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孤高の魔道士は自分の不変を望む  作者: 最弱のあああ
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三話 始まり

 


 いつもの、特訓を行いに前とは違う人目のつかない場所へ向かっている。

 毎回同じ場所で魔法を使うと、魔道士連盟に見つかりかねないので特訓場所は毎回変えるのだが、段々面倒くさくなってきた。世界を守っていただけるのはありがたいが、野良の魔道士を保護(建前)を行うのはやめていただきたい。

 不快になる。


 さらに、家でも、兄の勇進に魔力の才能が目覚めたせいで自宅でも魔法が使えなくなるし……


「いっそのこと、魔道士連盟に所属するのも手だけどな。そしたら、堂々と特訓できるけど……


 まぁ、所属したらプライベートも無くなり日夜命がけの戦いになるブラック企業だと言う話を盗み聞いた事があるし、この手は無いよな」


 これからの特訓場所に頭を抱えつつ、目的の廃工場に着く。


 あたりを見回していると、よく知った人が走っているのに気づいた。

「なんで、こんな所にいるんだよ、兄は」


 また何かの事件に巻き込まれたのだろう思いつつ、特訓場所を変更するかを悩む。

「ただ、今の兄は魔道士の才能に目覚めている所だ、このタイミングで巻き込まれている事件というのは少し気になるな。

 もしかしたら、良い特訓相手が居るかもしれないし」


 とりあえず、様子見と言うことで、気配を絶ちながら兄を追跡する。


 少しの間つけていると倉庫の中に入っていき視界に入らないように気をつけながら割れた窓ガラスのあるところから覗き込む。





「聖!!無事か?!」

 兄が、なにかを探しながら大きく叫ぶ


「勇進?!ここよ!」

 水乃木聖が柱に縛られた状態で聞こえた声に反応しこちらも大きく叫び、声の下へ視線を向かわせお互いを視認し合う。


「ははっ!ようやく来たか、こいつが聖剣魔道士の卵であってんだよなぁ!サンダー!」

 ソファーに大きく股を広げて座る大男が隣に立つ長身の男に大声話しかける。


「……ああ、間違えない。こいつが世界に一人しか使えない聖剣魔法の使い手だ」

 サンダーと呼ばれた男は対照的に小声で話す


「お前ら!言われたとうりに誰にも見られずにここまで来たぞ!約束通り今すぐ聖を返せ!!」

 一人だけ座るリーダーっぽい大声をにらみながら大声で言う







 大体の状況は読めてきたな、倉庫内には兄と向かい合う形で人質の水乃木さんとそれを囲うように5人の男達が兄の勇進を見ている。さらに、リーダーっぽい大男とサンダーと呼ばれる長身の男は魔道士のようで、それを隠す気など全く無いようで、威圧的に魔力を放っている。

 どうやら男達は水乃木さんを誘拐して、魔道士連盟にバレないように特別そうな魔法の才能がある兄を呼び出した所みたいだった。


「はーーはっはっはっ!!!素直なガキは嫌いじゃねぇ、だがな、あれは、嘘だ。」

 大男が笑いながら言うと、それに乗じてもう一人の魔道士の男がクスクスと嘲笑ちょうしょうする


「この女は、俺たちの顔を見てるからな。さらに運が良いことに、どうやらこの女も魔道士の才能が有るみてぇだし、じっくりと拷問と洗脳を繰り返して組織の兵隊の一つにする事にしたんだよなぁ!」


 言われて、よく見ると水乃木さんからも魔力が漏れているのが感じ取れた。昼の時には無かったから、誘拐された恐怖で才能が目覚めたとかだろうか?

 しかし、この展開は……あまり好きじゃないな。人がサクッと死ぬのはいいが、拷問だとか洗脳だとか痛々しいのが続いて長く苦しめられる系のジャンルは、……不快になる。


「なっ!い、意味のわからない事を言いやがって!聖を離せ!離さないなら、ぶっ倒してやる!!」


「ぶっはははは!!やれるものなら、やって見やがれ!おい、てめぇら行け。逃げられないように四肢を折ってこい。ただし、絶対に殺すなよ……もしガキが死んだら、てめぇら、どうなるかわかってるだろ?」


「は、はい!お、おい行くぞ」「「お、おう!!」」

 大男に睨まれながら言われて魔道士では無い三人の男達が前にでる。


「痛くしないからよぉ、大人しくその手足差し出しな」


「退け!そしたら、俺は殴らないよ……見た感じ脅されてやらされてるようだし」


「なぐらない?ははっ!そんなんじゃ、すまねぇから従ってんだよ!!」


 一人の男が兄に殴りかかるが、、、兄は最小限の動きで横に回避し、そのまま相手の手首と襟元をつかみ背負い投げを行い、一人をダウンさせる。


「なっっ!てめぇ!よくも、やりやがったなぁ!」

 二人の男が左右から同時にとびかかってくる。

 右からきた男が骨を折るために持っていたパールを上段から振り下ろすのを一歩引いて避けてそこから足払いでこかし、すぐに左からきた男を一人目同様に背負い投げでこけている男に叩きつける。

 兄は三人の男達を素手で全滅させた。


 ……まぁ、兄はモテるし何の特技も無い奴がモテる訳が無いよな。


「次は、お前らの番だ。大人しく聖を返すななら、乱暴な事はしない聖を離せ」


「はーーはっはっはっ!!聖剣魔法の使い手なだけはあるな魔力がつかえなくてもそこそこやるじゃねぇか

 仕方ねぇ俺が直々相手してやろう」

 大男がゆっくりと立ち、前に出る。


「殺さないように気をつけろよ」


「大丈夫だ、腹に一発叩き込めばそれで、終わりよ」

 もう一人の男が忠告するが大男はそれを適当に聞き流す。忠告したほうは、やれやれと言った様子で軽くため息をつく。


「さぁ行くぜ……腹に力こめとけよ」

 10メートル近くあった距離を一歩で詰め、勇進の腹を蹴飛ばした。

 兄の体は後ろの壁までふきとび、ぶつかり止まる


「ゴッはっ!!っっぅぅぅ!?な……に、がはっ!」


「おっと、まだ意識があるとはなぁ、なかなかやるじゃねぇか!」

 倒れている兄の所まで行き頭を踏みつけ、意識を奪う。


「う……そ……ゆ、勇進!!!!!いやぁぁぁぁっぁぁ!!!」


「ちっ、うっせーな……サンダーその女も黙らせてくれるか」


「ふぅ、わかったよ……電気ショック」

 大男に言われた返事をした後、魔法で作った電撃をあびせる。水乃木さんは一瞬苦痛の声を上げるが、体を痙攣させたまま意識を失う。







 さて、俺はどうしようか?見捨てるか助けるか……兄が死ぬなら見捨てたいが、見ていた感じ殺される事は無さそうだし。生きてさえいれば、なあなあで奴らから逃げ出し俺の前に出てきそうな気がする。すごそうな魔法も使えるみたいだし。

 ついでに、見た感じあいつらは良い特訓相手になりそうな感じがする。二対一は未経験なので避けたいけど。


 こうなると、どちらでも良い気がしてきたしどちらがより不快かで決めよう……ふと、大男が言った言葉を思い出す、、、拷問、洗脳、よし、決めた。








 ト゛ッッコ゛オオオォォォォォォォン゛ン゛ン゛


 轟音とともに【魔力超濃縮物体】で作った半透明の巨大な手が壁を突き破り気絶している、兄の勇進と水乃木聖を包み込む。


「な、なんだぁ!まさか、魔道士連盟の襲撃か?!」


「バカな!いくら何でも早すぎる!何のために聖剣魔道士を直接さらわずそいつの女を攫ったと思っている!!」


「だったら誰だってんだよ!!!くっそ!!聖剣の使い手を取られる訳にはいかねぇ!ぶっ殺しに行くぞ!」

 大男の問いに声を荒らげながらサンダーが答える。その答えに大男は、すぐに頭を切り換えこちらへ向かおうとするが、二つの叫びがそれを遮る。


「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁあああああ!!!」

 勇進と水乃木さんがともに叫び声を上げると魔法の才能が半覚醒だった状態から一気に覚醒し魔力が大量に溢れだす。同時に二人を包んでいた、物体がひいて行く。


「ま、まさか!乱入者の狙いは聖剣魔道士の確保ではなく、魔力で強制的に魔法を使えるようにすることか!!!」


 サンダーと呼ばれる男が俺の狙いに気づいたみたいだが、もう遅い。兄も水乃木さんも魔法が使えるようになっている。

 当然だが、初の試みだったため成功するかは半信半疑だったが無事成功したようで、一安心だな。

 最後の仕上げに、魔法を使い声を変えて俺は二人に大声で訴えかけた。

「戦え!!生きたければ新たに得たその力で戦え!」


「くそっ!俺はこいつらをもう一度眠らすから、サンダーは外に居る奴を殺してこい!!」

 大男の指示に了承の返事をした後、サンダーは先ほど壊された壁からでて行く。


「貴様が乱入者だな……何処の組織の物だ?答えろ、言わなければ殺す」

 フードを目深くかぶりマスクで顎から鼻まで隠した人物に怒気を孕んだ声で問いかける。


 言っても殺すつもりだろうに、俺はその言葉を無視し【魔力超濃縮物体】を棘型にして相手に飛ばす。


「それが、答えか……良いだろう私の【電流撃】魔法で殺してやるよ」

 言葉とともに大きくジャンプし棘を回避するそのまま空中から電撃を放ってくる。


 電撃を魔力物体を壁に変え防ぎ、サンダー男が落ちてきた所に再度棘を飛ばすと舌打ちをしながら雷撃で棘を打ち落とす。ただ、すべては落とせ無かったようでかすり傷をいくつかつける事に成功する。


「ちっ!なかなか厄介な魔法を使えるようだな、物体を生み出し自由に変形させる魔法か、だがその程度で勝った気になるなよ!その魔法はもう見切った、、、サンダーボルト!」


 先ほどと同じように魔力物体を障壁型に変え防ごうとするも、電撃がほぼ直角に曲がり壁を避け再度曲がりがら空きの側面へ回り込んでくる。

 なるほど悪くない手だが、即座に体から追加の【魔力超濃縮物体】をだし電撃を防ぐ。


「な、何だと!まだその物体を増やせるのか!!」


 どうやら、さっきまでのが俺が出せる限界だと勘違いされていた様だ。……しかし、今のでこいつの底が知れたな。これなら、二対一でも良かったかもな……サクッと試した事の無い変形型で終らせてしまおう。


「変形・巨人、、、叩き潰せ!!」


 俺はこの日初めて人を殺したが、なぜか動揺せずに淡々と処理した。











「はぁ、はぁ、っぅ!この力はいったい?それにこの剣は何なんだ?……いや、今はそれより……やらなければならない大事な事があるはずだ!!守るために、、、生きるために、、、戦わなければならない!正義の心と愛する者たちの思いを背負って!!」

 勇進の前に一本の剣が浮いていた。一瞬の混乱の後先ほどの声が頭の中で反響する。――生きたければ、戦え――と、そして勇進は剣をとり目前の敵と遭いたいする。


「はーーはっはっはっ!!これが聖剣か、なるほど伝わってくる魔力の圧を感じれば魔道士連盟とぶつかるリスクを負ってまで、手に入れようとする考えにも納得しちまうなぁ!

 歯食いしばって耐えろよ、俺の【金剛棍棒】魔法をな!!」


 大男は魔法を使いキラキラと光るど派手な棍棒を作り出す、棍棒を片手に持ち横から薙ぎ払う様に振るう。

 それを勇進は剣でガードをして、鈍い音を鳴らしながら衝突する。


「ぐぅぅぅ!があ゛あ゛ぁぁぁ!!!力がみなぎってくる!信じられないほどの力が!!俺の魂に呼応して!今なら誰にも負けないと自負できる!魂が溢れ出す!!強き正義の心が巨悪を絶てと!漲る魂が訴えかけてくる!!ぜっったい無敵の聖剣の力を見せてやる!!俺の名は悪を裁く正義の執行人!勇者・ユウシーン!!行くぞぉぉ!!はあぁぁぁぁぁ!!!」

 勇進の剣が相手の棍棒を弾き返す、そのまま剣を上段に持って行き振り下ろす。


「なんつぅパワーだ!力自慢の俺を圧倒してやがる!だがなぁ、それでも俺の勝ちだ!」

 大男は空いている片手にもう一つの棍棒を作り出し、勇進より速く相手の胴体へ打ち込もうとするが……後ろから飛んできた水球によって防がれる。


「なっ、、、、、にぃぃぃぃ!!!」


「……させない!これ以上、私の勇進を傷つけさせない!!」

 勇進と同じく覚醒していた水乃木さんが大男に水球をぶつけ怯ませた。


「こっっのくそアマがぁ!ぶっ殺しでばぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

 大男が言い終わるよりも先に勇進が叩き切りふせた。


「はぁ、はぁ……なんとか悪を倒せた、剣が消えていく?!そうだ!聖!今助けにいくよ!」

 大男が気絶しているのを確かめた後すぐに水乃木の下に向かい縄を解き救出する。


「勇進、ありがとう助けてくれて。勇進は無事?怪我は?」


「それは、こっちの台詞だよ、俺は大丈夫だ。聖は怪我してないか?」


「うん!大丈夫だよ……良かった、勇進が無事で良かった」

 いくつかの言葉を交わした後、喜びをかみしめるように抱き合う。


「……感動のフィナーレは良いが、どっか別の場所に移動してからにしてほしいな、まだ生きてる大男にいくつか質問したいし」

 俺は二人の前に姿をさらけ出す。魔道士連盟がくる前に大男から奴らの組織名とアジトを聞き出すために。


「女の人?さっきの声と同じ!貴方が私たちを助けてくれたんですね!ありがとございます!!」


 水乃木が反応し礼を言ってくる。こいつらを助けるに当たって俺が使える【陰陽反転】魔法で性転換を行っている。これなら、絶対にバレないだろうし。


「助けてくれてありがとう……えっと君の名前は?あっ!俺は勇進で俺の隣に居るのが聖、あとさっきの不思議な力は何なんだ?なんで聖が攫われて俺が呼び出されたんだ?この誘拐犯達は何者なんだ?」


「ちょ、ちょっと勇進!いきなり失礼よ!」

「わかってるけど、でも……」


 恩人に向かっていきなりタメ語でたくさんの質問か、まぁ理解できる行動ではあるが。

 俺はそのまま大男を担いで最後に一言だけ残してその場を去った。



「お勉強がしたいなら、学校の教師にきくんだな」








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