第17話「結成!ゼレカ!」
森の事件から数週間後、ゼクシオ達は退院を認められて、やっと病院から出ることが許された。
そして今日は最終入院日だった。
「やっと退院だぜ!これで遊べる!」
「あれれ?レルロは来年の魔学舎のためにヘーゼルに鍛えてもらうって言ってなかったっけ?」
カイが疑問に思うと、レルロは以前自分の言ったことを思い出して言った。
「遊びながら覚えるんだよ。いつか俺はゼクのおっちゃんを超えてやるぜ!」
「ずっと病室でゼクのお父さんの話ばっかりしてたしね」
「お前らもかっこいいと思っただろ?」
「うんうん、あの時は背筋がゾワゾワってしてかっこよかったよね」
(俺も異世界であんな活躍してみたいな。前世では無双ばっかり夢見てたし…、成り上がりもかっこいいけどさ)
「…コク……」
「おい、ヘーゼル起きろよぉ〜。今日もお手本みしてよぉ」
「……ん、種火」
ボッと音を立てて火が出てきた。
「ヘーゼル、もうどこでも使うようになっちゃったね」
カイが笑いながら言うと、ヘーゼルはボソッと言った。
「使うほど練度も上がるから…」
「魔術って不思議だよなぁ」
ゼクシオは渋々そう思っていた。この日までゼクシオはありとあらゆるイメージをしたり、ヘーゼルから助言をもらったりして、魔術を使うことを試みた。結果氷のイメージでかろうじて「冷たい感じがする」とぼんやり思えるぐらいの温度変化しか起きなかった。だが、ゼクシオは大きな一歩を踏み出したように感じた。ちなみに、ヘーゼルの助言は
「自分の周りにたくさん力があるからそれを体にギュって取り込む。次に体に元々溜まっている力を巻き込んで、体の中で水のように全身に流して、手にその流れを集める」
と言ったように、リオより全然的確であった。故にゼクシオの魔術習得に多少説明者の違いが関わっていたのかも知れない。しかし、「最後は意識を集中して魔術の現象をイメージする」と、リオの説明がやっと当てはまった。だから
(ほぼ感覚派じゃねえか、リオの奴は!)
と内心ゼクシオはリオに怒っていた。しかし、まだ魔術は使えておらず、もう少し先になりそうだ。
「…ふぁぁ、もう夕方だから帰るね。みんなまた明日」
「おう」
「また明日」
「魔術教えてくれてありがとねー」
ヘーゼルは一瞬で窓から出て、消えてしまった。
「いつもササって帰っちゃうよな、もう少しいればいいのに…」
「レルロ、もしかして寂しいの?」
「つまんないから人が多い方がいいのにって俺は言ってるの」
「はいはい」
(俺もあんな体捌き真似したいな)
ゼクシオだけ違うことを頭の中で考えていた。
****
3人は病院での少し味気のない最後の食事を取ると、ヒソヒソ夜の秘密会議をしていた。
「それでは、第28回秘密会議を始める。1番のリーダレルロだ」
「2番のカイ」
「3番のゼクシオ」
「番号確認よし、ただいまからここを抜け出し屋上に行って夜の星空を見る作戦、スターライト作戦を始める。光の聖剣は持ったか?」
「「おー」」
3人は手に魔植の、発光する白花を手に持っていた。
この話は大気中の魔力を光に変え、夜に発光し虫を寄せ付けて花粉を虫に運んでもらう魔植である。発光する白花はその暗くなると光り輝くと言う特性が便利かつ美しい故、鑑賞用に優れている有名な花の一種だ。なかなか人がいる所ではすぐ暗くなることはなく、発光して生まれたエネルギーで育つため、暗い所、特に森の奥地や洞窟などでよく見かける魔植である。
そんな花を少年たちはどこから持ってきたかと言うと、病室に一輪ずつ鑑賞用に飾ってある物を盗んだのだが、少年達曰くちょっと借りたらしい。
「よし、ではレルロ隊出発」
「ねえ、レルロ。前から思ってたけどレルロ隊っての変えない?」
「えー、俺が1番、リーダなのに?」
「カイ、そのままスターライトでいいんじゃない?」
「んー、安直すぎる気も…」
「カイはめんどくせえな」
「なら、ホルスリカ!」
「それも安直」
「そうかなー?」
ゼクシオにはネーミングセンスに安直さがあるらしい。
「並び替えて抜き取ったカリス!」
「意味わかんないよ、アハハ」
このままではカイがなかなか動かず、作戦が決行できない中、レルロは真面目に考えた。
「ゼレカ…」
「それも意味が…」
「ゼクに俺にカイで頭を取ってゼレカ!」
「お、いいね」
「だろ!俺が最初の文字にしたかったけど、これがかっこいいし、俺が中から支えてるってことで」
「「おー、すごい」」
「だろ」
「そして意味に暗闇の希望なんてどう?この夜の暗闇に輝く光を灯しているって言うことで」
「「おおーー」」
レルロとゼクシオが協力したおかげでなんとか作戦決行できそうだ。こうしてチーム名暗闇の希望が誕生した。
「ゴホン、では改めて暗闇の希望隊出発!」
「「おおーー」」
こうして、3人が夜の暗闇を照らしながら、夜空の暗闇を照らす星空を見に行く最高の初任務を開始することとなった。