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孤高の魔道士は自分の不変を望む  作者: 最弱のあああ
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五話 野良のサンドバッグを殴りに



 兄の勇進から魔道士についての説明を聞いた、いや違う聞かされただ。ご丁寧に麗芽先生が使える【外傷治癒】魔法で俺の腹の火傷を治す実演付きである。


 これには、ぐうの音もでずに信じるしか無かった。


 魔法を使う魔道士の事から始まり、人類の敵である「異世界の魔物」の事、それに立ち向かうために設立された世界政府公認の魔道士を統括する秘密組織「魔道士連盟」の事、連盟に反発し己の欲の為に魔法を使う数々の悪の「反逆魔道組織」の事……


「そして俺の【聖剣】、この魔法は世界最強の火力を誇ると言われている最強の五大魔法の一つなんだ。この最強の魔法を奪うか、制御できようになる前に殺してしまおうって奴らが沢山出てくると思うんだ。だけど、心配するなよ!お兄ちゃんは絶対負けないから、それに頼もしい仲間もいるからな!もし、不士を狙う様な奴が悪い奴らが居てもお兄ちゃんが絶対に守ってやるからな」


 熱く語ってもらってて悪いがとっとと死ねとしか思わないよ。あと、自分の事をお兄ちゃんとか言うの止めてきっもいから。


「そう、気をつけてね」

 本音を隠しつつ無難な返事をしておく。


 その後、完治した俺は帰宅、兄たちは学校の地下施設で魔道士としての特訓を行いに分かれた。「見学しにこないか?」と誘われたが、今日は疲れたからと言って断る事ができた。


 こんな形で巻き込まれるとは、とても不快だが回避しようがないからどうしようも無い。とても不快だが。

 まぁ、いい明日は土曜日だ。特訓ついでにストレス解消にもなるだろな。









 朝、アジト襲撃の為の準備をしていると隣の部屋から水乃木さんの声が聞こえるてくる。平日は俺が家を出た後に、遅刻ギリギリまで寝ている兄を起こして一緒に通学する、ラノベあるあるのイベントを行ってる様だが、今日は土曜日だ。なんでいるんだろう?何気なくのぞいてみる。


「もう、勇進!起きないと遅刻するわよ。あら、不士君おはよう、休日でも早いのね。台所に朝ごはん用意してあるから、たまには一緒に朝食食べましょう」


「ううん、不士に聖か……今、起きるよ、ふわぁ~」


「おはようございます、兄さん、水乃木さん。土曜日なのに早いですね、お出かけですか?」


「う~ん、遊びにお出かけだったらよかったんだけどね。学校の地下で魔法の特訓に行くのよ、不士君も見学しにくる?」


「遠慮しておきます、出かける用事があるので。

 ……兄があまり無茶しないように気をつけておいてください」

(ガチで最強の魔道士になられてたらクソ鬱陶しそうだし)


「不士!お兄ちゃんの事心配してくれるのか、ありがとう。でも、大丈夫だから!お兄ちゃん最強の魔道士になって不士を守ってやるからな」

 いつの間にか完全に目が覚めていた兄が大きな声で主張してくる。


 早く、こいつらが悪の組織に殺される事を願うばかりだよ。

 その後、三人で朝食を取り兄たち二人は学校へ向かった。


「さーて、俺も出かけようかな、楽しい、楽しいサンドバッグを殴りにな」













 住宅街から少し離れた廃ビルの正面入り口に俺は立っている。体を女にし、いつもの様にコートとマスクを身にまといフードを目深くかぶり、佇んでいた。


(中には四人か、大男が言ってた数と同じか。全員、魔力を押さえているが漏れているし潜むには雑すぎるよ。……あと、少し離れた場所のもう一つのビルに魔道士が一人、偶然か?一応警戒はしておこう)


 魔力を絶つのを止め、解き放つ。ビルにいる者達は気づいただろうか?開戦の合図のつもりだが……まぁ、いいや。そのままビル内部に入る。







 四人の内の一人が降りてくる、開戦の合図はきちっと届いたらしい。隠れているつもりだろうが、漏れる魔力でお見通しだ。


「居るのは、わかっている。今すぐに出てこい。でなければ、そのままそこで圧殺する事になるぞ」

 隠れている場所を真っ直ぐ見ながら喋る、【魔力超濃縮物体】を出しながら。


「いきなり喧嘩腰かよ!OK!アンタが敵だって事だけはわかったよ!【鎌鼬かまいたち】魔法」

 陰から男が出てきて、魔法攻撃を仕掛けてきた。男から飛んでくる鋭利な風の刃たちが魔力物体を切り裂いていく。


「これは、なかなか良い特訓になりそうだが、それでは障壁は突破できんぞ、、、こっちからも行くぞ!変形・鞭!」


【鎌鼬】が【魔力超濃縮物体】で作られた障壁を切るがすぐに粘土のようにくっつき元の形に戻っていく。

 魔力物体の一部を一本の鞭の様な物に作り変える。鞭は鎌鼬の隙間をかいくぐり、男へ襲いかかり胴体を殴打する。


「ぐはっ!!ちっくっしょうが!これならどうだぁぁ!【鎌鼬】【鎌鼬】【鎌鼬】【鎌鼬】【鎌鼬】!!!」


 大量の鎌鼬が四方八方から襲いかかるが、、、更に追加で体から出された魔力物体がドーム状の障壁のなり全ての攻撃を防ぎきる。


「……さて、ここからは初めての技だ、上手く扱えるといいんだが……変形・九尾の猫鞭」

 魔力物体が九本の鞭に変わる。本来は殺傷力の低い拷問具だが、一本一本が長く大きくなれば立派な武器だろう。ただ、数が増えればそれに伴い精密な操作が難しくなる。


「なっ?!嘘だろ!ま、待て!こうさん゛ん゛ん゛ん゛ばぁはっあぁぁぁ!!」

 男が言い終わるよりも先に九本の鞭が男をめった打ちにする。


「あ……降参してた。まぁいいか、こいつら誘拐を企てる犯罪者だし」

 とどめを刺し、息の根を止めてから上へ上がる。







 残りの三人は一カ所に集まり待ち伏せしている様で、そこまで登りドアの前までたどり着く。

 そして、魔力物体で作った手でドアを開けると同時に火炎放射で焼かれる。


「うおっと、自分で開けなくて正解だったな」

 焼けて消失した魔力物体を見ながらつぶやく。前を見ると男二人と女一人が視界に入り、真ん中の男と目が合う。


「ちっ!まだ、生きてやがるか、貴様!何者だ!何が目的で俺達を攻めに来た!!」


「はい?あー、すみません。ただ、殺しても良い人達で魔法の試し打ちに来ただけです」


「なっ!?これだからガキは!常識ってモンをしらんから!!【火炎放射】!!」


 真ん中の男が魔法を放ってきたので、かなりの量の魔力物体を障壁に回しながら、火炎放射を防ぐ。その横から、もう一人の男が飛び出してきて魔法で作ったであろう黒いトゲトゲした鉄球の付いた棒を振りかぶってき、それを、後ろへ飛び引いて回避するが、今度は一番後ろに居る女が電撃を放ってきたので、余っている魔力物体で防ぐ。


「ふぅ……」

(これは、【魔力超濃縮物体】だけじゃ、厳しいかもしれんな。所詮ただの魔力の集合体だし耐久値が低い、いや、もっともっと濃縮できれば、とにかく改良が必要だな。

 それより、この状況は真面目に魔法を使わないと……【陰陽反転】で行くか?いや、ここは俺に最も相性が良いとする魔法にしよう)


「なかなか難しい物だな、戦いと言う物は……当たり前だが対人で使うのは初めてだからな、本来の真価見せてもらうぞ、、、【呪羅万象顕現】」

 俺が魔法に覚醒した時から、生まれたときから覚えていた、人に使うのは初めて、では無いこの魔法を唱える。すると俺の周りから黒いもやが湧いてくる。


「魔法の二つ持ちか!!気をつけろ!毒ガスかもしれん!!」


 男の一人が仲間に向けて注意を促すが、もう遅い。この魔法は知能が低く、恐怖や不安などの感情が薄い魔物には効果が弱いが、相手が誰であろうと発動した瞬間ほぼ勝利は決まる。


「毒ガスか……遠からずも近からずかな。この魔法はな、全世界、広大な宇宙も含めてのありとあらゆる負の感情を把握し掌握し具現する魔法……この魔法をひとたび浴びればそれだけで心の負の感情は暴発し発狂する」


「ア…ア…ア…いやぁぁぁぁっぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

 黒い靄を少し吸ったのだろうか後ろの女が発狂し始める。


「それだけではない、多くの恨みを買っている者は、その負の感情が呪いとなり直接命を刈り取る事もできる」


「お前!何を、ぐっふ……ゴポ……」

 男は突然、胸を押さえだし、吐血して死にいたる。


「このガキィィ!!よくも、、、うわあぁぁ!!な、なぜ、ここに居る!クソ親父!てめーは俺が殺したはずだろ!!ぐっはぁ!!」

 俺に飛びかかろうとした男の前に黒い靄が人の形を成して立ちふさがる。靄でできた男が持っていた酒瓶で何度も殴打して殺す。


「あーあと、負の感情を残して死んだ者を悪霊として呼び戻す事もできるな。これは、魔物にも有効な攻撃になるな。次は、ともう相手が居ないや、女は廃人になってるし」


 魔法を解き、凄惨な殺戮現場を見渡すと床に描かれている魔方陣が視界に入る。

 興味が湧いたので近くでよく見た後、周りに落ちていた魔道書らしき物を手に取り読む。




 どうにも、生きた人間を贄にして行う【召喚】魔法の一つの様だ。これには、【聖剣】を生け贄にした際の召喚できる「異世界の魔物」が書かれている。


 これって、兄を攫って贄にしようってことだよな?……助けたの失敗だったか?てっきり水乃木さんと一緒に洗脳される物だと思ってたよ。

 過ぎた事を悔やんでも仕方ないか、……せっかくだしそこの女でこれ試していいかな……【聖剣】ほど強力な魔法でも無いだろうから召喚される魔物も強くないだろうし、良いよな?よし、試そう。


 廃人と化した女を魔方陣の中央に運び込み、主従契約の為に儀式用の短剣で手を切り、魔方陣に血をたらす。後は、召喚に必要な魔力を注ぐらしい。なんでも、出てくる魔物の強さは贄の強さと注いだ魔力量で決まるらしので思いっきり注ごうと動いたら、、、近くに居たもう一人の魔道士に動きがあった。

 その魔道士は魔法を用いて、こちらに渡ると同時に黒い矢の様な攻撃を仕掛けてきた。


 その攻撃を【魔力超濃縮物体】で作り上げた障壁で防ぎつつ渡ってきた魔道士に視線を向けるもその姿が見えない。


「居ない?いや、魔力はあるし……ん?もしかして影の中か?」

 そう思い、試しに影を魔力物体の一部を棘にして撃ち込む。すると、影が棘を避ける様に動く。


「……貴方すごい、魔力感知能力……お見それする……でも、わたしの勝ち」

 影から女の頭部が出てくると一緒に勝利宣言をする。


 どう言う意味かと考えると、最初の攻撃を防いだ魔力物体に異変を感じる。

 それは、黒いシミが付いていた。そのシミは魔力物体を壊さずに広がり、近くにあった腕にシミが付き体全体に広がろうとする。


「これは、なるほど。このシミが体全体に広がったら負けと言う事か、じゃあ、、、こうするしか無いな!!」

 手に持っていた短剣で黒いシミが付いた腕を余裕をもって肩から切り落とす。


「!!……驚いた、何の迷いも無く腕を切り落とせる人を見たのは初めて……でも、その出血では、どのみち終わり……大人しく投降して、そしたら命は助ける……心配しないで、わたしは魔道士連盟の者だから悪い様にならない」


 シミが腕全体に渡り、黒く塗りつぶされ破壊されるのとシミの消失を見届けたあと魔法を使う。

「ははっ!お生憎様、この程度なら自分で治せる!【超自己再生】魔法!」

 この魔法は欠損さえ膨大な魔力と共に治す、自分にだけ使える回復魔法で血が止まり腕がニョキニョキと生えてくる。


「!!三つ持ち!【影景侵食】」

 驚きの声と共に先ほどの黒い矢を撃ってくる。


 矢を障壁で受け止めたあと、すぐに霧散させシミを剥がし再度障壁を形成する。奴が撃つ矢は最初の速度はともかく、何かで受け止めた後は、シミになり動くからかなり遅い。即座にシミの部分を切り落とせば驚異ではない。

「さすがに、一発ネタだな、、、初見殺しにはいいが、変形・鞭」


 鞭でグルグル巻きにして影から引きずり出す。そして、魔力物体で拘束する。引きずり出してから気づいたがこの女、いや、少女はまだ中学生ぐらいの身長だった。黒尽くめの衣装でかなりの厚着をしており体型は一切わからない。唯一露出されている頭部も長い前髪と後ろ髪でほとんど見えない。

 身元を特定されない為かも知れないが、暑くないのだろうか?俺が言えた事では無いけど……


「……拘束?わたしを殺さないの?」


「?、ああ、殺しませんよ、だって魔道士連盟の人達を殺したら誰が私たちの日常を守るのですか。私は嫌ですよ、誰かの為に戦うなんて」


「…………なら、今、やってる事は何?……日常を壊されたくない人がなんで、人殺ししてるの?」


「え?それは……特訓の為ですよ」


「……特訓?もう十分強いのに?……それだけの強さがあれば自分の日常は守れる……貴方は何のために強くなるの?」


(何のためと言われてもすぐに答えが出ないな……昔は痛い思いをしないため、身を守るためだったが……今は何だろうな)

「……」

「……そう、貴方、名前は?」


「人に名前を聞くなら先に自分の名前を言ったらどうですか」


「わたしの名前は深影ふかかげ すみ

「……」「……」

「……名乗ったのだから、言ったら?」


「別に名乗ったら名乗ると言った訳ではないので……さぁ、これで【召喚】魔法の完成だ……予定より、かなり血の量が多いけど」


 深影を拘束してから、なんでもない会話をしつつ魔方陣を完成させる。腕を切った際に流れ出た俺の血が大量に魔方陣にかかっているが多分、問題ないだろう……問題ないと良いな。


 そして、俺の中にある、異常なほど膨大な魔力を存分に注ぎ込むと、とても明るく眩しい白い光が出てくるはずが、、、
























 ではなく、とても暗く全てを飲み込むようなどす黒い光がでてくる。




「あれ?なんか間違った??」











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