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異世界大陸  作者: キィ
第一章 記憶覚醒
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第22話「復興作業」

 レウィグ村には魔災後で土地が抉れ、サードント領内から沢山の人が復興活動の手伝いに来てくれていた。


「す、すげぇ…」


 魔術で村の畑は次々に整備され、植物が植え終わると半日でもう芽が生えてきた。川にかけていた崩れた橋は複数人がかけて、簡易的な物だが雑な木の道が一瞬で繋がった。崩れた家の周りの石垣なども一人一人じっくりと作り上げて一から作り直していた。そして、子ども達も吹き飛んだ物をみんなで拾っていた。


(こんなペースなら人数こんなに必要なくないか?)


 ゼクシオはそれを見て驚愕していた。


「おーい、ゼクー」


「あ、セナ!」


「被害大丈夫だった?」


「うん。セナの家こそ大丈夫?」


「もちろんよ。早く復興終わらせてみんなで遊びましょ?」


「そうだね」


(そんな上目遣いしないで…、理性がぁ、、可愛いな。それよりもこのペースなら一瞬で村が元に戻るだろうな。だからみんなそんなに暗くないのか)


 セナの可愛さを再認識し、周りの様子を見ていると、家方からリオの声が聞こえてきた。


「やっと修理終わったか。いやー、大変だったな今まで」


「すいません、人手が足りなくて遅くなりました。復興隊について来て、ついでに持って来ました。今回の魔災はまだ小さくて良かったですね」


「そうだな。それよりこれでやっと風呂に入れる」


「一ヶ月も大変でしたね」


「水浴びは出来てたけど風呂の方がいいな。魔術のお湯も面倒くさいし、ハッハッハ!」


「はぁ、ではこれで失礼します。復興頑張ってください。


「おう、わざわざ来てくれてありがとな」


 リオはちょうど眼鏡の知らない人と会話を終えてこっちに向かっていた。


「父さん、どうしたの?」


「今ちょうど風呂の修理が終わったって修理の人が来て、風呂が戻ったんだ。みろ、風呂だぞ!」


 そう言って三角錐の透明で少し緑色のものを持っていた。


「って、これだけで見てもまだ分からないよな。これは昨日のバリムアウトと同類の魔道具、“結晶魔道具(クリスタルシリーズ)”の1つ。お湯を沸かしてくれる。優れものことキューさんの三推型がいつも水浴びしてる部屋にあるの分かるか?」


(そう言えばあれが入りそうな凹みが浴槽の壁に…)


「あそこにはめるとゆっくりお湯が出て来てお風呂の完成。一ヶ月ぶりに入れるぞ!」


 そう言ってワクワクしながらリオは復興作業へと再び向かった。


(風呂あったんだ…、意外とこの世界の技術は進んでいるのかもな)


 突然の出来事に驚いていると、セナが後ろから顔を出した。


「良かったね。今までお風呂入れなかったんだ。私のお家に来れば良かったのに…」


「あっ、」


 何故ゼクシオの親はそんなこともしなかったのか。しっかりしているのか、ポンコツなのかゼクシオはますますわからなくなった。



 ****

『間もなく配給を各広場で開始します。手の空いた方からお越し下さい。間もなく配給を…』


 セナと共にそこら辺に飛んできた木の折れ枝などを集めていると、拡声浸透器(ディベロンス)から声が伝わってきた。


「それじゃ、私はいくね。昼にまた会いましょう」


「うん、またね」


(配給って多分手伝いの人達用なんだろうな)


 と思いながらもゼクシオはセナと別れ、家に向かっていた。道中来た時よりもだいぶ綺麗になっていてゼクシオは魔術に感心しながら帰っていた。


 ガチャ


「ただいま!」


「ゼク、帰ったわね。あとはお父さんだけね」


「まだ帰ってないの?」


「もう直ぐ来ると思うわ。さっき領主様と話してたから」


 ガチャ


 ゼクシオの後を追う様に家にリオが帰ってきた。


「ただいま!飯食いに行くぞ!」


「「はーい」」


 ゼクシオとアメルはお腹が空いていたので、リオに駆け寄った。


 アロンスフォート一家は近くの広場に行くと、大勢が既に来て、配給を受けていた。


「配給にしてはご飯の種類とか多くない?」


 前世とのズレが言葉に出てきたゼクシオは、しまった、っと思ったが、誰も気にすることなく、リオが説明してくれた。


「よく気付いたな。あの人たちは自分の新作やら自信作を配給で配って宣伝しているんだよ。領主に恩を売れて、繋がりもでき、お店や料理の知名度も増すからこの領地の復興はこうして沢山の人達がお店をする様に来るんだ。もちろん他の町とかも領主が赴くから、どこも似た感じだな」


「へー、」


「1人1食だぞ!」


「…分かってるよ」


 ゼクシオはその中で何を食べようか迷っていると、その中にお米の様な物の上に肉が乗った料理を見つけた。


(お米だ!他にも食べたいのが沢山あるけど、1番は米だ!)


「父さん、俺あれがいい」


「あれか?いい目を付けたな。イミズナって言う美味しい水からしか育たない魔植(ティリム)から取れる粒を蒸してある物に、グレバスカの肉を乗せた美味しい料理だ。珍しいな。国外で主食の食べ物が来るなんて。

 美味しいから父さんもそれにするか」


「私もー!」


「みんなそれなら私も一緒にしましょう」


 周りをよく見るとその料理が大半を占めていた。ゼクシオ達は列に並び、受け取ると近くで集まって食べた。


(米だ!この味サイコー。この米が主食の国に住んじゃおっかな?そしてグレバスカの肉っていうのも米にあってる!)


 箸はなかったのでスプーンで食べると、器を返して家へと帰った。


「よし、1時間休憩したらまた手伝いに行こうな」


 その後、再びセナと会って掃除をしていると、みんなが集まってきて遊びの流れになり、遊んでしまった。しかし、まだ子どもで、復興作業にも余裕があったので、誰も注意はしなかった。


 その後、ゼクシオが家に帰るとリオがお風呂を沸かしてウキウキしながら俺も入れられた。アメルはまだ小さいので一緒に入ったが、ゼクシオは別に気にしていなかった。


(俺は気にしない。俺は気にしない。俺は気にしてない…)


 事もなかったが、仕方がないだろう。その後、夕食の配給をもらって、ゼクシオは(配給と言う名目で外食ができるっていいなー)と思いながら食べていた。


 復興は順調に進み、6日でほとんど変わらない程に戻り、手伝いの人々は帰ってしまった。今は少しずつ剣術をリオに習いながら、魔術を使う練習を朝と寝る前に欠かさず行い、空いた時間はみんなと遊んで過ごしていた。



****

 ゼクシオがこの世界で記憶の覚醒をした季節は、夏終わりだった。魔災などが色々過ぎると村では何やら人間族を祝うお祭りがあった。こうして秋が過ぎ、冬と共にまた魔災が過ぎて行った。そして最近新たに産まれた弟レイアの兄にもなった。


 ルザーネが入院していたのはゼクシオが入院していたレウィグ総合病院で未明に病院から連絡が入った。リオの透明なスマホ型魔道具から映し出された相手と対話し、それを聞いた彼はアメルとゼクシオを叩き起こし、試作機とか何とかで家に置いてある二輪車(魔力循環二輪車)に乗せて病院まで猛スピードで走った。ゼクシオはその間寝ぼけおり、自分が雷を帯びながら周りの景色がゆっく移り変わるので夢だと思い、再び妹と仲良く眠っていた。


 病院に着いたら2人とも目覚めリオに抱えられて病室に入るとまだセーフだったのでリオがとても安心していた。それからはゼクシオもバンバン働き前回病院で怒られた先生に『あのヤンチャ坊主がまさかここまで有能だとはねぇ。さすがリオさんの家庭だ」と言わしめた。三男のレイアはこうして無事生まれ、ゼクシオは更に自分を磨いた。


 誕生日は16月30日。年終わりの日でもあり年越しの日と同時に祝われ、ゼクシオは6歳になった。生まれたのは丁度年を越す1秒前でどっちの年生まれにするかで皆混乱したのだとか。そんなこんなで今は魔学舎に入る2週間前、ゼクシオは魔術が1つ使えるようになっっていた。


「ハァ、ハァ、ハァ、」


 早く起きた日は気分次第で走り込みを小さな体で行っていたゼクシオは、追いかけっこで隠れているものが多いが、見つけ出し追いつくことがだいぶできる様になっていた。


 立ち止まったゼクシオは目を閉じて、炎の様に揺らぐ冷たいエネルギーをイメージし、ついでに詠唱することでもイメージを深めていた。そこからゆっくりと冬の魔災を思い出すと魔術が発動できる様になったのだ。


氷炎(フリズレイム)!」


 その氷炎は冷気を帯び、触れた箇所から氷結していく。


「いつ見ても綺麗だな。まだゆっくりとしか発動できないけど、少しずつ練習すれば解決するか」


 手から出ている炎の様に青白く、透き通った氷炎の揺らぎを見つめながら、ゼクシオは初めて魔術が使えた日を思い出していた。

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