第12話「王都での異変」
2020、4/25現在まででかなり大型の改変は終わっりました。しかし、また改変していく事があるかもですので器の広い皆様に頼らせてもらいます。
今はゼクシオは9歳となり魔学舎では3年生。魔学舎の学習は1、2年時にはそこまで力を入れておらず内容の難易度もさほど変わらなかった。その中でも特に大陸文字と簡単な算術、魔術基礎力の向上がメインだった。大陸文字は日本の平仮名とほぼ同じような仕組みで字の並びから意味や言葉が生まれる。おかげで文字の据置をするために一度日本語を書いて書き直すこともあるが、だいぶ文字には慣れてきた。後は大体外で自然と触れ合ったり学習を楽しむためのちょっとした遊びなどが行われた。
休日は週に一度の光間日だが、各界に入ると最後の1週間は各種族祝いの休みが来る。月の終わりはその名残を受けて、1週間の月休みがあった。
その中でも5界の終わりの月休みは、人間族の間でお祭りが行われるため、村もその波に乗るようにお祭りを行う。魔学舎でも教室を飾ったりして盛り上がっていた。もちろん、この時期でも魔術基礎練習は行われている。
丁度その時期に入る一ヶ月前、リオは2年ぶりに村へ帰還を許され移動用の馬車を雇っていた。森の間はクレードホースが引く馬車に乗りながらの移動するのが、簡単な移動手段だ。普通、森を介した移動の際は移動会社が冒険者などを雇って護衛を任せるのがほとんどだが、リオが護衛は自分がすると言い出し業者が困惑していた。
「ですが、いいのでしょうか?あなたを乗せてお金まで取ってしまっては申し訳なさすぎて…」
「嫌、いいよ。もらってくれ。それに、家族のお土産が多過ぎてこっちも迷惑かけるし、人手は最小限の方がいいと思うんだ。なぁ?」
「はぁ。で、ではあなたに対する代金はあなたの荷物量で差し引いきます。ですが、そのままあなただけにお金を払わせてはこの移動屋の器の狭さが知られてしまう。これでも、業界では1、2を争う店舗ですので。ですから、このパスをサービスで付けさせていただきます」
「お、これは!これをただで貰っていいのか?」
「はい。ですが、移動代金は拝借させて戴きます」
そう言って受付の女性はリオにクレード移動社パスを渡した。
(これ、冒険者の時よく欲しがってたなぁ。全店舗での移動費は2割引、護衛冒険者もB級以上から選べて料金も安い。冒険者ならクレードホース1匹をそのまま借りる事も出来たし運悪く失っても返済料は半額でいい。それが全て10年保証。
まぁ、国から移動手段を直接借りれるようになってからパスの必要もなくなって買う気が失せたんだが、普通なら結構欲しがるパスに変わりない。あ、あと上級馬車の確約だっけ?確かに通常馬車は揺れ耐性も普通だし、座り心地が悪くて長旅は身体中痛くなるんだよな。まぁ、今は料金叩けば乗れるけど、あいつらに回す金が増えていいか。
それにもう直ぐゼクシオも発展期だろうしパスをあげるか?いや、でも実力をつけるためには力を貸さないほうが…。ま、移動中にでも考えるか)
そんなことを考えながらリオは料金を支払う。
「では確かに。今後ともクレード移動社をご贔屓に」
そう言い残して女性はお辞儀をすると注文承認表を渡して次の客を対応していた。リオは渡された注文承認表を持って外に出た。外に出ると、壁に貼られている様々なチラシの中から一枚のチラシを見つけた。
(お、パレードの警備人員募集のチラシか。そろそろ5界祭だもんな。あいつらを連れてきてやるかな?でもルザやレイアに長旅はキツいだろうしなぁ。上の2人だけでも連れて行くか?流石に一度も無いのは辛いしな。村の規模と王都の規模じゃ格が違う。よし、)
リオはクレード移動社受付本部を離れて少し先の馬車駐屯所を目指した。すると、珍しく騎士団がチラホラで歩いていることに気づく。
(おかしい。普通、騎士団が出るのは国の危機や上級貴族と王族の警備時のみ。今は戦争も沈下中で大きな異変は無いはず)
「おい、何があった?」
リオは近くを通りかかった男の騎士を呼び止めて声をかけた。
「すみません、すみません!騎士としての自覚が足りないのは承知ですので今より精進します!」
若そうな少年はびくつき、目を瞑りながら声を上げるので周囲の目を惹きつけた。
「お、おい。何があった?」
リオは続けて声をかけると、目を瞑りながら声を上げた少年は目をゆっくり見開いた。
「あ、あなたは教官じゃない?て!英雄リオ様じゃないですか!騎士学校の資料で見ましたよ!まさか、こんな所で英雄様と会えるなんて…」
「ま、まぁ今は後方で支援しかしてないが…。それより何があった?こんなに騎士を見かけることなんて珍しいぞ?何か、治整局ではなく騎士団が対応せざるを得ない事態でもあったのか?」
「そ、それが…」
少年は渋って中々口を開かない。
「なんだ?言ってみろ?」
「その、今朝騎士団本部に脅迫があって…」
「内容は?」
「…『5界祭中にアクラナ王国御三家の内の1人を頂く』と」
「バカな、あの御三家に手を出すと?しかもわざわざ脅迫してまで?それで、相手は分かったのか?」
(クソ、メノードも狙われてるのか?)
リオの頭には友でもある現サードント家当主のメノードが脳裏に浮かんだ。
「脅迫は固定通信板からでしたので、逆探知をして通信相手を見つけることはしたのですが…、犯人は洗脳され操られていたようでして。操作部に回しても記憶が綺麗に抜き取られていると。そして、現場には一枚の置き手紙が」
「その内容は?」
「『おつかれ様、獣達。今日もお国は守れて満足か?我々は負の連鎖を断ち切るためなら何度でも矢を刺そう。世界はあまりに暗すぎる。 アルタエコー』と…」
「何!」
リオは最初の少年よりも声を上げて再び周囲の注目を集めてしまった。
「すまん。だが、アルタエコーが狙っているだと?」
「はい…」
互いに顔が暗くなった。
「悪にあまり優劣は付けたくないが、聞いた話ではアルタエコーはほとんど人々を苦しめていなかった。何故、御三家を?今の御三家は領民からも慕われているはずだ!」
リオは訳が分からず混乱していた。
「ですから!我々も理解しかね、取り敢えず御三家に関係する人物は全て警備しようと出払っているんです。きっとそのうち冒険者にも緊急依頼が行くはずです。何せこんな新人の僕にだってレウィグ村の警護を任されちゃったし…」
その言葉を聞いてリオは反応した。
「お前はレウィグ村へ任命されてるんだな?」
「は、はい」
「だったら俺と先に村へ行くぞ!早めに人手が多い方が助かるだろう?安心しろ、俺が国王には連絡しといてやる」
「え、え?えぇ!」
「よし、決まったらもう一度受付し直すか。お前は準備が終わったら俺に連絡しろ。出発は明日の早朝だ。ほら、受信登録するぞ」
そう言ってスマホのような形をした透明の板をポケットから出した。
「は、はぁ。でも教官に怒られ…」
リオは渋っている少年が手に持った通信板を奪うと自分のと重ねて両板が一瞬色を放った。その後、少年へと通信版を返した。
「俺は元冒険者だったが、動くなら早くて損はない。それに、俺が元々短期だったのも関係があるのかもな。それじゃ、自己紹介するぞ。俺は知っていると思うがリオ・アロンスフォート。お前さんは?」
「エ、エレメス・ドレインブルクです!」
「おお、あの!期待しているぞ!」
「いえ、自分はそういうのは苦手でして。本来期待されるべきは兄の方で…」
エレメスがぶつぶつ言っている間に、リオは名前を聞くとさっきのクレード移動社へ引き返した。その後、エレメスは困惑してその場に立ち尽くした。