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13話 電撃


「――というわけなんだ……」

「「え、ええっ……!?」」


 降りしきる雨の中、俺とコレットの上擦った声が被る。大物感のある男だと思ったが、やはり正解だった。


 彼はジラルドという名前で、誰もが羨む上級ダンジョン『勇壮の谷』に通っており、それも現在人類最高階層である二十階に到達している強豪パーティー《ゼロスターズ》のリーダーだったのだ。


 しかもそんな大物が俺をスカウトしにきたというんだから、驚かないほうが無理があった。まさに青天の霹靂というやつで、こんな外れスキル持ちの俺を上級パーティーのリーダーが直々に勧誘してくるなんて思いもしなかった。からかわれてるんだろうか……?


「カレルさん、おめでとうです! あの、私コレットっていうんですが、ついていってもいいんですか?」

「ん? メンバーとしてかい?」

「いえっ、カレルさんの使用人として、です!」

「あはっ。使用人つきかあ。もちろん、カレル君がいいと言うなら構わないよ」

「わーい! ありがとうです!」

「……」


 随分と非現実で都合のいい話を持ってきたものだ。このジラルドとかいう男……人が良さそうな顔をして、実は腹黒とか……?


「カレル君だったね、是非僕のパーティーに入ってもらえないかな?」

「カレルさん、一緒に入りましょう。大チャンスですよ!」

「……どうかな」

「「え?」」


 コレットとジラルドがぽかんとした顔で見つめてくるが、そう簡単にこんな都合が良すぎる話を信じるほど今の俺はバカじゃない。


「まず理由が知りたい。それだけ強いパーティーなら、入りたいやつはいくらでもいるはずじゃ? なのに、なんでよりによってFランクスキル持ちの俺なんかを選ぶのかと……」


 パーティーに入れると見せかけて、酷い目に遭わせて追放してやろうっていう魂胆かもしれないしな。仮にそうだとしたら相当に暇なやつだと思うが、外れ判定されてる俺なんかを入れるよりはよっぽど納得できる。


「うん、やっぱりそう思うよね。僕はギルドで例の広告を見せてもらって、【釣り】スキルっていうのがどんなものかって遠くから確認させてもらったんだけど……いや、改めて釣りっていいなあって!」

「「……え?」」

「僕の趣味は釣りなんだけど、それがスキルになってるってこと自体感動的なのに、あんなにガンガン色んなものが釣れるんだから、もー、浪漫でしょ。男の浪漫! 是非一緒に釣りをしてみたいって……あれ? どうしたの? そんな怪訝そうな顔して……」

「……だからって、大したものは釣れないってわかったでしょう。なのに、強豪パーティーの一員にするのはやりすぎかなって……」

「……チッチッチ。実に考えが甘い、甘いよ! 飴玉のようにね!」

「「……」」


 俺はコレットと顔を見合わせる。彼女はぽかんとしてたが、きっと俺もそんな顔をしてたはずだ。このジラルドっていう男、なんか変わったやつだ……。


「大したものが釣れないってことは、裏を返せばいつか大物が釣れるかもしれないってこと! 僕の勘はね、よく当たることで有名なんだ。こう、ビビッと来たよ。ビビッとね!」

「きゃあっ!」


 そこで都合よく空が光ったと思ったらまもなく雷鳴が鳴り響き、コレットが俺に抱き付いてきた。


「お、おいおい……」

「怖いです。私、雷苦手で……」

「じー……」

「「はっ……」」


 ジラルドが間近で覗き込んできてはっとなる。割と……いや、かなり冷たい視線だったな。何か癇に障ったんだろうか……。


「お邪魔みたいだから僕は一旦引き上げるよ。無理強いはしたくないしね。でも、今は急いでるから一日しか待てない。明日の昼頃またここへ来るから、是非良い返事を期待してるよ。それじゃっ……!」

「「あっ……」」


 俺たちが返事する暇もなくジラルドは早口で捲し立てると、横殴りになるほど強く降りしきる雨の中を猛然と走り去っていった。本当に変わっている……。

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