第15話「病室」
村についたらまず病院にみんな連れて行かれた。幸い、女性陣に怪我は無いが、男性陣はヘーゼルを除くみんなが大怪我だった。
ゼクシオが道中リオに回復する魔術は無いか聞いたら、あるけど子供の頃から使い過ぎたら、ろくな育ち方をしないらしい。怪我をしてもいいことを前提で動く奴らが出てくるらしく感覚がおかしくなるから、戦い以外で時間がある時は大怪我以外直ぐには治癒せずにゆっくり治す。だが、正しい感覚を鍛えてからはバンバン使う人も多い。
(半分は俺たちへの戒めでもあるんだろうけど、今は急ぐこともないし、酷すぎる所を医者が見て治癒してもらったら安静にしなければならないな)
今はさっきより痛みが少し引いているが、きっと寝ているときに、誰か少しかけてくれたんだろう。
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「っつ、イタ!」
「ここと、ここにここも!あらあら腕持っていかれてるね。背中も腫れてる。よくここまで耐えたわね。偉いわ!ちょっと待ってね。骨と臓器は治すから」
医者の彼女が俺の怪我した部分を触ると、青い光が間から漏れ、痛みが引いていくのが分かった。
「よし、終わり。リオさん、この子に興奮かけたでしょ?」
「子どもは直ぐ治すなって聞くけど、痛そうだったし、多少の興奮と治癒ぐらい自分の子にかけてやってもいいだろ?先生」
「ハァ、ま、いいわ。あなたならかけ過ぎる事もないと思うから。じゃあ次ね」
「俺はいいんだよ!ッイテ!」
「はいはーい、レルロー。怖くないぞー」
「クソオヤジ!恥ずかしいからやめろ!イッテ」
「お前は大怪我だから黙ってろ」
後ろからレルロの声が聞こえて来るが、ゼクシオ達はその場を後にし、病室に案内された。
「なら父さんはもう戻るな。安静にしとけよ」
リオはそう言って、その場を後にした。病室にはは先客がいた。先に治療を受けていたカイだ。カイは人の心配をしているが、足を吊り上げられ、腕も片腕包帯で、イケメンスペックがプラマイゼロになっていた。ゼクシオは片腕包帯と車椅子だったから、お互い様である。
「やあ、ゼク。大丈夫かい?」
「…うん」
ゼクシオがベットに入ってしばらくして、同じような姿でレルロがレルロの父がやって来た。
「やあ、ゼクシオ君にカイ君。うちの息子が世話になったね。この子を助けに行ってくれたとか」
「いえいえ、遊びに誘った僕にも危機管理に責任があります」
「難しい言葉使うね。でも、今回はさまざまな要因が重なって起きたし、元を言えば森に抜け出す君たちを見逃していた、そして魔物を逃してしまった大人の問題もあるんだ。だからお互い反省しようね」
「はい」
「賢い子だね。さすがリオさんの息子だ。ほらレルロ、今日からここでみんなとおとなしくしとくんだよそれじゃね」
「…うっせんだよクソオヤジ」
レルロは歩けるようだが、腕が2本包帯で固定されていた。トボトボ歩いて来たレルロは布団に入り込んで、寝てしまった。
「病院相当嫌いなんだよ。前、注射で大泣きしてたし」
カイが小声で教えてくれた。
「そうなんだ。なんかふて寝っぽいね」
「だね」
2人はクスクス笑うと、レルロが跳ね起きた。
「ウッセーな!聞こえてんだよ!、イテッ」
「「アハハ」」
「静かに!」
『はーい』
大笑いしてしまい、見回りに来た看護師に叱られてしまった。看護師の人が出ていくと、窓の外から1人入って来た。
「…みんな無事?」
「これ見て言ってんのか?」
「…無事だね。よかった」
レルロはグルグル巻きの腕を上げて怪我人アピールをするが、ヘーゼルはその元気な姿を見て無事を悟った。
「な、何すんだよ!」
「眠いから寝に来…」
ヘーゼルはそう言って、レルロのベットで寝てしまった。大きなベットで場所を奪われたわけではないので、レルロは諦めて、隣で寝ていた。
「みんな疲れたんだね」
「そうだね。僕はさっき寝てたけど」
「ゼクのおかげですごい体験ができたね」
「皮肉かよ」
「アハハ、本音だよ。毎日変化が無くて退屈してると思うよみんな。遊びもいいけど、世界中を旅したいな」
「カイは冒険者になるの?」
「そうなるね」
「なら俺の目標と一緒だ」
「そうなの?」
「うん、この世界は不思議な事がが沢山あるし、自分の目で見て回りたいなって」
「じゃあ一緒に行こう!」
「ぇ、いいの?」
「当たり前だろ。友達じゃん!」
「…うん!」
2人は将来について話し、気付くと病室は静まり返っていた。
病室の見回りに来た看護師は、1人多いことに気づいたが、微笑むとそっと扉を閉めた。
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「よっこらせ、っと。これでここら辺の焼死体は集まったか?」
森ではディラマントの収集などを行なっている。
「ああ、にしてもなんでここら辺のディラマントだけ燃えてるんだ?子供だけだったんだろ?」
「リオさんが後から駆けつけたらしいが、この死体は雷でなるような状態じゃないな」
「ならこの焼死体全部子ども達が…」
男達は不思議な現象について考えている。そうして子どもがやったかもしれないと言う思考にたどり着いた。
「どうやらこの村で優秀な人材が生まれそうだな」
「まさかそんな…」
「でも、若い才能は怖いよな」
「お前もまだ若いだろ」
「そうだな」
『ワハハハ』
森の後処理をしている彼らは、知る由もなかった。これが全て1人の所業であることを…
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(ゼクシオ達のいる病院の上)
「ッフ、どうやら今回は難を逃れたようだな。宿敵ゼクシオよ。運のいい奴よ。しかし、貴様も今回で運が尽きた。次こそ我が手で打ち滅ぼしてくれよう。ククク…、フフフフフ…、ハーッハッハッハ!」
「こら、君危ないから降りて来なさーい!」
「撤収!」
マントを翻し、走って彼は病院を後にした…。