表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界大陸  作者: キィ
第一章 記憶覚醒
14/58

第13話「危険」

 ****

 ディラマントの群れから2人しか守れない自分へ苛立ちを覚えるも、他を助けに行く余力も無かった。今できることは精一杯周りの状況を見渡し、避けながら魔術で2人の周りのディラマントを追い払うのに精一杯だった。


「っつ、まだ増えていく…」


 最初は2、3匹速いのが来たが次第に数を増やし、すでに数十匹となっていた。火炎(フレイム)で少しずつ減らすも、飛べなくなるだけで地面をはって来るのもいた。


種火(フレア)


 少しずつアメルとセナの周りに火の囲いを作り、地面への対策もしなくてはいけなくなった。


(地面は倒さなくていい、上に集中するため下を無力化するんだ)


 彼は紙一重で避けながら余力を全て魔術に費やした。周りはディラマントの硬い翼が当たり、次々に木を倒して広場のようになっていた。


「バジュゥゥン!」


 大きな音が近づいて来た。ディラマント達は皆一斉に混乱しだし、逃げる者、俺たちにまだ襲ってくる者、上に行く者でごちゃごちゃだった。


「バジュゥゥン!」


 森の木木から現れたのは、巨大な生物だった。顔は恐竜の顔の化石のような形で、体が蛇のように長く、恐竜の顔をした竜みたいな生物がそこにはいた。体の周りに数本の氷柱を浮かばせ、ディラマントに飛ばしていた。すでにディラマントをくわえて次々と他のも襲っていくが、ディラマントもその化け物に羽で当たりに行っている。


(注意がそれた。今だ)


 2人の元に駆けつけ、3人で飛ばされた3人の元に行くことを告げる。


「注意がそれた。3人を運ぶぞ」


「う、うん」


「どこいくの?」


「…君の兄さんを助けにいくんだ。大丈夫、まだ生きてる」


ヘーゼルは周りの少なくなったディラマントを倒しながら、2人と一緒に他の3人を一ヶ所にまとめた。


「ゴホッ、ありがとう、ヘーゼル」


「クソ、みんな食べられちゃう…」


「何も出来なくて…ごめん」


 3人はキツそうで、喋る力はあるも誰も1人で動けなかった。


 しばらくすると大きな化け物がこっちに気づいたようだ。周りのディラマントを蹴散らすとこっちに向かって来始めた。


(ここであれは…、だめだ。せめて俺がここから離れることができれば………)


 この場を離れる覚悟を決めると飛び込んでくる氷柱を相殺しながら村の反対側へと走り出した。

 ****

「うちの子達まだ帰って来ないの」


「もうご飯なのに困ったわね」


 ルザーネとセナの母親セルナは家に帰ってこないので互いに話し合っていた。


 村は子どもが帰らな家があり、森も騒がしく次第に村でも波が訪れる。


「ゼクくん達ならさっきみんなを探してたよ」


 野菜を運びながらリーフィがそう言うと、大人達が皆集って来た。


「なんで探していたの?」


ルザーネはその少女の話に耳を傾けた。


「追いかけっこしてたけど、もうお昼だから遊びは終わりって遊んでたみんなに言って回ってたよ」


「どこに行ったか分かる?」


「分からない」


「教えてくれてありがとう」


 大人達は互いに散らばって情報を集めていたが、わかったのはこれだけだった。すると、1人の怪しい影が現れる。


「確かあの子、あのうちの…」


 みんなザワザワしだした。


 黒いフードをかぶった黒コートのいかにも怪しそうにしている男の子は、こっちに近づいてきた。


「みな、よく聞け!我はそなた達の探しているもののありかを知る者だ!」


 そんなことを言って、マントをバサッとひるがえし、見えないフードの中でキメ顔をしていた。


「あなた、居場所知ってるの?」


「我に知らぬことなどない!なんでも聞いてみよ」


 大人達はいつも、老人の真似をした子供に見えて微笑んでいるか、顔を歪ませているかだったが、今は真剣に向き合っていた。


「あ、あの…。な、なんでも聞いてみよ!」


「ゼクシオ達がどこに行ったか知らない?」


 そこで、ルザーネが質問した。


「あ奴らなら、北の森に向かっておったぞ」


「なんでそんなところに!て言うかなんで分かるの?」


焦りを現しながらも続ける。


「なんでも分かるからな」


「……」


「なんでも分かるからな!」


「………」


「…だって、見てたし、」


「もう、」


 大人達はみんな森の方に向かおうとし始めた。男の子はもう相手にされていなくて、1人で立っていた。そしたら、森から大人が数人村にやって来た。


「今、魔物退治に行ってた人たちじゃない?」


「そうね、何かあったのかしら?」


 数人の男がこちらの騒ぎに気付いて、近寄って来た。


「どうしたんですか?」


 セナの母親、セルナは答える。


「子どもが数人まだ帰っていなくて…」


「今日この日にですか。でも、流石にまだそこら辺に居たりして…」


「それに、森にいるかもしれないんです」


 森と言う言葉を聞いて、男の顔が曇った。


「それはちょっとまずいことになりましたね」


「どうしてですか?」


「討伐中、ディラマントを一匹逃したと、他の班から連絡が届いて、安全のために我々が村に万が一にと戻ってきました」


「ディラマントが、逃げた?」


「はい。瀕死のディラマントは仲間を呼びますし、もし子どもたちが遭遇してしまったら、群れに襲われる可能性も 」


「そんな…」


 子どもの親達は皆、顔から血の気がひいた。


 『ジゥァーブ、ジゥァーブ』


 少し森の奥から声が響いてきた。皆森の方を見ると、森の上空に沢山の鳥が群れていた。


「この鳴き声は、もしかして…」


「…ディラマントの鳴き声です。急ぎましょう!皆さん早く!」


 大人達は森に入り込もうとした時、大きな何かがディラマントのいる森の方に向かって泳ぐようにうねって飛んでいた。


「まさか、ここに。!それほどあそこに集まっていると言うのか!」


「まだあそこに子ども達が居るとは限りません。ですが急ぎましょう!」



 その姿を見た者は最悪の事態が頭をよぎった。その化け物は、滅多にここまで低く降りてくるものでは無かった。しかし、元冒険者の家族や、元冒険者もいるこの村で知っている者も多かった。


 魔物レートA級。単体が多く、晴れた空では天高く泳ぐ姿を見れるが地上に姿を現せることは珍しい。魔物の群れを見つけると、地上にくることがしばしば。冒険者で上位のベテラン同士のパーティでも死傷者は出ることもあり、襲ってきたら討伐隊を率いることも。そんなのが子どもと会ってしまったら、誰でも諦めてしまう。


「…クモドリ」


「バジュゥゥン!」

 いつもは空高くで鳴くその声は、今や村全体に響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ