第10話「族界物語」
ゼクシオはこの世界がシャウスと呼ばれていることを最近知った。古より伝る、それも魔神が名付けてくれたと言うその名前。今では誰が命名したのかさえ定かでない為、各魔神を崇める宗教団体がいまだ議論し合っている。
その事は置いておいて、ゼクシオはこの世界シャウスにおける年、月、週、日、時が前世とほぼ同じである事を転生当時から疑問だった。月だけは十六月とずれるが、それ以外が何故ここまで酷似しているのかは分からなかった。そんな時、魔学舎では月に関する授業があった。
「皆さんは1ヶ月、2ヶ月のように月を数えますが、『族界物語』が関係しています。今までに読んだ事がありますか?」
『はい!』
(前に母さんが読んでくれた奴か。確か、それで六種族についてどんなのがいるか分かったんだよな)
この『族界物語』とは前世で言う昔話のような物だった。
六種族は当時最も賢い生命であるとされていた。魔神は全てを愛していたが、深く交流しようと自ら歩み寄ったのはこの六種族である。
その昔、六種族は族界と呼ばれる世界に6つに別れ、それぞれ一種族百魔種と言われるほど魔物や魔植の割合が多い世界で住んでいた。
その後、黒の神が世界を黒に染め上げようとして次第に族界も侵食されていった。そこでクロノは力を合わせて世界を守る為、族界を繋げてた。それにより世界には1年にそれぞれの種族の環境に合うような季節を作ったと言われている。
物語の最初は主人公達人間族は同じような種族といきなり生活が始まるので戸惑った。当然である。なぜなら、族界では稀に別種族の者が別の族界に紛れ込んだ存在、漂流者がいたがそれは強大な力を持ち、現れた世界では変革を起こしていたのだ。その為、他種族をそれぞれ力の存在として認識している者が多かった。
だが、すぐに黒の神に危険が迫り各種族は次第に協力するようになって今のような他種族社会の基盤ができた。
で、この他種族社会になった時に互いの種族の親睦を深めようと種族に合った季節、時期にお祭りが始まった。そのお祭りは約二月ごとに行われていた。そのお祭りを主人公が手伝いながら巡る旅をするのが『族界物語』である。
「では、各月ごとに何の種族のお祭りがあるのか知ってますよね?」
「俺知ってるぜ!1、2月は神様達を祀る為にある神期だから種族は関係無いんだぜ!」
ラドが食いつくように身を乗り出して言った。
「ラド、そんなの誰でも知ってるわ!やっぱりラドはうるさいだけね」
そこで、クラスの女子2トップのネナが口を出した。そしてもう1人のライザも追撃する。
「そうよそうよ!それに、神様を祀るのは15、16月の終期もでしょ!やっぱり私たちの方が頭いいわね」
「うるせ!黙れ!」
「お静かに。皆さん言っている内容は正しいので喧嘩しないで下さい」
ミデルゼが注意して教室は再び静かになった。
「皆さんも知っているように二月で様々な時期に分かれています。ですから、まとめて二月を昔にちなんで一界と呼びますね。『年八界』。これは『一年十六月と長いように聞こえるけど族界で表すと数字が半分の八族界しか無いから大事に過ごそうね』という意味で時間を大切にしようと言ういい言葉です」
ミデルゼは族界と言う呼び名の説明を終え、生徒の語彙を増やした。
(ことわざみたいなもんか。あぁ、青春も年八界…)
早速ゼクシオが使っているとミデルゼも使い方のシチュエーションについて説明していた。
「皆さんも覚えたら、歳を取って若者達に言ってやると貫禄がつきますよ!私もそんなシチュエーションになったら行ってみたいです!しかし、息子に言っても反応してくれなくて…」
「センセー、貫禄ってなんですか?」
ラドが質問するが、ネナとライザも分からないためさっきのように攻撃してこない。
「バッチみたいな物ですよ。色賞でもいいですね。色賞が付いている英雄はカッコよく見えるでしょ?」
「ああ!キングビースターみたいな事か!」
「はい!あなたが大人になった時に自分の子どもに言うとキングビースターになれるんですよ!」
「なるほど!」
(なわけが)
キングビースターとは獣人族の英雄の話である。仮面を被り名前を明かす事なくただキングビースターとだけ名乗り次々に悪を倒す。その称号として国は色賞を渡そうとするがすぐにその場を去り受け取らない為、犯罪現場に置いておくと次の日には無くなっている。そして、再び現れた時には前回の色賞を身につけているのだ。最後は強大な敵の攻撃を前に自らを犠牲に人々を助け、色賞と共に爆発で散る壮大な死を迎えた。
そんな男の代表のようなキングビースターに貫禄をつけたら誰でもなれるなどゼクシオは思わなかった。
(キングビースターの方が何十倍、いや何千倍もカッコいいし!てかキング様と比べんな!)
熱狂的なファンである。クラス中の男どもも熱心にこの話を聞いたが女子だけはほぼ無関心だった。
「ゼクシオ君!キング様の良さがわかるの?」
「ああ!」
だが隣のリーフィは何故か男と一緒に目を輝かせていた。
(めんどくさい子だけどキング様の配下に嫌な奴はいない!)
少しの時間はクラス中でキングビースターの話題になるが、鎮火すると再び族界について話始めた。
「ごほん、取り乱しました。では、他の族界は知っていますか?どんどん出してください。
「はい!キングビースターの月、13、14月!」
「お、ガラディー君正解。7界は獣人族の獣人族ですね。さぁ、どんどん!」
こうして全てが出し尽くされ、ゼクシオが最近読む事はだいぶできるようになった大陸文字で黒板に全て書かれた。
――――
春
1、2月 1界 神期
3、4月 2界 魔人族
夏
5、6月 3界 海人族
7、8月 4界 地守族
秋
9、10月 5界 人間族
11、12月 6界 森怜族
冬
13、14月 7界 獣人族
15、16月 8界 終期
――――
「各種族の呼び名は我々人間族がつけた名称、人間族と魔人族の呼び名は他種族がつけた名称です。人間族と魔人族は他からは見間違えるほど似ているようで名称が似てるんですね。ちなみに、ほとんど古代大陸文字の意味で作られています」
ミデルゼが話し始めるとみんなサササっとノートにメモし始める。このクラスは皆やんちゃだが根は純粋で真面目なのだ。チャイムが鳴るとミデルゼは終わりを告げた。
「では、チャイムが鳴ったので給食の準備をしましょう」
「起立、気をつけ、礼!」
何故かゼクシオがパンツマンで魔術も使えると言う理由で勝手にクラスの号令係になっていた。こうして、ゼクシオの号令で挨拶を終えたら給食の準備が始まった。