう!次から次に何なのよー!時間を逃せば婚期も逃げるのに!どうして副団長になったんだろう…)
御三家は王都から離れて暮らしているため対応するには時間が命。だが、レミアにも時間は命だったため、イライラしていた。
「ご報告します。リオ・アロンスフォート様が国王様にご謁見したいと」
「あの方が!」
(私が憧れたあの英雄が?なぜ、今頃に?今日から休暇だと聞いたけど…)
「副団長、どうしますか?」
「分かった。国王に伝え、すぐに謁見の間を準備できるように備えておけ!」
「ははっ!」
そう言って男は奥へ行った。
(はぁ。本当に次から次へと。このままじゃ、白魔術師を手配しても配置が間に合わない。リオ様がまた国を救ってくれれば…)
そう思っていると外で騒ぎ声がした。
「ですから暫しお待ちお!」
「いいだろ?待つのは嫌いなんだよ。どうせ国王様も謁見は許可するんだから」
「いえ、ですが…」
(この声は!)
外ではリオと思われる人物が城の中へ入ろうとしていた。
「お前たち下がれ!私が対応するのであとは任せろ」
レミアは外に出て兵士を下がらせた。
「ははっ!」
「ッチ、いいとこのお嬢様はもう副団長気取りか。俺は認めねえからなコネやろう!」
門兵の内の1人はそう言いレミアに悪態をつく。
「そのくらいにしておけ。罰則物だぞ!」
「へっ、お前は許せるのか?まぁ、今はあの野郎に任せるか」
そう言って間を開けるとリオが中へ入ってきた。
「ありがとうお嬢さん。いやー、急いでたから助かった助かった。ハッハッハ!」
「あ、ありがたきお言葉。ですが、今は国王様用に残しておいてください」
「俺はそんな大層な人じゃねえよ。適当に聞いてくれ」
(本物のリオ様だ!やっぱりカッコいい。さすが私の憧れの英雄…)
レミアはの家にはリオの経歴を調べ尽くしたノートにその強さについて考察されている本、学園時代の逸話など様々なリオの情報物を持っている大ファンだ。その対象が目の前にいきなり現れて慌てていた。
(落ち着け私。今は副団長だ。ふー、よし!これでいい)
「いえ、当然のことをしたまでです。ところでなぜ国王様といきなりご謁見を?」
落ち着きを戻したレミアはリオへ対応しなければならないと言う任務感と、素の疑問から質問した。
「あ、えーと、ちょっと聞きたいことがあってな。それよりお嬢さん大変だな。結構煙たがられてたぞ?」
「お嬢さんではなく王国騎士団、緑の副団長です」
「あー悪い悪い。でも、そんなに若いのにすげーな」
(キャァ、お嬢さんだって!いやいやダメ。今はかなりの緊急事態。それに威厳を保たねば!)
「分かってくれればいいのです。ご質問に対してですが、私は若くしてこの地位に着いたので、嫌に思う者も多いようで」
「大変だな、才能を持つゆえの苦労か。でも、俺は頑張ってる奴は好きだぜ?ま、何かあったら相談に乗るぞ?頑張れよ!」
(リオ様に好き?好き!好きって言われた!それに相談にまで…。あー、今日一日、いやこの事件が終わるまで私は折れないぞ!)
「勿体無いお言葉。いえ、心から感謝申し上げます。では、これから待合室までご案内させて頂きます」
こうしてレミアはリオを待合室まで連れて行った。
(やばい、間が持たない…)
リオを案内したが、レミアは緊張してこれ以上話しかけることができず、リオも難しい顔をしていたのでとても居心地が悪かった。
(もしかして、リオ様は今の問題を知って駆けつけたとか…。ないか。赤部隊と見習い騎士の訓練をしていらしたけど流石に短気なあいつらでも機密情報は…。まさかね。あ、ここ穴空いてるからこの部隊置くか)
頭の中で、人員配置と並行して考えているとノックが聞こえた。待ち時間はおよそ15分程だったがレミアにとって、とても長い時間だった。
「入れ」
レミアが許可すると、リオの情報を知らせてくれた男が入って来た
「失礼します。国王様が謁見を許可されました。それで、直ちにと」
(会話が気になるな。よし、御案内して扉からそうっと…)
「それとレミア副団長様もご同行しろと」
「わ、私もか?」
不思議に思いながらもレミアはリオと共に謁見の間へと急いだ。
扉の前まで来てレミアは震えていた。
(そう言えば私の隊だけ命令の数が少なかったような…。まさか剥奪とかないよね?はは、笑えない…)
扉が開かれる前、リオは口を開いた。
「副団長、肩の力抜きな。力入れてもいいことないぞ。まぁ、王の前で緊張する奴を見るのは多いが意外と気さくな王様だ。リラックスしようぜ」
「は、はぁ」
心配していることは違うのだが、リオの言葉で少しリラックスできた。そして、門はゆっくり開かれる。