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孤高の魔道士は自分の不変を望む  作者: 最弱のあああ
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八話 また誘拐と縁切り

 


 放課後、謎の女魔道士捜索任務の為に再度地下の会議室に集まっており、そこには兄勇進、水乃木聖、灯日フレア、陸道の四人と深影と俺不士が集まっていた。

 深影は女魔道士の情報提供の為に、俺は情報収集の為に、俺の目の前で俺を探す作戦を話てくれると言うのだから聞かない手は無いだろう?


「……これが女魔道士の資料をまとめた物」

 深影が無愛想に資料を皆に配る、どうにもこの人は兄達を嫌っている様な気がする。


「えっと魔王と互角の魔力量に魔法の三つ持ちか……戦えばまず勝ち目は無いな」

 兄が資料に目を通し率直な感想を言う。


「あ、あの魔法の三つ持ちとはなんですか?僕は自分の魔法のコントロールばかりで、まだ魔法の知識が勉強できてないのです」

 陸道が兄にビビりながら質問する。


 三つ持ちとは3種類の魔法を身に付ける事ができた魔道士の事を指している。そもそも魔道士の大半は魔法を一つしか使えない、これは魔力に覚醒後一つ(極まれに二つ)の自分に合った魔法を得る事ができるが二つめ三つ目以降は他の魔道士から魔法の継承や魔道書などから知識を得て覚えるしか無く、それらが非常に難しい為に基本は覚醒と共に得られる魔法を鍛えているのがほとんどである。

 もちろん召喚魔法の様な例外もあり、それは魔道具や魔方陣などの外的要因が大きい魔法である。


 兄は陸道に丁寧に説明して再度資料に目を通す。

「半透明の物体を作り自由に形を作り替える魔法、魔法名は不明。欠損すら治す自分専用の回復魔法、魔法名は超自己再生、所載不明即死系の魔法、精神異常もあり悪霊使役も確認、魔法名は呪羅万象顕現……なんだこれは?聞いた事無い魔法ばっかなんだが、わかるか?聖」

 兄が驚いていると言うより呆れているかの様に言う。


「二つはわかるよ、半透明の物体を作る魔法、同じ物は知らないけど似た魔法なら幾つかあるね。総じて自由度が高く応用が効きやすい、でも作り出した物本来が持つ力以上は発揮出来ない。例えば、水を作る魔法で作った水弾と水弾を作る魔法で作った水弾だと後者の魔法のが強い力を発揮できるの。

 次に超自己再生魔法これは有名だね、使える人は少ないけど。魔力が許す限り即死以外ならどんな怪我でも治せる魔法だね。弱点として膨大な魔力を消費するのだけれど、魔王級の魔力があるなら、無いような物だね。

 最後の呪羅万象顕現魔法は知らないな、未来を視れる【森羅万象】とは違うでしょうし、ただどんな魔法にも長所と欠点があるのよ。これだけ強い魔法ならそれ相応の弱点、制限や制約なんかが有るはずよ」

 水乃木さんが説明する、こういう知識関係は水乃木さんの担当なのだろう。相当勉強している。


「そうか、ありがとう聖……戦う事は無いと思うが万が一に戦う事になった場合は全力で逃げる様にな

 次に、見た目は160前半の身長にフード付きの灰色のコートに黒いマスクを付けた少女か……普段は違う格好だろうし探すなら、特訓の為に魔物か人を狩りに出たときか?とりあえず、試して貰えるか、陸道」

 一通り資料に目を通した後陸道に魔法の使用を求める。


「わかりました、【付け纏い】条件を160前半の身長に黒いマスク付け灰色のコートを着ている少女を探せ!」

 陸道が魔法を発動し一本の糸が手から出てくる。糸が条件に合った少女に纏いつこうとグルグル回るが次第に力を失いうな垂れて動かなくなった。


「すみません。該当する条件の人は見つけられなかったです」


「いや、仕方ないさ。やはり夜にまた集まって魔法を発動させるしか無いだろうな……とりあえず今は、戦いになった時の逃げ方とこの娘が特訓の為に使いそうな人のいない場所を探すだけにしようか」


 その後、兄が会議の方針を決め、四人で話し合っていく。俺と深影は聞いてるだけだ。もっとも、陸道の監視があるから俺が現れる事は無いのだけどな。







 家に帰った後、読書をしながら陸道への対処法を考える。放置と言う選択肢は考えられない、ずっと見られている訳では無いがいつでも見られると言うのはかなりの不快感だ。ならば魔法の糸を切るのも出来れば避けたい、俺が魔道士だとバレてしまう。

 となると、陸道を殺すぐらいしか方法が思いつかないが殺す理由が無い。いや、殺すのに抵抗がある訳では無い、ただ殺した後に誰が殺したのか?となった際に無実を証明出来ない。魔法を使えば良いが、女魔道士になって陸道を殺すと、なぜ殺したのか?どこで知ったのか?となり非常に面倒で不快だ。


 ……丁度、彼奴らは俺を探しているしここは一つ三文芝居でも演じて見るのも良いかもしれないな。





 数日後、俺は俺(女魔道士)に誘拐された。


「こいつは魔道士連盟に敵対意思は無かったんじゃないのか!!」

 勇進が激昂し誰に共無く怒鳴りつける。


「落ち着きなさい勇進!不士君の場所は付け纏いの魔法でわかっているのでしょう。残していった紙の書かれた身代金要求にも理事長は応じても良いと言ってるそうよ、今日中には不士君は助けられるわ」

 必死に勇進を落ち着かせ様と灯日が声を掛ける。


「ああ、そうだったな。なら今すぐに助けに向かおう!」

「もう少しだけ待って勇進!今、理事長がもしもの時の為に応援を呼んでるそうなの」

 すぐに動こうとする勇進を止め応援を待とうと言う水乃木。


「応援?こんな時に誰だよ!こっちは急いでるんだよ!がっ!!」

 止まらずに動く勇進がシールドにぶつかり止まる。


「っぅ!誰だよ!こんな所にシールド張ってる奴は!」

 勇進が怒鳴るとシールドの向かい側から一人の男が歩いてくる。


「私ですが?何か?人の話が聞けないお馬鹿さん」

 その男は20代のサラリーマン風でスーツをピシッと着こなし四角い眼鏡を掛け髪の短く切り揃えて勇進を罵倒する。


「誰だよ、お前……お前が応援に来た奴か?」

「いいえ、違います。私は五大魔法の一つの【聖盾】の使用者、成辺なりなべ いさぎと言います、よろしくお願いいたします。……私は力を持たぬ一般人を助ける様に依頼されて来ましたが、周りの見えぬ猪突猛進の馬鹿の介護をして一緒に死んで来いと言われた訳ではありません」

 成辺は丁寧に自己挨拶をして45度の角度でお辞儀をして、暗に勇進に協力しないと告げた。


「なんだと!お前!」「勇進!!」「勇進!お願い!!」

 掴み掛かろうとする勇進を水乃木と灯日が前に出て止める。

「っ!!……五大魔法の使い手成辺さん!!よろしくお願いします、力を貸してくれ!」

 勇進が成辺に習い頭を下げて頼み込む。


「ふぅ、良いでしょう、お互い協力して不士君を助けましょうか」


 成辺が手を出し勇進がそれを握る、二人は握手をして協力関係を結び、不士が捕まっている場所へと急いだ。








 不士と女魔道士がいる、山にある木の小屋に勇進と成辺、陸道の三人で正面から入り足を縛られ座らされている不士とその隣に座り読書をしている女魔道士と向かい合う。

「遅かったな」と短くつぶやき本を閉じ女魔道士がこちらに視線を向ける。


「約束通りの身代金一億です。こちらの床に置きますので不士君を解放後、受け取りに来て貰えますでしょうか」

 成辺が持っていたアタッシュケースを床に置き不士の解放を要求する。


「断る、それをこちらに投げろ。金を確認してからだ」

「……良いでしょう」

 女魔道士の言葉に成辺は承諾しアタッシュケースを床を滑らせて渡す。

 それを、女魔道士は動かずに【魔力超濃縮物体】でアタッシュケースを取り中を確認する。


「……確認した、私が出て行くからそれから人質を助け出すと良い」

 女魔道士が立ち上がると同時に魔法の糸を伸ばしてくる。それをわざと受ける、、、これを待っていたのだよ。


「……趣味の悪い魔法だな、それとこれは宣戦布告と受け取るよ【呪羅万象顕現】」

「不味いです!バレています!陸道さん今すぐ魔法を解いて下さい!」

 女魔道士は手に隠し持っていた小瓶から呪羅万象顕現から生まれる黒い靄を糸に流す。


「はい?っっぅぅぅ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ」

 成辺の注意は間に合わず陸道は黒い靄を受け叫びを上げる。それと同時に不士と女魔道士に掛かった魔法の糸が解かれる。





 ああ、不快な視線が無くなる。一年ぶりに牢屋から解放された気分だよ、捕まった事なんて無いけど。

 ここからは選手交代だ。代われ、、、魔王!





 召喚魔法で呼び出し僕にした魔王に女魔道士の振りをさせ、男の不士をさらわせた。その際に呪羅万象顕現を使い呪いを小瓶に溜めて魔王に渡し、それを使わせ陸道の魔法を壊した。どのような影響が出るかは明日以降にわかるだろうが、少なくても二度と俺と魔王には使えないだろう。

 そして、魔王が最後の仕事として魔力超濃縮物体で目眩ましをして俺とチェンジする。

 ここからは、俺の仕事で兄を殺す。魔法に覚醒する前は殺したい程、不快な存在では無かったが今回は違う魔法を得て調子に乗ったのか知らんがお前に俺を縛る力は無い!



「仕掛けてきたのはそちらだ、殺しはしないが覚悟しろよ変形・九尾の猫鞭」

 鞭を手当たり次第に振るい回し小屋を壊し目眩ましをする。この隙に俺と魔王が入れ替わった。


「!!不士を何処にやった!」

 兄が俺と魔王の入れ替わりで居なくなった不士に気づき叫ぶ。


「そいつなら、しばらくの間私の【亜空間】魔法の中に入って貰ったよ」

 ついでに、一億円も亜空間に収納しておく。


【亜空間】とは使い手専用の小さな異世界を作る魔法で主な用途として道具の収納や緊急時の避難場所として使われている。【道具箱アイテムボックス】や【避難所シェルター】などの魔法の上位互換である。


「その若さで四つ持ちですか、天才とはこの娘の事を指すのでしょうね。【聖盾】・全防御強化」

 成辺が味方全員に防御バフを掛ける。


(あの知らない人、かなり強いなと思ってたら五大魔法の使い手なのか。俺なんかを助けるために大がかりな事で)


「不士を返しやがれぇ!!」意味不明な事を叫びながら【聖剣】で斬りかかってくる。

「変形・剣」


 全ての魔力物体で一つの剣を作り上げる。今までとは違いその耐久値は高いが、その代わり魔力物体の量が非常に少なくなる欠点が出てくる。量を維持しつつ耐久値を上げる方法はないだろうか。


 ガキンと鈍い音を鳴らしながら聖剣と魔力物体の剣がぶつかり、つばぜり合いになる。すぐに亜空間から昔ヤクザの事務所から盗んできた、銃を取り出し兄に向けて発砲するが聖盾の防御バフのおかげで至近距離から直撃したのにかすり傷程度のダメージしか与えられない。

 仕方ないので、後ろに後退するとそこに火の玉が飛んでくる。


「火力満タン【炎獄支配】火旋球!」

 小屋の反対側に潜んでいた灯日さんが放ってきた火の玉を横っ飛びに避ける、火の玉は地面に当たるとそこに小さな火の竜巻を作り出す。

 避けた先の地面が湿っている、雨は降っていないのに、、、と言う事は……

「【水成獣】水土竜」

 土の中に潜んでいた水で出来たモグラが飛び出してくる。それを剣で斬り伏せると同時に兄と成辺が左右から迫ってくる。


 思わず舌打ちをしてしまうが、気にせず魔力物体を盾と棘に変形させる。

「【聖盾】反射盾展開!これで逃げられませんよ。森薙技さん!」


 成辺が左右上下の退路を塞ぎ兄が止めを指すといった所だろうか。

 兄との間に盾を置く、それを聖剣は突き刺し盾を砕きながら俺の腕を突き刺す、そのまま剣のつばの所まで腕を食い込ませ聖剣の柄を握る。

「なに!!」

「逃げられ無いのは貴様だ、聖剣の使い手」



 棘を一点集中で腹に連続で撃ち込む。防御バフを突破し兄の腹を貫く――



「おっと、以外と弱い防御なんだな【聖盾】と言うのは」

 事故で殺してしまった風を装い、用事も済んだし、周りの様子を伺い退くタイミングを探る


「ゆ、勇進!!」「え?ゆう…しん?」

 灯日さんがたまらずに持ち場を離れ、兄の元に駆けつける。水乃木さんはその場を動けずに膝をつき立ち尽くす。


「なっ、、、私が居ながら!森薙技さん!」

 成辺も兄に近づき俺との間にシールドを置き兄の傷を看る。

 陸道は呪いを受けて気絶している。


 退くなら今だと判断してその場を去ろうとするが、水獣が迫ってくる。それを、魔力物体で迎え撃つ。

「貴方が、、、勇進を!よくも!!」

 水乃木さんが吠える。どうやら逃がす気は無いらしい。

「水乃木さん!落ち着きなさい!退きなさい!」

 成辺が注意するが、その声は聞こえない


「ああぁぁぁ!!【水成獣】水龍!!、、、ぐふっ!!」

「グルアアァァァァ!!」

 水で出来た龍が生成され俺を食らおうと吠えながら飛んでくる。龍を作り出した水乃木さんは魔力切れで血を吐いて倒れる、相当無理をしたのだろう。


 水乃木さん程度が命をとして作った水龍では俺には届かないがな。


「そういや魔王から貰った魔法があったな。試して見ようか【魔王の粒子線】」

 魔力が黒く染まり練り込まれて黒い球体になりそこからビームが発射される。何発も何十発も。

 魔王と戦った時に魔王が撃ちまくってた様に。




 ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛ト゛オォォォォ




「グルルアアアァァァァァ…ァ…ァ……」

 幾つ物ビームが激しい衝突音を立てながら龍を撃ち、龍を打ち落とす。


 今度こそ追ってくる奴が居ない事を確認してから引き上げた。



 最後に兄の姿をチラリと見てみるが、やはり……なんとも思わない。

 開放感も罪悪感も――




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