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37話 玉石混交


「ここで休憩がてら【釣り】スキルとかどうかな?」

「えぇっ? できるでしょうかぁ……」

「んー、水溜まりにしちゃ大きいほうだと思うんだが、広さも深さも足りなさそうだし厳しいかな?」

「そうかもですねえ」


 確か、【釣り】スキルの効果を発揮するには充分な深さと広さの水場がないといけないんだよな。そう神父に言われたと記憶している。だから多分無理だろう。


「とりあえずダメ元でやってみようか?」

「ですねっ!」


 どうせダメだろうが、休憩する間は暇だからな。とはいえ、ほかにも人が来る可能性のある休憩場所で、釣れない可能性が高いのに釣りっぽい真似をするのは恥ずかしいってことで、普通に座って休む振りをしつつ水場に靴を浸すだけにした。


「「――あっ……」」


 なんと、早速釣れたみたいだ。青いハーブが足元に浮かんでいる。ただ、元々水場に落ちていたものが偶然流れてきただけっていう可能性もあるので、有効かどうか確かめるべく俺はそのあとも【釣り】を続けてみた。


「「……」」


 俺はコレットと顔を見合わせる。偶然ではなかった。あれから何度か続けてみたところ、赤いハーブや錆びた盾なんかも出てきて、【釣り】スキルが有効なんだと確信できた。


 あの海の近くの教会の神父……まさか俺に適当なことを言ったんじゃないだろうな。稀に失敗する程度と聞いてはいたが、途端に胡散臭くなってきた。こんなところで【釣り】が使えるんなら、それこそパーティー宿舎の風呂場の中でも効果がありそうだよな。よし、今度入ったときに試してみるか……。


「こんなところで釣れるなんて凄いですねえ……!」

「あぁ、それも洞窟関係のものばかりだ……」


 洞窟のどこかに生えてそうなハーブやキノコが多く釣れる中、杖や髑髏や嫌な臭いのする肉、さらには頭や尻尾を除いて骨だけなのにピチピチ跳ねる不気味な魚なんかも釣れた。こういった胸焼けしそうなものも出るが、海釣りでよく出ていた貝殻系がまったく出ないだけでも精神衛生的にはマシなように思う。


 とはいえ今は荷車もないし、釣れたガラクタをここに沢山捨てる状況になるのはどうも気が引けるので、幾つか使えそうなものを拾ってこの辺でやめることにした。こんなに浅くて狭い水場で釣れるってわかっただけでも充分すぎるほどの収穫だからな。


「そろそろ行くか、コレット」

「ですね!」

「……あ、その前に足は大丈夫か? 折角杖が釣れたんだから念のためにこれを使えよ。その重そうな槍も俺が持つから」

「いーえ、大丈夫です。もう、ピンピンです!」

「わ、わかったからまた飛び跳ねるな!」

「うぅ……ごめんなさい。つい……」

「気を付けろよ……。コレットに何かあったら、俺一生後悔するから……」


 ……ん? 言ったあと気付いたが、これって告白みたいなもんじゃないか?


「……嬉しいです……」

「……あ、いや、今のは聞かなかったことに……」

「いーえ! 一生覚えてます。ムフフッ……」

「……」


 あー、恥ずかしい。口は禍の元だな……。


「――あっ……」


 水場のある部屋から出ようとしたときだった。誰かとすれ違ったと思ったら……。


「どうしたんですか? カレルさん――」

「――カレルだって……?」

「へ?」

「……あ、あ……」


 恐る恐る振り返ると、やはりあいつらだった。幼馴染のヨークとラシムが、驚いた顔で俺たちのほうを見ていた。咄嗟に顔を伏せたがもうダメだ。カレルっていう名前を聞かれてるし……。


「カレルさん?」

「……」

「……ま、まさか……あの人たちがカレルさんの……?」


 わけがわからなそうにしていたコレットもようやく察した様子。


「……ああ、そうだよ、コレット。あいつらが以前話した例の幼馴染たちだ……」

「……や、やっぱり……」


 あいつらとだけは出くわしたくなかったが、こうなった以上仕方ない。ここは開き直って、何か適当に挨拶とか会話でもしてこの場を上手く乗り切るしかない……。

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