第20話「これからについて」
「えーー、お父さんお家から離れるの!アメルも連れて行って!」
アロンスフォート家ではリオとルザーネが大事な話があると言って家族会議が行われていた。
「ゴメンな、今回は断ることもできねぇんだ」
「なんで!」
「魔族との戦いに備えてこっちも戦う人を育てないといけないんだ。今まではゴメンなさいって言っとけばお家にいることもできたけど、そろそろ危ないから絶対来いって国が言ってるんだ。大丈夫。まだ大きな戦いが始まるわけではないから」
「いつ帰るの?」
「んー、まずは2年くらい向こうにいる。で半年お休みもらって帰ってきてまた2年が繰り返し?
「2年も帰ってこないの?」
「母さんが子ども産むまでは待ってくれるって。半年休みをもらえるし、それにちょこっと休みもらって遊びに来てやるから大丈夫」
「本当?」
「ああ、約束は守る」
「みんなでついて行っちゃダメ?」
「あっちではみんなが住むお家がまだ無いし、アメル達も村のみんなとまだ一緒にいたいだろ?
「……、パパと一緒ならどこでもいい」
「本当か?でも、せめてアメルが魔学舎を卒業するまではこの村に居ないとな」
「どうして?」
「実は母さんも呼ばれていたんだ。だけど今は赤ちゃんがいるし、仕事に行き出したらお前達はまだ幼いのに親が2人とも居なくなっては危ない。
面倒見る人を呼べばいいが、俺たちはお前達と少しでも長く一緒にいたい。
だから父さんだけ長期的にいる代わり、母さんは見逃してもらったんだよ。
向こうに行ったらお母さんが近くに来ることになって、結局呼ばれる。そうすれば半日は家にいられないことになるだろう」
「……」
「でも、アメルが卒業する年になれば好きに行動できるからな。何せ、夢の発展期。やりたいことをやっていい時期さ。な?だからあと少しはこの村にいないと」
「………、難しい話なんて分かんないもん」
プイっとそっぽを向いた。アメルは年齢以上に精神がしっかり成長しているため、話の内容のおおよそ理解はできてはいるが、リオと離れるのが辛いようだ。
ルザーネはこの話を事前に知っていたようだが、アメルの反応を見て悲しそうな顔をしていた。
「大丈夫。アメルは強い子だ。俺が誰にだって自慢のできる子供の1人だ。それに、魔学舎の夏休みと春休みの間は王都に遊びに行けるだろ。母さんはお腹の中の子供の世話で無理かも知れんが、村の人と一緒に来ればいい。な?」
「……うん」
アメルは相当悲しいようで目に涙を浮かべている。泣くとリオを困らせることが分かっているため、幼い体で涙を我慢していた。
「無理させてゴメンな。親の都合で」
そう言って、俺とアメルをもう一度見て、リオはこう付け足した。
「でも我慢はしなくていいんだぞ。子どもはまだ成長の途中。学ぶことがたっくさんある。未熟で当たり前だ。
父さんがいない時は母さん大変だろうからアメルは兄ちゃんのゼクシオに頼れ。ゼクシオは男だから家族は支えろ。辛い時は友達を頼れ。
そして、本当にどうしようもない時は、2人とも母さんを頼れ。母さんはこれから父さんの分までお前達の世話をしなければならない。
でもな、お前達の母親だ。俺の奥さんだ。こんなことで折れたりはしない。だから最後は頼ってもいい」
「そうよ、お母さんはこれからお腹のこの子も育てないといけないけど、それ以前にあなた達の母親よ。これから大変になるけど、頼ってもいいのよ」
「パパー」
ルザーネが言い終わると同時にアメルは我慢しきれなくてリオのところに飛んで行って泣いていた。
「そうだ、今はまだ我慢しなくていい。まだ少し父さん家に居るから、少しずつ強くなればいい」
ゼクシオはこの時までまだ一度も言葉を発していなかった。
「ゼク、我慢しているの?今はまだいいのよ?」
「母さん違うよ。俺は父さんが国に認められているって知ってすごいな、って思ってたんだ。だから悲しいってよりむしろ誇りに思ってるよ!確かに一緒にいられないことは悲しいけど、また会えない訳ではないから大丈夫!」
「そうか、さすが俺の子だ。泣いてくれないのはちょっと悲しいけど…、ま、男だしすぐ泣くもんじゃないな。ワハハハ」
「本当にゼクはよく育ってるわね。でも、父さんみたいにいつかなるのかしら?」
「ならないよ」
「ハッハッハ、ならないかー。それはちょっと悲しいな」
アメルはまだ泣いてはいたが、事情は飲み込んだようで少し笑っていた。