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9話 目撃


「んーとねえ……ここから時計塔へ真っすぐ進んだところにある二つ目の十字路を左に曲がってね、十五、六軒くらい先にある魚屋『渦潮』近くの小道を右に進んでいきなさい。雑貨屋『マリーのアトリエ』の看板が見えてくるから、その途中で左右に分かれた道をしばらく左に歩けば、いずれギルドの旗が見えてくるはずだわ」

「ありがとう、お婆さん」

「どうもです!」


 さすが、王都は世界の心臓と呼ばれるだけあって広くて複雑で道に迷いやすい。現在、昼の三時半近くを指してる時計塔はどこへ行っても目立ってるし、迷わないようにするためにはあれとの距離感が大事っぽいな。


「それじゃカップルさん、頑張るんだよ」

「「……」」


 お婆さんと手を振って別れたあと、俺は苦笑しつつコレットと顔を見合わせた。


「カ、カップルなんかじゃないのにな」

「……で、ですか?」

「おいおい、出会ってまだそんなに経ってないのに……」

「が、頑張りますっ!」

「……」


 コレットは混乱してるのか? 何を頑張るんだか……。




 やがて周囲が赤くなってきた頃、俺たちはとうとう冒険者ギルドが見えるところまでたどり着いた。建物の規模も凄いが、もう夜が近いというのに人の出入りが異常に多くて驚く。亜人、獣人、エルフ族、ドワーフ族等、多様な人種がいて遠くから眺めているだけでも飽きないくらいだ。


 亜人とかはほとんど奴隷として連れてこられてるんだろうな。コレットも他人には同じような目で見られてると考えたほうがよさそうだ。


「……あの、私の顔に何かついてますか?」

「あ、いや、なんでも……」

「ふふ……色っぽいオーラ、出てましたかね?」

「……全然」

「うー……」


 コレットと他愛のない会話をしつつギルドへと入る。


「うっ」

「こほっ、こほっ……」


 酒と煙の臭いや熱気でむせ返った。それ以上に大勢の人の波に揉まれるので、押し戻されないように必死だった。


「――あぅ……」

「ど、どうした、コレット?」

「……あ、その……ち、痴漢さんがいたみたいで……」

「なっ……大丈夫か?」


 喧嘩なんてするつもりはないが、なるべく危険な存在からは遠ざからないといけない。


「だ、大丈夫です。お尻を撫でられただけなので……」

「俺のすぐ側にいて、離れちゃダメだ」

「はいっ!」


 コレットの手を握るとき、恥ずかしさはあったものの彼女がとても嬉しそうに笑ったのでよかった。


「――登録完了です。お二人で二十リパスとなります」


 これで、晴れて俺たちはギルドの一員となった。コレットは必要ないですよと拒んだが、いつか役立つときがくるかもしれないしな。俺がいなくなっても、新しい主人ができるまでのつなぎとしてここで依頼を受けて生活することだってできる。


 それにしても、まさかダンジョンに潜るわけでもないのに登録することになるとは思わなかった。まあだからってこの能力でモンスターとまともに戦えるはずもないし、この先も潜ることはないと思うが……。


「……」


 俺は嫌なことを思い出して首を横に振った。もうあいつらのことは忘れたい。惨めな気持ちになるから他人と自分を比べるべきじゃないんだ。他人は他人、俺は俺だしな。


「どうかしましたか……?」

「あ、いやなんでもない。やっと冒険者になれたんだなって」

「ご主人様、おめでとうです!」

「コレットもな」

「ありがとうです!」


 それに、今の俺は絶対に惨めなんかじゃない。コレットっていう理解者もいるしな。失ったときの痛みを考えれば、あまり依存したくはないけど……。


 俺は早速、ギルド内の壁に釣りイベントについて記した広告を貼ることにした。冒険者なら一枚、通常価格の十分の一の一リパスで買えるんだ。係員によると、朝になったら全部剥がされるので有効なのは一日だけとのことだが。


『時計塔南東の海辺で、明日のお昼頃から夕方頃にかけて見世物として【釣り】スキルを使ったショーを行います。色んなものが釣れると思うので、興味のある方は是非挙ってお越しください』


 ……できた。こんなもんでいいかな。


「どれくらい来るんだろ。結構ドキドキだな……」

「ですね!」


 まったく来ない可能性だってあるわけで、そう考えると怖いな。不安は伝染するというから、あまりマイナスなことを口に出したくはないが。


「……あ……」


 俺は今、気付いてしまった。何人かを挟んで、近くにヨークとラシムの姿があることに……。


「どうしました? カレルさ――もごっ……?」


 俺は咄嗟にコレットの口を塞いでいた。

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