表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界大陸  作者: キィ
第一章 記憶覚醒
10/58

第9話『俺様つえーからお前悲しくねーぜ』

 目が覚めると、少し覚えのある天井があった。そして、右には女の子が寝ている。


(眠いから寝るか)


 そのまま寝ようとしたが、話し声が聞こえたので、寝ぼけた頭で考えながら、耳を傾ける。すると、すぐに女性の声が聞こえて来た。


「どうして早く言ってくれなかったの、あの子が倒れちゃったじゃない」


「ああ、アメルがいきなり魔術を使えるようになって、帰ってくるなんて、俺嬉しすぎて倒れそうだったよ」


「あなたは倒れてもいいのよ。変に頑丈だし!それよりもあの子よ。ゼ ク シ オのことよ!あの子大丈夫かしら、あそこまでショックを受けるなんて」


「あいつは魔術に余程執着があるらしいが、妹が先に使えてしまってはきついよな」


「心配している場合じゃないわよ、ゼクシオ今までしっかりしていたし、完璧すぎたぐらいで変なことが起きないか心配していたけど大丈夫かしら?」


「ルザ、きっと大丈夫。色はちゃんとあるんだから魔術は使える。恐らくあいつの色がまだ薄すぎるんだ。毎日イメージしときゃ、色も濃くなる。そしたら絶対魔術も使える!」


「そうよね。まだ魔学舎に入っていないも。でも、すぐに立ち直ってくれるかしら?」


(俺、あの後倒れたのか)


 意識がはっきりしたゼクシオは会話を聞いて自分の状況を確かめた。妹に魔術の才能が負けているのでチート性能説も無くなってしまい、ゼクシオはかなり落胆した。


 隣ではアメルが気持ちよさそうに寝ているが、魔術の才能が羨ましくなり、可愛い姿がゼクシオには憎たらしく見えてきた。決めつける癖があるゼクシオでも魔術を諦める事はなかったが、英雄になろうだとか人助けを行い崇めるてもらおうと言う野望は次々崩れていった。


 今もう一度魔術を発動させようとするが、何も起こらず悲しいわけでは無いのに自然と涙が流れていた。


(悲しく無いし!魔術がすぐに使えなかったぐらいで…)


 ゼクシオが今世ですがっていた唯一の転生も魔術の存在を知った途端にほとんど魔術に依存してしまった為、ゼクシオは少し気が狂っていた。頭の整理もつかない中で希望が失われては人生を前より良いものにする事などモチベーションが減ってやる気は無くなった。


「でも、結局は才能なのか…」


1人静かに涙を流し、寂しく佇んでいると隣で動く気配がした。


 そこではアメルは目を擦りながら起き上がるとゼクシオを見た。寝ぼけているようだが、ゼクシオが涙している姿ははっきり見られてしまった。


(……)


 ゼクシオは反応を示す気力もなくただぼーっとしていた。何も考えずただ涙を流し続け、そのまま寝ようとした時に、アメルはゼクシオに近寄った。


「ニーニー、なんで悲しいの?」


「…………」


「…よしよーし。アメルはちゅよいから、ニーニー悲しくなーい、よしよし」


「……うぅ」


「よしよしはママが悲しいとアメルにしてくれるの。ニーニー、昨日やだったけど悲しかったんだね。ニーニーは弱いから悲し?アメルはちゅよいよ?だから、悲しくなーい、よしよし」


「…うぅ、スンスン、ズーー、うぅ」


 ゼクシオは何もかもが分からなくなり何故泣いているかすら分からないが、アメルに撫でられながら思う存分涙を流した。そして、いつの間にか寝入っていた。



 ****

 スー、スー…


 ドス


(…イタイ、ネムイ)


 ドスドス


(…ネムイ、ネムイ)


 ドスドスドス


(…グッへ)


「デジャブ!」



 起きると、ゼクシオはアメルと手を繋いで寝ていた。


(なんで俺、手繋いでんだ…、あ!思い出した。昨日、魔術が使えないで、結局諦めて家に帰るとアメルがいきなり魔術使えて、目の前が真っ白になったんだ。そして気づいたら、訳もわからず泣いていた。で何故かアメルに慰められ………ぅぅ)


 ゼクシオはこんなに小さな子に慰められて恥ずかしくなった。しかし、ゼクシオの何かが吹っ切れていて、今は魔術を使うために努力をする事を前向きに考えていた。


(才能がない事は分かったが、この人生では少し凡人になりきるか!)


新たな一歩を踏み出そうとやる気に満ちてゼクシオは動き出した。


 ズドーン


 だが、その一歩目は盛大な踏み外した。そんな状況だが今のゼクシオは自分が折れる気がしなかった。


(妹より強くなって、あの暴論の『俺様つえーからお前悲しくねーぜ』をかましてやる。あれ?これラノベタイトルいけるくね?)


 一歩目はを踏み外したら音でアメルが起きてしまった。


「…っんーー、」


 アメルが起きると、ゼクシオの方を向いた。今は盛大にこけてとても恥ずかしい体勢で、その姿を見たアメルは可愛い笑みを浮かべた。


「おはよー、弱虫ニーニー」


「お兄様と呼べぇーーー!」


 こうして、新たな1日を迎えるアロンスフォート一家であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ