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異世界大陸  作者: キィ
第一章 記憶覚醒
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第19話「決闘1 ゼクシオVSクロ」

 夜空を見た3人は、ベットにいないことが巡回の看護師にバレて病室で待ち伏せを喰らった。ガラスを割ったことと抜け出したことで、あと退院は1日延期になった。これは病院ではなく親の意向であった。追加の1日がすぎて、3人はそれぞれ迎えてがきて、自宅に帰ることとなった。


 ゼクシオはリオとアメルが迎えに来てくれ、3人で仲良く家に帰った。


 ガチャ


『ただいま!』


「お帰り、退院できて良かったわね。余計なことしたみたいだけど…、無事に戻って来てくれて嬉しいわ」


 ルザーネは少し怒っているようで顔が怖い。


(あ、これ怒らせちゃいけない人だ…、以後気をつけよう)


 ゼクシオはルザーネの一面を知り、今後の方針を固めていると、久しぶりの美味しそうな匂いがした。


「わぁ!美味しいスープだ!」


「あら、喜んでくれて嬉しいわ」


 病院の食事の味はパンの味以外ほとんど薄味であんまり美味しく無い。その分回復力が上がる薬草やらなんやら入っているが、家の味に越したことはなかった。


(ん?まさか…)


 ゼクシオはルザーネをこの数週間見ていなかった。故に気づくことができなかったが、そのあいた空白の時間が前のルザーネと余計比較しやすくなった。そこであることに気づく。


「母様、お腹大きくなってない?」


 リオとアメルがニコニコ微笑んでいた。


「ゼクには退院して帰って来てから改めて言おうと思ってたの。お母さんね、赤ちゃんできたの。ゼクは今日から2人のお兄ちゃんね」


「ぇえ、えーーーー!本当?本当に本当?」


「本当よ、大袈裟ね。まだ男の子か女の子か分からないけど、もう見てわかるほどお腹が変化したからあと半年もすれば生まれるわ。魔学舎の入学までに間に合いそうで良かった。ねー、赤ちゃん」


(そうか、今は5歳で魔学舎は満5歳から入るから来年なのか。それにしても赤ちゃんかー。もっとカッコよくなってないとな。しっかり兄貴できるように頑張るか。ていうか、いつ親の貴方達は励んでんですか?俺はそうゆうのちっとも分からなかったよ?この世界でどうお手本を見て学べと?あれ、この世界そっちに厳しい世界…。ま、家族が増えるんだ。嬉しいな)


 ゼクシオは変な思考に流れそうになったが、新たな家族の報告を心から喜んだ。


「さぁ、ご飯出来たわよ。手伝って」


「はーい」


 食事中、ゼクシオは病院での魔術の成果で少しでも親を安心させようとしたが、まだ未完成なので、報告は控え、代わりに森の事件があった日の体験談や、病院で行った行動や新たにできた仲間について話した。周りから見ると、ゼクシオは本当に楽しそうに生活をしていて、リオとルザーネも安心した。




 ****


 ドス


 …イタイ、ネムイ


 ドスドス


 …ネムイ、ネムイ


 ドスドスドス


 …グッへ



「トリプルインパクト!」


 懐かしい感覚で目覚めると、前のようにアメルの足に蹴られていた。


「…むにゃむにぃ、んー、………」


「そうか、ここが家なんだよな」


 アメルをそっと撫でると、布団から起きて扉を開けた。しかし、周りもまだ暗く誰も起きていないようだった。


「んーー、久しぶりにラジオ体操でもするか」


 ゼクシオは背伸びをして、外へパジャマのまま出ると、うろ覚えのラジオ体操を開始した。


「メメもおはようだったな。肩にいてもいつも忘れてる俺は失礼だよな?」


「……」


 メメはうなずいたようだ。きっと周りから見ても気付かないが、ゼクシオには感じることができた。


「だよな。よーし、今日からニューライフ再開だ。元気なのに病院での生活日数が多い新人生なんて誰も望まねーだろ?さて、これから新たな人生の1ページ作っていきますか。メメはどこまでもついて来てくれるよな?」


「……」


「だよな。よし、母さんが起きたら朝の仕事手伝うか」


 ゼクシオは深呼吸を終えると、日の出を出迎えて家の中へと入った。


 ガチャ


「あら、今日はずいぶん早いのね。それじゃ、朝の仕事手伝ってもらおうかしら」


「いいよ、母さん何から手伝えばいい?」


「?あら、母様って言わないのね」


(?そういえば今まで…、なんでそんなことしてたんだろ?)


 お互い顔を見合わせて不思議な顔をした。


「様付けの呼び方、そういえばセナちゃんの家に遊びに行ってからその言い方だったわね。今まで影響されていたのかしら。ウフフ。それじゃ、最初は…」


 2人ともそんなに気にすることなく、朝の仕事へと向かった…




 ****

 その後、リオ、アメルの順で起きて来て、朝食を終えたあと、ゼクシオはカイやレルロ達と遊びに家を出た。ちなみに今日の朝食はサンドウィッチだった。


「お昼ご飯には帰るのよ、それと気をつけてね」


「はーい、行って来まーす」


 アメルはまだ寝起きで機嫌があまりよろしくなかったため、ゼクシオ1人で出掛けた。


「やべ、みんなの家知らねーや。どうしよっかなー。まだ朝なってすぐだし大人達しか家の外にいないや」


 そう思いながらぶらぶら歩いていると、いろんな人に声をかけられた。


「お、もう退院したのかい?若いねぇー」


「リオのせがれや、もう心配させるでないぞ」


「お、ゼクシオ君?聞いてた通りカッコかわいいわね。食べちゃいたい」


「ここはどこかいな?ばーさんやー。昼寝してたらもう朝だぞーい!おや、君は誰じゃ?もう目もぼやけはじめとるわい」


(俺って結構有名人?それよりこの村、結構でっかいな。町と言われてもここから見たら違和感なさそうだな)



 村ではリオとよく一緒に行動していたゼクシオも有名だった。

 そこへ1人の黒に包まれた少年らしき人影が近づいて来た。


(なんか誰かと同じ匂いが…)


 右、左の順で腕を使い黒いコートを翻すと、不敵な笑みを浮かべた。完全に怪しい奴にゼクシオは目をつけられた。

 こんな怪しい人との遭遇は夜のイメージが強いゼクシオだった。だから今、周りが夜で自分がおかしいのか確かめるが、周りは至って通常運転なようだ。


(そうなると、やっぱりこのお方がおかしいだけか…)


 これから起こる事は想像出来ないが、めんどくさい出来事が起きることだけは確かで、ゼクシオは苦笑いを心に浮かべる。


「…、あ、………、…、」


 右や左に抜けようとするが、道端で丁度出会ってお互い同じ方向に2、3回進んで「あ、あ、あ、」となり、次は同時に同じ方向を譲るようなあの現象が起きていてなかなか抜けられない。

 っと周りから見たらそう思うだろう。しかし、実際は黒ずくめの少年が意図的にこの現象を引き起こしていた。


「………………………………………!」

(まさかこの世界にも道端お見合い、通称道オミが存在したとは。

 しかもこいつ意図的に操作してやがる。前世では俺も可愛い女の子を真っ正面で、合法的に、少しでも長く見つめようとするために修練したが、結局歩いて来るちょっと真面目なおじさんか、自転車乗ってる不機嫌なおばちゃんか、気にしていないのにいきなり現れる女性にしか発動しない現象…。

 センサーがしっかり働くあの現象を操作するとは、只者じゃない。しかし、意図的に行う道オミなら、弱点を俺は知っている。それは反応しないこと!)


 ゼクシオは立ち止まった。


「……………………………………!」

(こ、こいつ。途中からこのパーフェクトフットワークを見切って!意図的だと気づいてやがる。その証拠に1回目の「あ、」メーターはたまったのに、2回目からが全然たまらない。

 そして弱点である立ち止まり戦術を使って来た。しかしこちらも止まれば同じこと!お互い見つめ合っては引き際が分からなくなる。

 さすが我が宿敵。最初の仕掛けはドローか。侮っていた。しかしこれもまだ計算通りの型だ。これならどうだ!)


 戦いは次のステージへと進んだ。黒の少年をゼクシオは通称クロとしたようだ。

 改めて通称クロはゼクシオに合わせて立ち止まったあと、互いに見つめ合う形にした。そしてクロはゼクシオの影を踏みに行く。そこから2人の思考はどんどん沼に浸かってゆく…


「………………………………………………………………………ぁ」

(しまった。意図的な道オミの弱点は片方が止まることだが、これは二度と動かない、相手が通り抜けるモーションに入って、こっちも通り抜けることが可能な道が空いたとしても動くことのない鋼の意識が必要なんだ。

 だから意図的に行っている向こう側が立ち止まってしまっても、こちらは動けない。止まらざる終えない。次にまた動きを合わせられたら再び相手の沼に浸かるから…。

 そこをついてこちらを後手に回し、よりにもよってクロは俺の影を踏んできた。影踏みは意識していなければ踏まれてもこちらのダメージゼロ、いや先に仕掛けた相手に大ダメが入るため、カウンターでしか出せないあの高度な技をよりにもよって今ここで!

 こちらが相手の行動に意識をしていればしているほど相手が意図的に影を踏んでくることを理解できてしまい、精神的に削られる暗黒の一手を…)


 クロはキメ顔を影の中で決めて、こう思った。


「………………………………………!」

(決まった。完全に決まった。この影スタンプは成功確率が低く、こちらにも大ダメージの危険がある諸刃の剣。

 しかし最初で理想の型に持っていけた我は、奴に必然的に後手に回らせこの必殺の型を決めた。先に影を踏まれたら最後。

 受けた相手は逃げても全て後手に周り、全て我が上を取る!この試合もらったぞ!)


 これぞ冷戦である。互いに出会ってから一言も交わす事なく、相手が何を行ったか自分の頭で理解して行うこの攻防戦を冷戦と呼ばずして、なんと言おう!

 周りの村人達も自分の仕事を忘れてこの冷戦に静かな観客として、静観して見入っていた。


「…、…。…!」(す、すごい。決まった!)


「…。…………」(無茶だ。無理に動いても精神がえぐられるだけだ)


「…、……………ぁ」(ダメだわ。俺には高度すぎて何が起きているか分からない…」


「………!」(俺はクロにかけた!)


 勝負の決着が尽きようとした時、クロの奥からカイとレルロがこっちにやってくるのが見えた。クロの後ろから来ているため、当然クロは気付けない。ゼクシオはこの時、一筋の勝ち筋が見えた。


「…………!」

(すまねえクロ!冷戦はこれで王手だ!)


「……………!」

(早く諦めて降参しろ!お前に勝ち目はねぇ!)


 ニタっとゼクシオが笑うとクロは引くことは無いが、何か違和感を感じ、冷汗を感じた。


「……!」

(貴様は我に何ができる!)


 するとゼクシオはクロに向かって腕を上げ、手を振り出した。


「………………?」

(降参ということか?このままでは俺が勝っても踏み続け、引き際がなく結局引き分け…。それだけはダメだ。なら手を俺も振り返した方がいいか?)


 そう思ったクロは、少し迷ったがゼクシオに向かって手を振った。


「………………!」

(勝った、勝ったぞ!ついにこの時が!これで、もう我は…俺は!)


 肩をワナワナ震わせ、クロはゼクシオとのこの冷戦に勝ったことを確信し、歓喜していた。しかし、ずっと手を振り続けてもゼクシオがやめる気配がない。


「…………………………!」

(クソ、悪足掻きだ!所詮そんなの時間潰し。俺の勝利はゆるがねぇ!)


 もう一度しっかり影を踏み込み勝利をアピールするも、ゼクシオは手を振るのをやめず、クロも手を振り続けた。するとクロの後ろから声がした。


「よ、ゼク!ずっと手振ってどうした?まだ1日しか経ってないのに寂しくなったのか?」


「僕も驚いたよ。まさかゼクがそんなに不安症で手を振るのが好きだったなんて」


 ここでゼクシオが誰に手を振っていたのか理解したクロは、顔が真っ赤に。その場にいることもできなくなってクロは駆け出してしまった。ゼクシオはニッコリ笑ってレルロとカイにこういった。


「不安だったけど、2人と出会えてよかったよ。俺の試合は君たちがいるだけで必勝さ!」


「訳がわからないけど照れ臭いこと言うなよ。俺とお前の中だろ?」


「僕たちがゼクシオの中で必要な何かに変わったということは分かったよ。いえいえ、こちらこそ友達になってなってくれてありがとう!」


 その一部始終を静観して見ていた村人は


「……………………………………!」

(怖い、この子達無意識に会話が成立してる。自分たちがどれだけ深い世界にいるかも知らないで!)


「……………………ぁ)

(私、口喧嘩でも男に負けちゃう時代が来るのかしら…)


「………」

(こんな村いやダァー)


「…………ぁ」

(どこまでが戦いなんだ…)


「………?」

(俺たちは今、何を見させられていた?)


「……………ぁ」

(敗因は、孤独か…)


 決着が着き、ゼクシオはそのまま2人と遊びに行ってその場を後にして、遊びに行った。

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