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孤高の魔道士は自分の不変を望む  作者: 最弱のあああ
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十四話 毒華朔の仇討ち

 


 せいぜいサンドバッグとして頑張って頂こうか。と言っても、今回は魔王と成り変わるつもりは無いがな。今回はいつもと違って、腕に付いている呪いで今回限りの特訓をするつもりだ。

 そう思っていると、こちらに向かってくる二つの魔力を感じた。


 その魔力からは強い恐怖と焦りの感情が読み取れる。これは、まさか魔王から逃げてきた感じか?丁度良いな相手の所まで走るのが面倒だったし。


「……二人来る」

 深影が短く後ろに居る俺達に注意する。






「はぁ、はぁ、クソが!なんで呪詛の魔女が攻めてくんだよ!」


「でも、幸運さ、捜し物が向こうから来てくれたのだからね。さぁ、前を見な!」

「全くだ!やっと見つけたぜクソ盗っ人が!」


 二人に男女の魔道士が俺達の前に現れる、男が愚痴ると女がいさめ目の前の事に集中させて男が呪いを持つ俺を真っ直ぐに睨んできた。

 それと、男を見た途端に毒華さんの顔つきが変わる、そこからは深い憎悪の感情が見えた……


「おい、、、見ろよ、あれ呪いが適合してねぇか?」

 緑色になった左腕を見た男が顔を一変させ驚きをあらわにする。


「おや、本当だねぇ、鴨が葱を背負ってきた気分だよ、うちのモンで適合した者は居なかったからね。ふふふ、あのガキの腕持ち帰れば魔女だって怖くないさ!」

 女が卑しい笑みを見せながら舌なめずりをする。


 二人はこっちをそっちのけで会話する、どうやら奴等にとってこの呪いは強力な武器だが使い手がいなく持て余していたみたいな様子、この呪いさえあれば魔女だって倒せる気で居るらしい。

 会話している間に深影が魔力を抑えながら裏に回り矢を撃つ。


「ふふふ、甘いねガキ!その程度見破れない程愚かじゃ無いねぇ!!【火砲撃】」


 迫る矢に大砲の弾ほどの大きさの火球をぶつけて灰にする、火球はそのまま深影まで迫るが影に潜り回避する。更に追撃の砲撃を撃ち深影を退かせる。


「……まずい……」

 深影が焦りの声を上げるがもう遅いだろう。

「あっちのガキの魔道士はウチが殺る、そっちは任せるよ!!」


 深影と引き離され分断される。こちらには毒華さんの仇だろう男と俺と毒華さんが残された。


「くっはっはははは!覚醒したばかりのザコと魔力すら無いザコとはいいじゃねぇか!この前殺した夫婦娘同様に一方的な蹂躙の始まりだな!はっはははは!!」

 男が品性のかけらも感じられない無い下劣な声で笑う。


「咲の父さん母さんの仇!笑うだけで不快になる!鳴いて!!」


 毒華さんの鳴いての言葉と共に絶叫が響く、、、が男は少しだけ怯むとすぐに体勢を立て直して毒華さんに飛びかかる。


「くははは!!音ならすだけの魔法なんて効かねぇよ!【空断刃】」

 腕に透明の刃が作られる、それで切り殺そうとするので、がら空きの横から跳び蹴りをかます。


「ぐっ!、、、ザコが調子に乗りやがって!てめぇから殺してやろうか!!」

「知能が足りてないですね……貴方が殺される側なのですよ?」


「てめぇ!!ぶっっ殺す!」


「不快な呪い、、、使ってあげますよ……【血精吸呪けっせいきゅうじゅ】」

 ドクンと血を吸われる。


 緑の拳で男の空断刃を受け止める。空いている右腕で男の顔面を殴りつける。


「ぐはっ!!て、てめぇ~それ使いこなしてやがんのかぁ!」

 魔力で何の強化もされていない腕で殴ったため口の中を少し切るぐらいのダメージしか与えられてないが、大きく動揺させる。


 血精吸呪、これは魔力の代わりに血と精神で使える魔法であり呪いである。この魔法を使えば呪いに侵食され緑色になった体の部分を大きく強化する事が出来るが、血を吸われ体を痛めつけてしまう事になる。なお、緑の部分が体全体に広がった状態で魔法を使えば一回で3リットル程持って行かれ失血死となる。

 さらに、一度使えば魔法を使わなくても常時、魂と微量の血液を吸われ続け寿命を縮めると共に強いストレスを感じ続ける事になる。ただ、再度この魔法を使えば一時的にストレスから解放される。故に高い依存性も有しており、この魔法の所有者は総じて魔法の乱用により、失血死を迎えている。


「私だけ見ていたら痛い目会いますよ」

「あぁ?クソがなめや――」

「もっと大きく鳴いて!!」

 男の耳元で絶叫が鳴る。


「がああぁぁぁぁ!!耳がぁ!クソがぁぁ何しやがったぁ!」


「許さない!絶対に!【狂花繚乱】」

 魔法の発動と共に毒華さんの周りに様々な花が咲き思い思いの狂気を奏でる。


 うすうす気づいていたが、毒華さんの魔法は音の衝撃ではなく狂気を咲かせる魔法だった。

 男は悲鳴を上げ続ける、このままなら花が散る頃には精神が死ぬだろうが……


「く゛そ゛か゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

 男が叫びながら毒華さんに向かっていく。


 さっき言ったのに、、、一人だけ見てたら痛い目会いますよってな。

 今度は真後ろから緑の左腕で頭を掴み地面に叩きつける。


 頭が割れ血が流れる。まだ生きている様で呻き声を上げる。そこに毒華さんが近づいてくる、動けないように頭を抑えたまま様子を見てみる。


「父さん母さん、ごめんなさい。私が弱かったばかりに……咲、ごめんね。守ってあげられなくて、咲をおいて逃げてしまって、もう逃げないから、ちゃんと仇討つよ、、、【狂花繚乱】・首締め花」


 一輪の花が咲き男の首を絞め始める、男は苦痛の声を出しながら窒息死した。


 死んだのを確認してから立って毒華さんに目をやると、泣いていた。仇を取って万々歳とはいかなかったらしい。

 そのまま胸に寄りかかってきたのでしばらく放置しておく、血を吸われたから休みたかったし。血精吸呪は駄目だな、ハイリスクローリターン過ぎる。予定通りなんとかして解かないとな。


 そういえば、深影は無事だろうか?











「【火砲撃】・榴弾」

 女の魔道士から小さな火の玉がバラまかれ、幾つかが深影をかすめる。


「ふふふふ、お一人なのねぇ!何時もはザコがワラワラ出てきて逃げるしか無いけど、一対一なら魔道士連盟もこの程度なのさぁ!」


「……」

「ふふ、情けなくて声も出せないかしらぁ!!さいっこ~うの気分だわぁ!【火砲撃】・榴弾」


 榴弾が撃たれ広範囲に火の玉がバラまかれる。

 この攻撃のせいで不用意に近づけば一撃で蜂の巣にされるために近づけない、遠距離に使える弓矢も砲弾の前では無力だ。

 かすめるだけで勝てるが不意打ちに失敗してしまい正面から戦う事になると非常に弱い魔法になってしまう。おかげでこちらは最悪の気分になる。

 森薙技不士が心配だ、近くに居るのは覚醒したばかりの魔道士だけでかなり危険な状況になっているだろう。油断した、またわたしのせいで彼を傷つけてしまう。


「……【影景侵食】」

 二つの石に影を付着させ、女に投げつける。


「無駄なのさぁ!!」

 女の砲撃で影ごと石が消され、砲撃は何事も無かったかのごとくこちらに向かってくる。それを、影に潜り避けるが直ぐに次の榴弾が発射される。影をギリギリまで小さくして被害を抑える。


 影に食われて影の中に潜る技には弱点があり、どうしても出入り口が残ってしまうこと。そこを通って攻撃が入ってきてしまう。それが相手自身だったり武器ならそのまま侵食すれば良いが、砲撃だとこちらに危険が増えるだけになってしまう。

 現状打つ手が無いが焦らずにチャンスを待つ。


「ふふふふふふ!さいっこ~~うぅぅぅ!正義だ秩序だのぬかす魔道士連盟のザコ共を一度はこうやっていじめたかったのよねぇ、じわじわいたぶってやるよぉ!」


「……口が減らないババア……魔女に集団で挑んで涙目敗走してたのによく言う……滑稽こっけい


「あ゛ぁ?ザコが、虎の威を借りてイキんなぁ……ウチが一方的にボコってんのがわかんねぇのかぁ?」

「……わたしは急いでる……何の手も打たずに戦わない」


「はぁ?――ドザザァァァ――なっ!?」

 突如として足下の地面がへこみ下に落ちる。落ちた先は影が隙間無く付着しており、落ちた女を侵食していく。


「てめぇ!!何しやがったぁ!」

 女の怒号が穴の下から聞こえる。


「……わたしの魔法はあらゆる物を侵食し喰らう魔法……ただ……貴方の地面を喰った……雑魚は貴方」

 深影が言い終わると同時に影が女の体を喰らい消化していき、女が悲鳴を上げ死に絶える。


「……早く戻らないと……あれ?」

 森薙技不士が居るであろう方を見ると向こうから当の本人が走ってきた。








「無事でしたか?」


「…………うん……君も無事?」

「怪我無く倒しましたよ」


「…………そう」

「私たちが戦った男は不運にも死んでしまいましたがそちらは捕らえられましたか?」


「……うん……え?……あ」


 なんだか生返事の様だが、捕らえられたか聞くと殺したとの事。仕方が無いので魔王の魔法の【主従念話】で魔王に一人生け捕りにするように頼んでおく。


「……なんで無事?」


 深影からよくわからない質問が来る……これは、死んで欲しかったといっている様に聞こえる、そう言うタイプの人間では無かいが。いや、もしかしたら本当にそうかもしれないが。


「なっ、なんですか!?その言い方は!」

 毒華さんが案の定勘違いして声を荒げ、俺を守るように前に出る。魔法を扱える様になったからか強気だ。


「……?……!、違う、うう……信じて」


 混乱しているようで説明が出来てない、それでは誤解はそのままだろう。とっとと魔女と合流して呪いを解きたいので、二人を落ち着かせて誤解を解き、音を出すだけの魔法で勝ったことが信じられないであろう深影にどうやって倒したのかを説明する。倒した説明と言っても魔法の説明するだけだが。


「……そう……【狂花繚乱】【血精吸呪】……強い魔法」

「そうですね、危険の大きい魔法ですし、早く彼らの住処に行って解きに行きましょう」

「はい、行きましょう不士さん!」


 せかすと、毒華さんが笑顔で追従してくれる。長々と泣いたおかげでか少しは前を見れるようになったのかもしれない。

 ふと、思ったが魔法に覚醒すると大なり小なり興奮状態になり本能のままに行動してしまいがちになるが毒華さんはどうなのだろうか?三日も経っているが長い人で一週間続いた記録があるし、家族の仇とは言え簡単に人を殺めている。もしかしたら今も興奮状態で本当に辛くなるのはこれからかもしれないな。


「どうしましたか、不士さん?そんなに見られるとてれちゃいます」

「え?、いや、何でも無いです」

 どうやら、毒華さんの顔を見続けてしまったらしい。のんきなもんだ、これから興奮状態が解けたら一気に辛くなるだろうに。


「……何してる……早く行く」

 なんだかとても不快そうに深影が話す。せかしといて待たしたら不機嫌にもなるだろうと思い、軽く謝ってから魔女の下へ向かった。






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