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孤高の魔道士は自分の不変を望む  作者: 最弱のあああ
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十五話 影武者に成り下がった魔王の戦い

 


「ぐはっぁ!」「そげふ!」「ま、だ、ぐふっ!」

 しぶとく生き残った魔道士に魔力物体で作った剣を刺して止めをさす。


 十人は居た魔道士達は血反吐を吐きながら倒れていき、あたりは血の海と化した。


 はっきり言って弱者の群れで有り、異世界で魔王として君臨していた者がわざわざ出向いて手を下すほどの物たちでは無い。

 だが、殺さなければならない、かつての魔王を支配する絶対たる主の為にこのような雑務であろうと。


 その主から一人だけ生け捕りにしろとのめいを承った。奇跡的に一匹ほど生きている物がいる、もしこの物も殺してしまっていたら危うく主のめいを成し遂げられなくなる所だった。

 その物に視線を向けると、それはただ座ってこちらを観察していた。それは同胞達が虐殺されていくのを一切動じず座っていた。

 殺した魔道士達よりも優れた力を持っている事がわかるが、それでも取るに足らない物だろう。ただ、その事を物が理解出来ているかは別の話だ。


「貴様は生け捕りだ、そこで大人しくしていろ」

 端的に用件だけ伝えてみる。


「くくく、私を生け捕りですか、さすがは呪詛の魔女、大きくでましたね」

 物が喋る。

「ですが君程度では無理ですね。戦いを見させて貰いましたが、さすが呪詛の魔女と魔道士連盟から注意されているだけありますけど、『魔戯耀マギテルの集い』の幹部である私こと、サターンほどじゃないね」


 駄目だな、この物は理解ができてい様だ。主に支配されてより強力になった者との圧倒的な実力差が。

 マギテルの集いの幹部?馬鹿らしい、主の真の強さを知っていれば誰で有ろうとその様な尊大な態度とれはしない。

 仕方が無い、絶対たる主の忠実で一番のしもべが現実を見せよう――





 魔力超濃縮物体を取り出し幾つ物剣に変形させサターンと名乗る物に飛ばす。


「くくく、いいよ、相手してあげるよ【地の軍】」

 サターンは床に手を付けると魔法を使った。すると、コンクリートを突き破って石の手が伸びてき飛ばした剣を弾いていく。

 剣を全て防いぎ、石の手の正体が這い出てくる。それは全身石で出来た成人男性ほどの人形、石のゴーレムだった。その数五体


「くくく、行けゴーレムたちよ!」

 サターンの号令により五体のゴーレムがこちらに突っ込んでくる。


 魔力物体をハンマーとロープに作り替えゴーレムを迎え撃つ。

 ゴーレムのAIは魔道士の力量次第だがこの物程度の実力ならそこまで頭良くは作れないと判断し、ロープを下に落とし、その上を通った瞬間にロープを浮かして足を絡め取る。

 起き上がらない内にハンマーで足を叩き潰して動けない様にしておく。


「その程度で勝つ気では有るまい、全力で来い」


「へー、予想よりなかなかできるんだね、でもその程度で図に乗るなよ【地の軍】・鉄兵」


 今度は鉄のゴーレムが五体、這い出てくる。地中に有る物なら何でもゴーレムに出来るのだろうか?だとしたらダイヤとか宝石のゴーレムを出して欲しいものだ、それを主に渡すのも悪くない。

 先ほどと動揺にロープで転ばせようとするが……


「くく、何度も同じ手が通用すると思うなよ【土操】・突槍」

 サターンが別の魔法を使うと下から土の槍が突き出してロープを切った。


「二つ持ちだったか、変形・鶴嘴つるはし


 石やら土やらを砕いて掘るならツルハシだろう。ツルハシよりも簡単に鉄を砕く方法なら他にも有るが圧倒的な力の差を見せて心を砕くならこれが良い。

 迫り来る鉄のゴーレムをフェイントも技も無しに直線的に純粋な圧倒的な力で粉々に砕く。


「なっ!?」


「遊びはいらん……もう一度言おう、全力で来い」


「ふっ、予想以上にできるね、わかったよ本気で戦ってあげるよ」

 この物さっきから予想はずしまくってるな。


 サターンがやっと立ち、魔法を使う。【地の軍】鉄のゴーレム一体と鉄鎧と剣だけ出して身に付けて、【土躁】で周りに土の槍を多数浮かべる、これは投擲用だろう。

「戦う前に一つだけ聞くが、君もマギテルの集いに入団する気は無いのかい?呪詛の魔女なら直ぐに幹部の座につけるだろう」


「さっさと来い」

「そうかい、おしいね、君の様な優秀な人材を殺すことになるのは。来世があるなら次はもう少し賢く生きるんだね」

「ふっ、物では世界の大きさを知れないな」


「後悔すると良い!マギテルの集いに喧嘩を売った事を!!」


 槍を飛ばしてくる、それを魔力物体で弾いていると槍をおとりにしてサターン本人が背面から仕掛けてくる。いや、サターンもおとりだと察する、サターンの後ろに本命のゴーレムが居た。攻撃を避けてカウンターを仕掛けようとした所でゴーレムを使い仕留めようとの算段なのだろうが、サターンの攻撃をギリギリで避けて後ろから追撃してくるゴーレムを魔力物体の拳で弾く。

 体勢を崩したゴーレムにツルハシで壊そうとしたが、先ほどまでとは明らか違う動きで避けられた。


「はっ!手動操縦なら二倍のパワーを出せるのだよ!【土躁】・牙噛」

 サターンが魔法を唱えると土が盛り上がり牙がずらりと並んだ口の様になり噛み砕こうとしてくる。


「所詮、土だ。変形・槌」

 魔力物体を全て集結させて一つのハンマーを作り、土の牙を砕く。それにより、土埃つちぼこりが舞って視界を塞ぐ。

 物の狙いはわかっている。


「上だろう」

 上から降ってきた魔力が抜かれた元鉄のゴーレムだった落下物をハンマーでサターンに打ち返す。

 魔力が無ければ察知出来ない上で土埃で視界を塞いで潰すつもりだったのだろう。


 なんとかギリギリで打ち返されてきたゴーレムを避けたサターンが思わず舌打ちをする。

「ちっ!なかなか頭も良いみたいだな、だが先ほどから動かない所を見るとスピードには自信が無いと見た!ならスピード勝負と行かせて貰おうか!」


 サターンが走り回り攻撃の機会を狙い始める。

 なにか勘違いしている様だが元魔王が遅い訳がないだろうに、物をいちいち壊すのに動き回る必要が無いだけだ。が、俊敏さでも圧倒しているとわからせるのもいいだろう。

 魔力で足を強化する。魔法を使わずとも‘ある程度’なら魔力だけで身体能力を強化する事ができる、ただ魔王として長年かけて積み上げてきた魔力操作と主より戴ける膨大な魔力量で強化すれば‘ある程度’に留まらない圧倒的な強化を行える。

 今は関係無い事だが主に戦闘の際に魔力で体を大きく強化しない理由を尋ねたら「扱えきれない」とご謙遜なさったので主の忠実な僕であり影武者なので使用を控えていたが今回は良いだろう。


「遅いな」

「なっ!!」

 瞬時にサターンの前まで移動して顔面を蹴飛ばす。


 蹴飛ばしたサターンの後ろに回り込みかかと落としで地にたたき伏せる。

「ぐあぁ!ぐぐぐ、、、な、何なんだ!?この速さは全く見えん!」


 ふらふらしながら立ち上がり、ゆっくりと後ろに後退していく。


「少しは理解できたか?物と呪詛の魔女と呼ばれる者の差を……ならばこれ以上は無駄だろう、生け捕りだ手足を粉々に砕いて大人しくさせよう、変形・九尾の猫鞭」

 九尾と言ったが鞭の数は九本程度ではない、百本は有るだろう。

 余談だが、主に何故九本しかださい無いのか尋ねたら「……扱えきれない」とご謙遜なされた。故に主の影武者であるので使用は控えるべきなのだろうが、自由に戦って良いとのご許可をいただいているので使わせて貰おう。


「は?、、、はぁ??!な、な、な、なんだよそれは!!ま、まて降参する!!大人しく生け捕りにされるから!!」


「はぁ……次はもう少し賢く生きるんだな」

「っ!!、、、この化け物が……」

 その言葉を最後に魔力超濃縮物体で作り上げた百本の鞭が物が死なない程度に徹底的に叩いて砕く。









「あ!居ましたよ!呪詛の魔女です」

 毒華さんが声を上げて指をさす。さした方向を見れば魔女が一人座っていた。あれ、生け捕りは?


 俺が生け捕りされているはずの人物を探していると、毒華さんが小さく悲鳴を上げる。手前に十人近くの無惨に殺された死体と奥に血まみれで倒れている人を見かける。それは気絶しているだけで辛うじて生きていた、あ!こいつか。


「一人、生け捕りにした、それに呪いを解いて貰うといい」


「本当ですか、ありがとうございます」

 魔女に礼を言う、心にも無い言葉だ。自由に戦えと言った、生け捕りにしろとしか言わなかった、だが出来れば喋れる状態で捕まえて欲しかったよ。


「……こいつ……魔戯耀の集いの幹部……」

「?、知っているのですか」


「……最近、この街に現れた……反逆魔道組合の一つ」

 深影がなにか知っている様なので聞いてみたら、魔女と魔王の戦い以降にこの街に進出してきた大規模な組合の幹部で大物らしい。首輪を付けてた49体の魔物もここの鉄砲玉だとか。


「そうですか」

 主従念話で魔王に強さを聞いてみたら、道ばたに落ちてる石と変わらないとの事。あまり、魔王の言葉は当てにならないが参考程度にする。

 正直、呪羅万象顕現縛りで魔法勝負なら短期決戦で俺が長期決戦で魔王が勝つ。肉弾戦なら普通に負ける、両方合わせた模擬戦なら少しばかり魔王が上だ、魔力操作に限って言えば魔王のが格段に上だろう、そう言っても「ご謙遜を」としか言わないのでもう気にしないが。


「ね、ねぇ、不士さん。復讐もしたし呪いを解ける捕虜も捕まえたしもう帰らない?」

 血まみれのこの場所に少し怯えながら聞いてくる。


「そうですね……私は奥で倒れている人を担いできます」

 そう言って死体が流す血だまりを通りかかった時に血から魔力を感じる。


 どうしようか、血が蠢く、これは攻撃だが避けるわけには行かない。魔力を感じれないのに避けるのは不自然過ぎる。魔王に助けて貰うしか無いが、、、逃げられるだろうな。


 血が俺を包み込もうとする寸前で魔王が引っ張り出して助けてくれる。


「不士さん!」

「……!!」


「へーー、呪詛の魔女はそっちを取るんだ」

「マーキュリー様、そっちに構っている暇は有りません。直ぐに撤退を」

「わーかってるよ、サターンを一方的にボコる奴と一対一でやり合う気は無いよ」


 新しく二人の男女が現れる。血を操ったのがマーキュリーと呼ばれる女の方で、男の方は俺にも魔王にも気づかれずに、ここに一瞬で移動してきた何かの魔法の使い手。女のが戦闘力は高いだろうが、男の魔法のが興味が惹かれるな。


「……マーキュリー……魔戯耀の集いの幹部」


「ふーん、やっぱり魔道士連盟には漏れているんだー、幹部の名前は」

「おい、、、人の獲物を横捕ろうとするな……【魔王の粒子線】」

 魔王の周りに黒い球体が無数に浮かび、それが一斉に掃射される。


「わーーすごーーい!ほら早くしないと死んじゃうよ移馬田君」

「わ、わかってます【転移】!!」

「魔女さん、まーーたねーー」


 魔王が放ったビームは一歩間に合わず、血まみれで倒れている男サターンを連れて何処かに転移してしまう。俺を助けなければ間に合っただろうが、まぁ仕方ないな。

 魔王に念話で俺のミスで有ることを伝えて、別の頼み事をする。


「……逃げられた……どうすれば」

「不士さん!怪我とかしませんでしたか」

「ええ、大丈夫ですよ」

「よかったです……あ、呪いが……」

 深影が俺以上にショックを受けているきがする、呪いが解けないからか幹部を逃がしたからかは知らんが。毒華さんが脳天気に心配してくるが緑の腕を見て大丈夫じゃない事に気づく。


「……どうしよう……呪い解けない」

「心配しなくても、その内なんとかなりますよ」


「はぁ……腕を見せろ、助けてやる」

「え!?」

「……え?」

「えっ、あ、はい」

 魔王の言葉に真っ先に毒華さんが驚き続いて深影が驚いたので、横に習い驚いたふりをしてから腕を差し出す。


 そして、魔王は迷わずに緑色の左腕を肩から切り落とした。


「ぐう!!っぅぅぅぅぅ!!」

 陸道に刺されたり、自分で切り落としたりしているから我慢出来るが、痛い物は痛い。


「不士さん!す、直ぐに止血します!!」

 毒華さんが駆け寄り応急処置をし始める。医者でも目指しているのだろうか、応急処置が的確で素早い、それともただのガリ勉さんか……どうでも良いか。


「……魔女……何を……する」

「助けただけだ、この呪いの腕は貰っていく」

 深影は顔も見えないし口数も少ないからわかりにくいがかなり怒っている感じがする、それに全く動じずに腕を持って去って行く。


 魔王の仕事は終わりだしな、適当にあの呪いの腕も処分するように頼んで有る

 腕一本はかなりもったいないが仕方ないだろう、魔女の姿なら【超自己再生】で幾らでもはやせるし。


「……ごめん……腕……」

 深影が謝ってくる。


 本当に責任感強いな、大人になれば上手い手のぬき方覚えるのだろうが、今は勉強中か。


「はぁ、はぁ、ふっ、切ったのは魔女であって深影さんではないですよ。……早く、上手いサボり方を覚えてください」

 残った右腕で頭をなでて誤魔化す。なんだか面倒くさくなってきた。

 謝られるのってどんな理由だろうと良い気分しないんだよな。


「それより、帰りましょう」

「……うん」

「はい!」




 左利きなんだよなーーもったいなかったかなーー

 

 俺も大概脳天気に考えながら学校への帰路につく――










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