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異世界大陸  作者: キィ
第一章 記憶覚醒
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第18話「初めての夜空」

「2番、地図確認!」


「ラジャー」


 少年たちはコソコソ病院を 歩き回っていた。ちなみにこの病院は村で3つの病院の1つで、四階建ての少し大き目。


「ただいま2層、我々が出てすぐの廊下を真っ直ぐ進んで階段の前、地図通りです」


 カイはノリノリである。

「了解。そのまま前進。3番、これからの作戦内容は?」


「ただいまの2層階段前との報告により、最上階層まで残りはあと3層あると思われる模様。このまま階段前を利用し、下に降り、正面受付内にある最上階層の鍵をゲットし、また戻って、巡回の目を掻い潜りながらそのまま階段で一気4層まで移動。最後の関門、4層の長廊下を走り抜けると、最上階へ続く階段のある扉があるため、ゲットした鍵をここで消費し、最上階層へ侵入です!」


 ゼクシオもノリノリである。

「了解。ただいまより第2ミッション鍵をゲットせよを開始する!」


「「ぉぉー」」


 聞いての通り、今から下の階へ行き、鍵を取りに行くのだが、この第2ミッションこそ、1番の難関と言ってもいいだろう。なぜなら正面受付にはいつも看護師が夜勤で1人、巡回のにもう1人いるためである。巡回は光を見かけたら隠れればいいが、正面受付は移動しないため、最もハードルが上がるのだ。


「ただいまより分離遊撃隊と鍵救出隊に分ける。2番と俺が遊撃するから、3番は鍵を救出だ。散!」


 こうしてゼクシオはこの場で待機し、カイとレルロが夜勤の看護師をその場から引き離すため、配置の付いた。3人はお互い見えるところへ行くと、手で合図して、作戦を決行した。


 レルロが右手を前に振る(作戦開始!)


 そこで、カイは紐で繋いでいる、みんなで食事中少しずつ集めた魚の骨が入ったカンカンの箱を引っ張った。


 ガジャン


「何かしら?」


 女性が来たら、カイは確保した離脱ルートで素早く撤退。


「あら、なんの箱かしら…、骨?でも小さいわね。魚かしら?


(ック、箱の中骨だらけでビックリ作戦失敗)


 次はレルロが左手を前に突き出した。(今から扉の音で引きつけるから、お前は行け)


 ゼクシオはグッジョブサイン。(OK、了解。そのまま前進)


 今は看護師が離れているので、ススっとゼクシオは受付内に侵入した。その間に看護師が戻ってこないように、レルロは扉の音を鳴らして、引きつける。


 ガラガラ、


「今度は扉?猫でも入ったのかしら?そう言って、扉の方へと歩いた。本来はこれらプラスアルファで看護師をビビらせることも考慮していたのだが、この看護師は、相当心臓が強いらしい。


 そのわずかに稼いだ時間を、ゼクシオは見逃すまいと鍵を探すも、見つからない。

(早く、早く、早く!…あった!)


 鍵を見つけたゼクシオは、そのまま階段へ走った。しかし、こけてしまい、廊下に音が響いた。


「誰かいるの?」


 看護師が音の異変に気づいてやってきてしまった。


(まずい、まずい、戦犯かました…)


 しかし、カイが機転を聞かせて持っていた石を窓にぶつけてガラスを割り、そっちに注意が引いた。


(助かった!)


 3人は階段で再び集合し、お互いの無事を確かめた。


「カイ、本当に助かった。ありがとう!」


「いいよ、それより急ごう、異変に向こうも気付くよ」


「3番、反省はあとだ、行くぞ」


「りょ、了解、1番!」


 こうして4階へたどり着いた。運良く4階に巡回は来ていないようだ。そのまま前進し、扉の前まできたら後ろに光が見えた。


「3番、早く開けろ!」


「了解!」


 今回はギリギリ間に合い、扉を開けることができた。

 ガチャ、


「「「…、っふーーーー、」」」


 3人は互いの顔を見合わせると、深くため息をついた。階段を登った先は、屋上への最後の扉だった。扉を開けると、夜空が広がり、その綺麗さに、みんな目を奪われた。そこで、レルロが語り出した。


「俺思ったんだ」


「「?」」


「よく考えれば4階と2階から見る景色ってそんなかわんねーじゃん?同じ場所だし」


「「……っあ」」


「だけど、仲間と協力して得る宝物って魔法だな!」


「うん!」


「ああ!」


 ゼクシオは前世では勿論星空を何百、何千何億と生きた時間に見てきた。だが、今この瞬間の星空は人生の絶景スッポットランキングにランクインするほどの景色に思えた。


 3人は無言になりしばらく眺め続けるとゼクシオが口を開いた。


「またみんなでここ登ろうな」


「今度は他のみんなも一緒にね」


「そうだな」


「………」


『おー!』


 メメが氷の息吹を大気に吹き上げ更に世界を色付けた。そして、体が冷え込むまで夜空を眺め続けた。






 ****

 今までこの村について説明がなかったので、ここで説明しておこう。


 この村レウィグ村は、人口約1万人弱。村と言うには大きすぎるが、それはアクラナ王国の御三家貴族の一つ、サードント家がこのレウィグ村に来たことが原因である。


 アクラナ王国は、この世界シャウスに存在する大陸の中で1番大きい大陸、中央大陸のほぼ中心に位置する世界屈指の魔術先進国である。


 アクラナ王国は広大な領土を持っているため、三勢力の貴族にそれぞれ国に匹敵する領地を与えることを国王が決めた。

 それぞれの領地には様々な町や村が含まれていていた。御三家の二つ、ファスラ家とセクトル家はそれぞれ領地内の町に住むことを決め、今まで力を伸ばしていた。


 しかし、サードント家は栄えている賑やかな町より、領内では1番荒れた環境、しかしどこか落ち着ける村、レウィグ村に住むことに決めた。


 以来、サードント家は当主の性格が似ていたのか、一度も村を出ようとせず、ずっとこの地に家を置き続けた。

 領内の業務のたびに町や村を行き来するが、レウィグ村を愛していたため、いつも早めに仕事を終わらせ、急いで帰っていた。


 村の初期規模は約三千人強の人口だったが、領主自らが住まい、サードント領内で最初は1番荒れ果て見放されていた村を見事に再建した実績ができたため、領内の人が噂を聞きつけて流れ、今ではこの規模である。

 初代サードント家当主ネロ・サードントは、アクラナ王国で五本の指に入るほどの魔術の実力者であったと言う。


 現在の魔学舎体制の基盤を整えたのも彼であった。もちろん初代国王は彼の存在をいつも喜んでいた。

 この2人は仲が良かったが、「王都に戻ってこないか?」と言う問いにだけは、生涯答えることはなかったという。


 その能力は世界からも高く評価され、世界に存在する最上位勢力、シャウス管理機構“ゲート”から何度も話をしを持ちかけられていた。

 その内容は、『ネロがこの話に乗れば領内の待遇を約束する』と言う内容だったが勿論彼は断り、以後彼は領内に留まった。これがこの村の事情である。


 そして今現在、ゼクシオがいるレウィグ村でも領主と村は互いに支え合っていた。現在の当主はメノード・サードント、その妻セルナ・サードント。娘のセナ・サードントにまだ幼い弟サラッド・サードントである。



 ****

(ゼクシオ達がスターライト作戦を開始する3週間ほど前、お見舞いに来る直前ののサードント屋敷)


「早くゼク達退院しないかな?」


「セナはいつもゼクシオ君達のことを言ってるわね」


「早く遊びたいの!」


「ぁあ、あぅ、ゔぁ!」


「よしよし、サラッドー、お姉ちゃんですよー」


「アヴァ!」


 ゴンゴン


「あら、誰か来たわ。ちょっと行ってくるわね」


 ガチャ


『こんにちは!』


「みんな、着てくれたのね。セナ、お友達よ」


「はーい」


 しばらくするとセナが玄関に現れた。


「プルちゃんにティアちゃん、リゼに、ソニアにリーフィ!みんな、遊びに来てくれたの?嬉しい」


「…セナ、ハンブンセイカイ」


「?」


 セナがリゼの答えに首を傾げると、リーフィが捕捉した。


「男の子達が大変だったって聞いて、プルームちゃんがお見舞いに行こってみんなに」


「そーゆーこと。セナも一緒に行こ?」


「うん!あっちょっと待って、アメルちゃんも呼びたいんだけどいいかな?お兄ちゃんのゼクに会いたいだろうし」


「それならみんなで呼びに行こーよ。それでそのまま遊びにどっか…」


 ティアリスがそのまま遊びの流れに強引に話を流すと、珍しく男の子に怯えているリゼが震えながらもそれを止めた。


「…ダメ」


「リゼも男嫌いって言ってたじゃん!」


「セナチャンガイクナラ…シカタ…ナイ…」


「そんなに嫌なら遊びに行こう?この前みたいに男にぬいぐるみ壊されちゃうよ?今持ってないけど」


「……、ゥ、ウウ」


 リゼが小さな声で泣き出してしまった。


「あーあー。ティアちゃんがリゼちゃん泣かせちゃった。あーあー」


「大丈夫だよ。あの子達はきっと壊さないし、ね?」


 セナが声をかけて気を取り持たせる。そのおかげか、少しは落ち着いたようだ。


「なら早くアメル連れて病院いってそのあと遊ぼー」


「急がなくていいよ。ゆっくりー、のんびりー」


 プルームの空気に呑まれ、最初の少し悪い雰囲気が薄れ、みんな笑顔になっていた。

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