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異世界大陸  作者: キィ
第二章 魔学舎入門
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第6話「観察授業」

 集合場所である学校の門まで行くと、既にみんなが集合していた。ミデルゼは最後に来たゼクシオ達のグループを確認すると、全員列に並び終える頃に話し始めた。


「皆さん集まったようですね。では、今から魔学舎の外に出て魔植(ティリム)観察を行います。最初は行動範囲の説明をするついでに魔植の紹介も少ししますので、その後に観察を行ってください」


『えー』


「観察した物は前に配ったプリントに好きなようにスケッチして構いません。それから、時間は学校のチャイムが鳴ったら門に集合です。では早速行きましょう!」


 クラスはざわつきながらも列を乱さないようにミデルゼの後をついて行き、様々な魔植の説明を受けていた。魔学舎を一周し終わる頃、近くの丘へと移動して村中に青と白の花吹雪を巻き起こす木々の説明が始まった。


「では最後の説明ですね。この木は皆さんのほとんどがご存知のエカの木です。“運命の木”、“出会いの木”通称”巡り木“とも言われますね。エカはこの時期になる様々な所で見られますね。各個体によって白か青、どちらか一色の花を咲かせてこの様に綺麗な花吹雪を起こしてくれます。実はエカの花には面白い性質があります。それを話す前に、皆さんはお花の種がどうやってできるか知っていますか?分かる人は手を挙げてみましょう」


『うーん…』


 受粉についての質問をするがまだ習っていないのでクラスは沈黙する。その中で3人、挙手をして答えようとする者がいた。周囲がざわつき3人に注目が集まる。その中にゼクシオは教室で話しかけた1人ぼっちの少女もいる事に気づき、驚いた。


「まだ教えていない事なのに、手を挙げてくれる子が3人もいるとは!先生びっくりしました。そう言えばケイラさんのお家はお花屋さんでしたね。それでは今回はケイラさんに聞いてみましょう。ゼクシオ君とアフィナさんもありがとうございます。ではケイラさん、お願いします」


(へー、アフィナって名前なんだ。あの子、意外と物知りなんだ)


 アフィナは当てられなかったことを特に気にする事なく、また1人になっていた。その間に、当てられたケイラはハキハキと説明していた。


「お花はおしべとめしべと言う部分があります。おしべには花粉があって、その花粉がめしべに着くと新しい種ができます」


「正解です。よく出来ました」


『おー!』


 クラスは驚きの声で包まれた。ケイラは当然と言う様な態度で胸を張っているが、嬉しそうだった。


「今の話の様に、お花は花粉と呼ばれる粉がめしべにくっついて種ができ、それを埋めると新たな植物が生まれます。魔術でも新たに植物を生やすこともできます。魔術については今は置いておくことにして、今からエカについての話をします。実はエカの花にはおしべもめしべもありません」


『えー!』


「それじゃ、増える事ができなくてかわいそう!」


 クラスは最初の話と違うため驚いた。その中で1人の少女は本当に悲しむ様に声を上げた。


「フフ、そんなに心配しなくても良いですよ。最後まで聞きましょう。おしべもめしべも無いかわり、エカの花びらにはそれぞれ魔力が込められています。そして、その魔力は地面や他のものなどに触れてしまうと流れ出ます」


「それじゃ魔力あっても意味ないじゃん!」


 今度はなんにでも飛びつく少年、ラドが声を上げた。


「いえいえ。これが大事なんです。白の花びらは最初に白の花びらに当たってしまうと空中に魔力が流れ出てしまい、別の物だとそれに流れ出てしまいます。青の花びらも同様です。しかし、最初に巡り会う物が互いに白と青の花びらだったらどうなると思います?」


『うーん…』


(なんだろうか?流れ的に、それが条件で種子ができるとかだろうな)


「私、ママから聞いた事ある!」


 ケイラは再び反応を示し、クラス全体もまた驚いて注目した。


「では、ケイラさんお願いします」


「白の花びらと青の花びらがくっつくと、お互い混ざり合って新しいピンク色の花びらになるわ!」


「よく知っていましたね。さすがお花屋さんですね」


『おー!』


(やっぱりか。でも不思議だな)


 ミデルゼは落ちている花びらからピンク色の花びらを探して拾い上げると、手のひらに乗せて見える様にしながら説明する。


「この様にピンクの花びらになりますね。ちょうど花びらの付け根だった部分に小さな黒い粒があります。これがエカの種です。このピンク色の花びらは少し甘い味がするので、よくいろんな魔物が食べに来ます。美味しいうえに色も目立つので、すぐに食べられてしまいます。しかし、食べられた後はフン、まぁうんこですね。うんことして外に出て来ます。こうして食べられることによって魔物に種を運んでもらい、少し離れた場所に数を増やしていきます。この運ばれ方は他の魔植でも同じことをする物はたくさんあります。まぁ、まだ難しい話ですし、いずれまた習いますので聞き流してくれて構いません。話を戻しますが、この様に、エカの花びらは青色と白色の花がそれぞれ別の木に咲き、最初に互いが巡り会うことで新たな命の塊を作ります。この恋人の様な運命的な出会いから“運命の木”や巡り会う木で“巡り木”など呼ばれます。そして、エカの花は巡り会う花で“巡花(じゅんか)”ですね。なんてオシャレな呼び名でしょう!皆さんもエカの花びらはとてもドラマチックだと思いませんか?」


 女子の間では内容が理解できるのかはしゃいでいるが、男子の方はなんとも興味なさそうだった。ミデルゼは、女子が共感してくれることを喜びながらも男子の態度を見て話を切り上げた。


「まったく、男子の皆さんはまだまだ子どもですね」


「なんだとー!」


「はぁ。では、話はここまでにしておきましょう。それでは、これから約20分ほど自由時間です。時間には門に来てくださいね」


『はーい!』


 そう言うと、ミデルゼは手に乗せていたエカのピンク色の花びらを食べ始めた。


「ハムハム、うん!やはりピンクの花びらは美味しいですね。あぁ、言い忘れてました。青と白の花びらは食べられますが、薬として使われたりするのであまり美味しくないですよ。それと、食べ過ぎにはご注意を!探しているうちに時間が無くなってしまいますからね。では解散!それでは私は花びらを…」


 そう言ってミデルゼは解散を告げると花びらを漁り始めた。クラス内でもピンクの花びらを探し始めた。女子達はとても現実を見ていて、お持ち帰り用に1、2枚ほど取ると食べるのも1枚程で区切りをつけ魔植観察へと移った。一方、男子のほとんどはミデルゼが危惧した通り花びら探しに夢中だった。


「これで5枚!」


「僕も4枚目!」


「お前らな…」


「俺も6枚!」


「ムランまで…」


 ゼクシオ達のグループも花びら探しに夢中だった。ゼクシオは呆れて周りを見渡すと、綺麗なエカの花吹雪の中、クラスの男子らと共にミデルゼも楽しそうに花びらを探す姿があった。


「お、みっけ」


「センセーずるい!それ俺の!」


「フフ、食事(花びら)探しに先生も生徒もありませんよ。あ、また見つけました」


「あ!また!」


(おいおい、先生だから生徒に注意しなくて良いのかよ…)


 ゼクシオはそろそろ魔植観察に移ろうと呼びかけるが、誰も丘から動こうとせず結局チャイムが鳴るまでに丘に生えている魔植を1種類だけ1人で観察した。


「こう書いてこう!いやー画力は無いけど我ながらうまく書けた。ん?」


 丘では数人の女子が魔植観察を行う姿も見られるが、アフィナはまた1人で行動していた。側にはピンクの花びらの山があり、魔植観察をしながら花びらを手に取り食べていた。花びらを食べる時の顔は少し頬が緩んでとても可愛らしい姿だった。


(ポテチ食う時の俺みたい。でも可愛いなー。本当に普通にすれば可愛いのに。うちのメイドさんと同じ属性なのかな?ま、今は置いといて俺もそろそろあっちに参加するか!)


 1種類だけ魔植のスケッチを終えるとゼクシオは立ち上がり、結局他の男子や先生が行う花びら探しに参加した。

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