表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤高の魔道士は自分の不変を望む  作者: 最弱のあああ
17/34

十六話 虫と知り合いになる

 


「深影君!君はなんて事をしてくれるんだ!呪詛の魔女に対して私的接触、連盟の情報漏洩に独断専行による被害増加!!」


 被害増加は俺の腕の事を指しているのだろう。

 案の定、情報漏洩も速攻でバレてるし。

 現在、《魔道士連盟私立進正廻高等学校地下支部理事長室》に集められ説教を受けている、主に深影が。


 そしてガミガミ怒っている人が、この高校の副理事長で理事長の息子らしい。

「森薙技君!君もだよ、我関せずと言った態度を取っているが君は保護対象で有り民間人だ、魔道士じゃない、なぜ魔道士連盟から逃げる様なまねをした!!下手したら死んでいたかも知れないのだよ!!」


 おっと、こっちにも矛先が向いてきた。

「申し訳ありません」

 取りまず謝罪、ここは日本だ取りあえず謝っとけば平和になるのだよ。本気の謝罪を一回するのではなく、軽い謝罪を何度もするのがコツだ。


「君という子は……はぁ、で、君が毒華朔君は?」

「……彼女なら覚醒後の興奮状態が冷め部屋に引きこもった」

「そうか……では落ち着いてから話を聞くとしようか

 深影君、明日マ、ごほん、理事長が帰ってきたら君には停職、減給及び降任が言い渡されるだろう……今日は疲れているだろう二人とも休みなさい」

「……はい」

「はい」


 停職減給降任とはまだ中学生なのに大変だな……






 長々と説教を終え理事長室からでると、勇進と水乃木さん灯日さんが居た。


「……わたしはこれで……」

「あ、はい」

 深影が兄達を見て嫌そうな雰囲気を出してそそくさと帰っていく、ただ、その隣に魔力を持った小さな黒い虫が居た。友達だろうか?


「不士!心配したぞ!腕がなくなるまで無茶しやがって!!」

「不士君!なんで、何の相談も無しに危険なまねしたの!?お姉ちゃんが解決するまでじっと出来ないの!?」

「不士君!なんで君は毎回自分の身を危険にさらすのかしら?もっと自分をいたわりなさいよ!」

「すまない不士!!俺が不甲斐ないばかりに腕を無くさせてしまって、俺もっと強くなるからな!」


 三人が一変にまくし立ててくる。


「すみません」

 謝る理由など無いが謝っておく。


「とにかく、生きてて良かった」

 兄が抱きつきながら言う。その後ろで二人が少しうらやましそうに見ていた。

 その後は直ぐに別の任務が有るとかで別れた。


 任務様々だな。





地下支部の借りている部屋に戻ってくる。明日には出て行き自分の家に戻るがな。

しかし、片腕しか無いといろいろと不便だな、腕を切り落とした事を後悔しそうだ。これからの生活が面倒くさいなと心配になるが、、、その心配は杞憂に終わる。


 なぜって……


 寝て起きたら左腕が生えていたからだ。呪いと共に――








「完全に元通りになってるわね」

 検査しにきた麗芽治結香先生がバッサリと言い切る。


「あ、はい」

 この言葉以外出てこなかった。


「なんで元に戻ったのかわ、私にもわからないわ。ただ、我妻あがつま理事長も戻ってきているから聞いてみましょうね」


 我妻?理事長ってそんな名前だったのか。


「理事長は呪いに詳しいのですか?」

「あら、そういえば言ってなかったかしら。我妻理事長はね、五大魔法の使い手の一人で【聖蘇】を使えるのよ」


 強い魔道士だとは思っていたが理事長が聖蘇の使い手だったのか、そう言われると納得する。【聖蘇】はあらゆる災いの怪我、呪い、病気だけでは無く心さえも治すと言われている魔法だ。

 初めて会った時に思った負の感情が無いのも聖蘇の力だと知れば理解出来る。極めれば死者蘇生すら可能だとか言う噂もある程だしな、個人的に最強の五大魔法だと思っているよ。


「それじゃ、我妻理事長に会いに行きましょ」

 麗芽先生の言う通りに理事長に会いに行った。







 コンコン・・・


「どうぞ、入ってください」

「失礼します我妻理事長」

「失礼します」


「あら、治結香先生に森薙技君ね、大体の用件はわかるわ。大変だったみたいね森薙技君」

「そうみたいですね」

 理事長が気さくに声を掛けてくる。なんだか苦手だ、さっさと呪いを解いて帰りたいよ。


「なんで、他人事みたいにいっているのかしら?」

 麗芽先生があきれた声を出す。


「ふふふ、まぁ、いいじゃ有りませんか治結香先生……それで私の元に来たのはその再生している腕の件で合ってます?」


「ええ、そうなんです。私ではどうにもなりそうにならなくて、治せませんかしら」

「見せて貰っても?」


「あ、はい」

 理事長の所まで行き緑の左腕を露出させる。

 すると、理事長が魔法を発動させ緑の腕が淡く光り始める。それを理事長は魔道具らしき眼鏡を掛けてまじまじと見た後、軽く息を吐いてから話し始める。


「ふぅ……ごめんなさいね、これは解けそうにないわ。この呪いは確固たる命を持って生きているの、私の魔法では命を治す、与える、作る事は出来ても傷つける、奪う、消す事は出来ないの。

 この呪いを解くには呪いの意思で別の宿主に移りたいと思うか、呪いを殺せる魔道士を探すしかないわね」


 前言撤回するよ、この五大魔法つっかえね。


「ただ、呪いを抑える事なら出来るわ、失礼するわ。」

 軽く緑に腕を握り、先ほどより強い光をだす。すると腕全体に広がっていた緑の模様が小さなほくろ程度まで小さくなっていた。


 おお!やっぱり五大魔法中最強だな。

「おお、ありがとうございます」

 素直に礼を言う。


「いいえ、これぐらいしか出来なくてごめんなさいね、また何か呪いに変化があれば来てね」

「はい」

「ありがとうございます我妻理事長」


 そのまま、理事長室を退室した所で麗芽先生も‘呪いに詳しい魔道士こちらでも探しておくわ’と言い残して自分の職場、保健室に戻っていった。

 俺も自宅に帰る為に部屋に戻り荷物をまとめようと移動する。




「あーーいたーー、あなたがスミちゃんが言ってる人なの?」


 人ほどのサイズのムカデが目の前に現れる。俺の事を言っているのだろうか?ムカデの知り合いなんていないが。

 ムカデの頭の上には深影についていった黒い虫もいる。この虫から微弱な魔力がムカデに発せられた、おそらく念話か何かで話しかけたのだろう。


「あ、そうだね、クミはクミっていうの、よろしくなの」


「森薙技不士です」

『動じないのな、でかいムカデがあらわれたってのに……私は黒霧雨美よ、私たちは墨の同い年で友達よ、よろしく』


 黒い虫が念話で話しかけてくる。この虫が本体ではないだろうし、虫を扱う魔法との二つ持ちか。


「よろしくです……何か用ですか?」

「ううん、ただ気になったから話してみたかったの」


「そうですか」

『森薙技さんの事は調べさせてもらった。なかなか興味深い生き方してきたんだな

 小学生の頃から柔道やボクシングと言ったものから近接格闘術なんて日常では使わない実践的な武術まで学んでたようだし……ここを抜け出すときも一切痕跡を残さずに脱走したみたいだし、どうしてそこまで鍛えている?』


 なんだか尋問されている気分だ。

「どうしてと言われても……趣味としか言えないですね」


「よくわかんないけど、すごそうなの」

『……紅実を見ても全く恐怖も嫌悪も見せないし……等身大のムカデが常識で有るかのように、不思議だな』


「常識じゃないですよ、ただこれだけでかいと実感湧かないだけです。どちらかというと頭に乗ってる黒い虫のが怖いですね、、、おっと失礼しました」


「あはは、だってさウミちゃん!ウミちゃんのが怖いらしいの」

『むむ、言われてしまったね』

 黒霧の言葉からは怒りの負の感情がかんじられない、それどころかムカデと楽しげに会話している。


 嫌みのつもりだったんだがな。

 大抵の魔法は魔道士が覚醒したときの信条や好みでどんな魔法になるか決まる。

 支配系や操作系とかは好きなのや詳しいものなどが魔法になる、なので大抵の魔道士は魔法を悪く言われるのに不快感を感じるが、この黒霧は自分の魔法の産物である虫を悪く言われたのに全く気にしていない感じがする。


「……黒霧さんは自分の魔法が好きじゃないのですか?」

 直接聞く。


『なぜ、そう思うのだ?』

「なんとなくです」


『よくわかったね、好きどころか嫌いなぐらいだよ。魔法に覚醒した当時は発狂寸前の所までいったよ。魔法の誤発動で虫の視界と繋がるたびに、虫が命令をくださいと言わんばかりに足下でこうべを垂れるたびに叫んだものさ……今はなれたけどね』


「わーすごいの!なんでわかったの!?」

「……なんとなくです」

「じゃあ次はクミの魔法への思いを当てて見て欲しいの」

「いや、知りませんよ」

「別にいいでしょ、当てて欲しいの」


 知らないって言ってんだろ。


『紅実、あんまり無茶ぶりしちゃ駄目だよ』

「ええーウミちゃんだけずるい!」


 ずるいってなんだよ。本当に中学生か?幼稚園児と喋ってる気分になるよ。幼稚園児なら適当にごまかせないかな。


「いいですよ、当てて見せます」

「ほんと!やったー」


「……好きな所もあれば嫌いな所もある、その魔法に助けられた事もあればあともう少しと不便に感じた事もあるそんな所ではないですか」

「すごーいの!当たってるの!!」


『え、それって、バーナム効果……しかも素人も騙せない程荒いし』

「何言ってるのウミちゃん?それよりすごいよ!二人続けて当てたよ!すごいよふじお兄ちゃん!すごいのすごいの!」


 お兄ちゃん??しかし、あれだな。たいしたことしてないのに、すごいすごい言われるのは、あれだな、恥ずかしいな。もういいだろ、逃げよう。


「えっと、それでは、私はこれで失礼するよ」

 来た道を戻ろうとする、遠回りになるが迂回しようとするが、ムカデの滑らかに滑る様に回り込まれる。と言うか、長い胴体が俺を中心にとぐろを巻いて囲まれる。


「もっとお喋りしようよふじお兄ちゃん!」

 回り込みながら、ずずいっとムカデの頭を近づけてくる。顔じゃない、頭だ。


『こら!あんまり困らせない』

「うっ!ごめんなさいふじお兄ちゃん」

 黒霧の一喝で大人しくなるムカデ、頭の上に乗ってるし珍獣使いに見えそうになる。


「気にしないで、それでは私はこれで」

 ムカデの頭を黒い虫を避けながら撫でつつどかして、とぐろの中心から脱出する。

 あれだな、苦手だな、もう二度と会話したくないや。


「……皆、こんな所に居た……あれ……森薙技不士……なんで一緒?」

 帰ろうとした先から深影が現れる。


「あ!スミちゃん!スミちゃんがよく話してたふじお兄ちゃんとお話ししてみたかったの、だから一緒に居るの!」


「……お兄ちゃん??……そう」

『丁度別れる所だけどな』


「…………どんな話」

「聞いてよ!ふじお兄ちゃんがクミ達の考えていることスパッと見抜いたの!」

「……そう」


 当然の様に話をもるな!

 黒霧は頭良さそうだし誤解が生まれる事は無いだろう、とっとと帰ろう。


『紅実、それでは話の内容が伝わらないよ、森薙技さんは私が自分の魔法を嫌いなのを直ぐに見抜いたのさ、すごいものだな』

「……そう」

「それにね、クミの事も怖がらないで撫でてくれたの!」

「……そ……う?」

『幼い頃から多数の体術を学んでいて、何故か痕跡を残さずに移動するすべまで会得しているし興味が湧くね』

「……」


「あとね、あれ?どうしたのスミちゃん」

「……なんでもない……わたし用事あるから……」

「う、うん。また後で遊ぶの」

『……ああ、また後でな』


 深影が二人と別れて来た道を駆け足気味で戻っていった。

 うつむきながら、歩いていた為に前を歩いていた人にぶつかってしまう。


 部屋に戻っていたら後ろから深影がぶつかってきた、こいつムカデたちと話していたんじゃないのか?これは嫉妬や不安の感情か?喧嘩でもしたのだろうか。


「……あ、、、ごめん」

「いえ、気にしてませんよ……喧嘩でもしましたか?」


「!!……ちがう」

「あ、そうですか」


「……ただ……」


「ただ?」

「……」

「……」

「……」

「欲しいものがあるなら、遠慮せずに貰えばいいのでは?」

「!!……えっ?」

「魔道士は高給取りと聞きました、大抵の物は買えるでしょう。友達とおそろいでもいいじゃないですか」


「……二人が……考えを読まれたって言った……でも全然読めてない……」

「見当外れでしたか」

 じゃあ何だろう……これでも人の負の感情が読めるから、何が不満なのかを当てるのは得意なほうなんだがな。

 あれこれ考えるのは俺のがらじゃないな。直接聞こう

「では、何が原因なのですか?」


「……興味ある?」

「まぁ、ほどほどに」


「……そう……まだ秘密……わたし戻る……またね」

「え、あ、はい。またです」


 答えはわからずじまいか……いつの間にか、負の感情も無くなっているし。まぁ、いいか。



 なんだか最近いろんな人と喋っているせいかすごく疲れたや。だが、明日からは気ままな一人暮らしに戻れるがな。あばよ魔道士連盟さん










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ