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30話 引き上げ


「リーダー、今までの話を総合すると、つまり《ゼロスターズ》の命運は俺の手にかかってるも同然ってこと……?」

「ま、まあそういうことになるけど、カレル君が責任を感じる必要はないんだ。ダメだったら僕の目が節穴だったってだけの話で、君は全然悪くないから……」

「……」


 そうは言うが、仮にダメだったとしてすっぱりと忘れられるほど簡単に割り切れるはずもない。ここまで来た以上逃げるつもりはないし、傷つく覚悟だってできてる。


「リーダーの気持ちはありがたいけど……俺もメンバーである以上責任は感じると思うし、メンバーだからこそ責任を感じさせてほしい。一人だけに責任を負わせるなんて、それってもうパーティーじゃないと思うので……」

「カレルさんの言う通りです! 私も責任を負います……!」

「……ありがとう、カレル君、コレットさん……」


 リーダー、泣きそうだな。明らかに声が上擦っていた。普段はひょうきんでメンバーに弄られるタイプみたいだけど、過去の話を聞いてもわかるようにハートは凄く熱い人なんだと思う。


「俺のことはカレルでいいよ」

「私のことも、コレットでいいですよ!」

「わかった。じゃあ、僕のこともたまにはジラルドって呼び捨てにしてね?」

「わかったよ、リーダー……じゃなくて、ジラルド」

「わかりました、ジラルドさんっ」

「……コレットは、多分そのままのほうがいいみたいだね」

「確かに……」

「えぇっ?」

「「あははっ」」


 なんていうか、俺は《ゼロスターズ》のパーティーメンバーとして認められたとまではいかなくても、ようやくコレットと一緒に地に着き始めたような、そんな気がした。


「――お、釣れてるよ、カレル!」

「あっ……」


 いつの間にか俺の釣り餌に魚が食いついてて、ジラルドに言われて慌てて引き上げることに。するとこれが偉く小さい魚で、話に熱中にしていたせいか気付かなかったのも無理はないと感じた。なのにリーダーはよく気付けたな……って、そうだ。マブカが必須三種能力がどうの言ってたけど、どうやって鍛えるんだろう?


「リーダー、必須三種能力って?」

「あぁ、マブカの台詞をよく覚えてるね。索敵能力、罠探知能力、平常心維持能力の三種だよ。どれも高くないと、上級ダンジョンでは必ず痛い目に遭うことになる」

「よかったら説明お願いできるかな? どうやってそれを鍛えられるのかも含めて」

「よろしくです!」

「了解。まず、索敵能力はモンスターが迫ってくる気配だけでなく生じようとする兆しも感じられる力で、横湧きとかにも対応できる。視力や記憶力と密接なつながりがあるって言われてて、周辺の景色とかを普段からよく見ておく必要があるんだ。だから僕はこの能力が一番苦手なんだけどね……」


 ジラルドが苦笑している。


「それでも最低限の推移まで高くなれたのは、この索敵能力は釣りでも鍛えられるからなんだ。さっき小魚が釣れてたのにカレルとコレットは気付けなかったけど、僕は気付けただろう?」

「「あっ……」」


 そういえばそうだった……。


「ちょっとした変化でも気付けるようになれば一応合格。この能力が一番優れてるマブカなら、魚が釣り餌に近付いただけでも気付くことができる」

「「へえ……」」

「次に、罠探知能力。ダンジョンにおけるトラップっていうのは常に停止しているとは限らない上、目視するのが難しいものもあるし、寸前で別の種類の罠に変化する厄介なものもある。それに気付くためには、釣ったものの大きさや色や種類がなんなのかを細かく読むこと。僕の勘が鋭いのも、これが一番得意だからかもね。パーティーに僕がいるうちはいいけど、動く罠に引っ掛かって飛ばされたときとか、頭上から見えない罠が降ってきたときとか、そういうときにもこの能力は役立つんだ」

「「なるほど……」」


 一人だけ覚えていればいいわけじゃないのはよくわかった。


「最後に、平常心維持能力。これはどんなときでもなるべく緊張を抑えて普段通りにやれる能力で、余計な力も入らなくなる。三つの能力の中では一番大事な能力と断言していい。強いモンスターが現れたとき、パーティーが苦境に陥ったとき……そんな様々な苦境であっても、これが高いほど冷静に対処できるようになる。どんなに力があっても、ここぞってときに発揮できないなら意味がないからね。この能力を上げるには、とにかく待つこと。引っ掛からなくてもじっと辛抱すること、釣れても慌てずに対応することが肝要なんだ」

「「……」」


 俺たちはうなずいていた。これはよくわかる気がする。本物の釣りではないけど、海辺ではいいものが出るまでひたすら我慢して釣ってたからなあ。そのおかげか極度にイライラしたり緊張したりすることが減ったような気がするし、既に少しは平常心維持能力が養われてるってことかもしれないな。


「これで、僕がカレルに本物の釣りをさせる理由、これでわかってくれたかな? 今まで僕が言ったことを守って毎日やってくれれば、この三種の能力は必ず上がっていくからね」

「「はい!」」

「とはいえ、僕は新階層の攻略に最低でも五日はかけたいし、残された育成期間は今日を含めてあと七日しかないけど……頑張ろう!」

「「は、はい……」」


 さすがに、俺もコレットも返事は弱かった。なんせたった七日で上級ダンジョンに行けるくらいまで三種の能力を上げなきゃいけないんだからな。しかも、【釣り】スキルの拡張もしないといけないみたいだし……。ただ、それでもやりがいはある。本当にたどり着けるかどうかはわからないが、もがけるだけもがいてみるつもりだ……。

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