24話 仲良し
「俺の名前はカレル。スキルは【釣り】っていって……F判定だけど、色んなものが釣れるんだ。それくらいしか今はできないけど……よろしく!」
よし……完璧にではないがちゃんと言えた。ランクに触れるのは少しためらったけど、どうせいずれわかることなんだし正直に告白したほうがいいと思ったんだ。
「今度は私ですね。よろしくですっ! 名前はコレットといって、普通の人間さんではなく翼が生えた天使……もとい、鳥さんと人間さんが合わさった亜人さんなんです。メンバーの一人ではありますが、戦力というよりもカレルさんの使用人という形でやってまいりました。ですので、遠慮なくこき使ってやってください!」
コレットは相変わらず元気がよくて、こういうときは本当に羨ましくなる。俺なんて緊張しすぎて早口になっちゃったから、ちゃんと聞き取ってくれたか心配になった。
俺とコレットの自己紹介のあと嫌な沈黙がしばらく続いたが、少し経って思い出したように拍手が起こって一安心した。コレットも胸を撫で下ろしてるのがわかる。ああ見えて結構緊張してたのかもな……。
「よく自己紹介できたね、みんな。カレル君、コレットさん、これで晴れて《ゼロスターズ》の一員だ!」
「「ジラルドさん……」」
リーダーと握手を交わす俺とコレット。
「てか、リーダー。なんで使用人なんて連れてきたのさ。まさかそっちがメインなんじゃ……?」
「ありえるわねぇ……」
「……ジロッ」
ルーネ、ファリム、マブカの三人がジラルドに冷たい視線を送ってる。マブカって子だけは微笑んでる顔だが、台詞で察することができた。
「おいおい……コレットさんはな、カレル君といい仲なんだぞ……?」
「えー、あなたたち恋人同士なのー?」
「い、いや、俺とコレットは仲の良い友達同士で……」
「ふーん。亜人のあなたもそう思ってるの?」
なんか偉く突っ込んでくるな、このファリムって子……。
「私は、カレルさんとは恋人でも構わないって思ってます!」
「へぇ。あなたの片思いなのねぇ。それじゃ私にもチャンスはあるかな?」
「そ、それは、わかりません……」
「こらこら、ファリム。いじめちゃダメじゃないのさ」
「何よルーネ。ただのスキンシップだよぉ……」
「こんなときに都合よくお子様になるんじゃないよ!」
「……ちっ」
ようやく冷やかしが終わったみたいだ。これも洗礼の一種ってところか……うわ、ファリムにウィンクされて、俺は猛スピードで目を逸らした。クスクスと笑い声が聞こえてくる。恥ずかしながら俺の女の子耐性はゼロに等しいからな。キスさえもしたことがないわけだし……。
「あんた、ノーチャンスだって思ってたけど意外とありなのかねぇ?」
「あるに決まってるでしょ。時代はお子様よ! ふぇぇ……」
「開き直ってんじゃないよ! 純粋な女の子ならともかく、色気ゼロの腹黒チビなんかよりナイスバディのうちを選ぶに決まってるじゃないのさ!」
「思い上がりよ! ちょっと前まではただの豚だったくせに! ブーブー!」
「……は、はぁ? 確かに昔は太ってたけどねぇ……もう許さないよ!」
「「ムキー!」」
また喧嘩が始まってしまった。ジラルドが言ってた普段は散らかってるっていう理由が早くもわかった気がする……。
「カレル君、モテモテだなあ。よーし、僕も彼をゲットするために頑張るぞー。グフフ……って、ん? みんな、何故黙ってるんだい……? む、無反応だけはダメッ! 絶対ダメエェッ!」
リーダー、滑ったがみんなを笑わせるために体を張ってるな……。
「……ジロッ」
「……あっ……」
マブカっていう子に見られて鳥肌が立った。やっぱりいくら微笑んでて可愛くても、相手が顔だけというのは怖いな。台詞付きだから、多分流れに便乗した形なんだろうけど……。
「さー、自己紹介も終わったことだし、少し早いけどそろそろ夕飯にしよう! レッツゴー!」
「お先ー!」
「あ、ファリム、うちが先だよ!」
「……ご飯の場所、廊下をずっと歩いた先」
「「……」」
案内してくれたマブカの顔も消えて、俺とコレットだけその場に取り残される格好になった。みんな気持ちを切り替えるのが早すぎる。これが上級パーティーってやつか……。
「俺もよく考えたらペコペコだった。コレットもお腹空いてるだろ?」
「はいっ」
「……お、おいおい、こんなところで手をつなぐのは……」
「食卓に行くまででいいですから、カレルさんを独り占めさせてください! さー、行きましょう!」
「ちょっ……」
俺はコレットに手を引っ張られて長い廊下を走っていく。迷宮を意識して作られたのか、ぐるぐると回って中央に向かうような構造だ。この先どうなるかはわからないけど、彼女さえいれば迷わずに普段通りにやれそうな気がする。
「……」
まーた俺、依存しちゃってるな。マザコンなところがあるんだろうか。少しは自立しないと……。




