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異世界大陸  作者: キィ
第一章 記憶覚醒
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第16話「賑やかな病院」

 数日がたった。

 とある病室ではまだ、数人の少年達がベットの上にいた。


「もー暇だ、暇だ、暇だ!」


「元気があるだけいいじゃないか」


「暇だからしょうがねーだろ!」


(子どもは元気だなぁー。ゆっくりできないや。それより俺は魔術だな。もう一回、エイ!)


 ゼクシオは、ひたすらいろんな物をイメージして魔術が使えないか試していた。

 ヘーゼルが使っていた魔術を真似ようとしても未だ何も起きていなかった。


(まだできないか…。もう一回、エイ!)


「なー、ゼクー」


「何?」


「前から思ってたけど、お前の肩に乗っているその石なんだ?」


「あ、それ僕も思ってた」


「………」


「この()のこと?この娘は…」


「お前、石をこの子だなんて…ゥグ。今まで寂しかったんだな。心配すんな。俺とお前の中だろ?俺はお前のこと友達と思ってるからな。グス」


「違う違う。これはメレって言う魔物のメメだよ!」


「魔物?ゼク本当に大丈夫かい?」


「……コク、コク」


「ちょっと見てて。はい。ヘーゼル、メメをちょっと握ってて」


「…?」


「みんな5分ぐらい待ってて。面白いものが多分見れるよ」


 しばらくして、メメが変化を始めた。違和感を感じて、ヘーゼルは手を広げると、そこには石から薄く光る氷に変化したメメがいた。


「やっぱりね。ヘーゼルは赤色か」


「「おおー」」


「…お」


「驚いた?うちの娘メメは周囲の魔力を吸収していろんな姿に擬態出来るんだよ」


 ゼクシオは光る氷になったメメを取り戻し、もう一度肩に乗せた。

 3人の少年は、目の前の変化に驚いていた。


「おお、すげぇ。こんなのお前持ってんのか?俺にも触らせろ」


「ダメ。それにこんなのじゃ無くて、メメって言う名前がこの娘にはあるんだから。ねーメメ?」


 ゼクシオの言葉に返事をするかのようにメメは氷のカケラを吹き、周辺に散らばり、光を反射してキラキラ輝いた。この反応に、それぞれ少年達は目を輝かせていた。


「すげぇ。メメ、俺も欲しいなぁ」


「この娘はダメだからね?俺の物だから」


「僕の旅の目的が一つ増えたな」


「…きれい」


「このことは秘密ね。メメは特別だし珍しいから。あ、そう言えば、ヘーゼルはいつから魔術使えるの?森の時から聞こうと思ってたんだよね」


 ゼクシオがヘーゼルに魔術について沢山聞きたいことがあり、今日やっと聞きたいことがまとまって問い詰めていた。


「師匠は?他にどんな魔術が?実戦経験とか?」


「…えっと、」


「ゼク、ヘーゼルが困ってるよ。一個ずつ聞かなきゃ」


「あ、ごめん、つい。では1個目いきます。いつから魔術を?」


 とてつもなく真面目な顔になってゼクシオが問い始めた。しかしヘーゼルは淡々と求められた答えを呟いた。


「…3」


「まじかよ!俺も早くあんなの使いてーなー。そしたらあの時いい格好をセナに…」


「アハハ、まぁいきなり発症する子もいるけど、最近は6歳から魔学舎に行って少しずつ習いながら使えるようになる子が大体だしね。だからそれより早く使うにはセンスがいいことや、英才教育じゃないと難しいね。使い方がわからないうちは、歩くことを知らない赤子のように最初は何もできないのが普通だから」


「っちぇ、みんなと一緒に使えるようになってもカッコよくねーや」


「うんうん、わかるよレルロ。魔術はロマンの塊だよな。ロマン!」


「お、ゼクのくせにっちょっとは分かるじゃねえか」


「おう!」


「おう!」


 息があった2人は拳を当てるように腕を伸ばして笑った。


「2人とも何を言ってるの?」


「これを分からねー奴はどっかいけ。しっし!」


「カイが男のロマンを分かんないなんて、イケメンが勿体無い…」


「…?」


 4人で騒いでいると、歩いて来る音が聞こえた。


「徘徊ババアだ!隠れろ!」


 布団の音と共に、姿が隠れたと同時に、看護師が病室へと入って来た。


「あらあら。隠れちゃっていいのかしら?あなた達のお客さんを連れて来たのに…」


「本当!」


「「あちゃー」」


「…」


 言葉に釣られてレルロが勢いよく布団から顔を出した。寝ているヘーゼル以外の2人は、諦めて顔を布団から出すと、森に行った日に遊んだ彼女達とセナがいた。


「俺のために…セナー」


「ゼク、怪我は治った?」


「見ての通り。まだかかるかも」


「そっかー」


「ギャフン、」


 嬉しさのあまり飛び出したレルロは、相手にされずそのまま床に墜落した。


「まだ怪我してるのにこの子、世話の焼ける患者ね」


 レルロは看護師に抱えられ、ベットに戻された。


「またゼクに取られた…」


 セナの後ろからひょこっとゼクシオにアメルが顔を覗かせた。


「アメルもきてくれたのか」


「うん!早くよくなって、また遊ぼうね」


「ああ、わかった。早く治せるように頑張るよ」


 俺との会話を終えると、アメルはセナの隣に並んだ。


「みんな守ってくれてありがとう。治ったらまた遊ぼうね!」


『もちろん!』


「…」


「えっと、その、ありがとう…」


 セナの感謝の言葉にみんなが返事で反応し、アメルの感謝にはみんな笑顔で返した。


「あ、」


 アメルは何かを思い出したのか、可愛い声を上げて、ヘーゼルのベットへ駆け寄った。


「…化け物達を倒してくれてありがとう」


「……」


(そういえば魔物倒したのこいつだけだし、アメルの不安を少しでも無くそうと話しかけに来てくれたのもこいつだったな。アメルから見ればヘーゼルが1人だけ上に見えて、どうしても直接感謝を言いたかったんだろうな。にしてもヘーゼル起きろよ!俺の可愛い妹が感謝を述べているのに寝やがって!)


 ゼクシオがそう思った矢先、ヘーゼルは寝返りを打って反対側を向いた。


「きっとヘーゼル君喜んでるんだよ。ねー」


 プルームはそう言って能天気に笑った。


「ヘーゼルが喜ぶ?ナイナイ」


「意外とプルームちゃんの言ってること当たってたりして」


「まじかよ…」


「ね、ヘーゼル」


 レルロの否定に、カイが返し、ヘーゼルを呼ぶと、ヘーゼルは起きた。


「……、僕を読んだ?」


『ワハハハ』


「…?」


「他にも患者さんいるから、ちょっとだけ、静かにしてね」


『はーい』


 病室は子ども達で賑やかになり、その声は他の病室にも届いた。子どもの声を聞いた患者は、皆顔が和らいだ。



 ****

(病室の窓が見える屋根の上)


「ック、我が妹まで我が宿敵の軍門に降るとは。この数日で奴は着実に力を復活させている。早めになんとかあの暗黒城へ潜入せねば」


 そこには望遠鏡を手に病室を覗く少年。否、世界の救世主(自称)がいた。


「あそこの中に今潜入しても攻撃を喰らうだけ。中に1人きりで入れば、手下の3人にやられる。特にあのいつも寝ている幹部。あそこにいつも1人で潜入している。相当な実力者だが、外の物ならこっち側の仲間の可能性もある。あいつ1人なら俺でも接触可能だ。よし、プランフレイムに変更だ。そう決まれば、作戦の準備だ」


「おい!うちの上でゴソゴソ何をやっている!うるさくて昼寝もできんわい!」


(くそ、もう闇の手が…。いや、戦いに巻き込まれた一般人かも知れん。ここは弁明せねばなるまい)


「おい、小僧、お前に言ってるんだ。お、ま、え!」


「またれよ、巻き込まれた一般市民よ!これは世界を闇から救う大事な過程なのだ!だから貴様が寝れないことは必要な犠牲だ!わかったら我が軍門に降り、我の仲間となれ!今なら我の右腕も左腕も空席だぞ?」


「ぁあ?すまん、最近耳が悪くてよく聞き取れんでな。昼寝後はいつも調子がいいんだが、今日は何せ寝れてなくて…」


「……」


「…っておい、降りてこい!そして、わしの耳元でさっき叫んだこともう一度言ってくれんか?」


「話を逸らすとは我の誘いを否定と受け取るぞ!残念だな。貴様とならどんな苦難も乗り越えられそうな気がしたのだが、相棒ゴールドよ。ならば仕方がない、撤収!」


「一体なんだったんだあいつ…。それより昼寝じゃ昼寝。そろそろ目も霞んでかなわんわい。ばーさん、ベットはどこだったかいない?」


「もう忘れちゃったの?昼寝しないと本当ボケが激しいわね、シルバー爺さんは」

 少年はその場から姿を消し、老人は、家の中へと消えていった…。


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