第2話
次の日、俺とメイネは手を繋いで登校した。んー、これになんの意味があるか知らないが、メイネが「しようよー」と言ってきたので仕方ない。
俺たちは学校に到着した。手を繋いで登校しているところを見た他の生徒はすぐさまウワサし始めた。教室に着き、用意をしていると、
「へん!羨ましくなんかないんだい!」
といたずらっ子が言い放って席に戻った。何がしたいんだろう。
授業は五時間目までいつも通りだった(簡単すぎた)。しかし六時間目がちょっと特殊だった。それは固有能力の発現の授業。
「まず固有能力について説明する。これは能力とは違い、進化する。まだわからないと思うが能力は分岐するんだ。進化ではない。固有能力はその人が生まれて持つ『運命による役目』みたいなもんだ」
『運命による役目』か、その場合だと俺は能力の「勇者」が固有能力になるのかもな。
【能力移行、「勇者」を能力から固有能力へ】
進化しやがったよ。それだと一つ疑問が残るな。俺がこの授業を受ける意味がないんだが、
「そんなわけで一人ずつ先生の前にこい。固有能力の発現の手順をするから」
最初の人が前に出ると先生が背中に手を置き、トン、とした。するとその人はフラッとなった。立ちくらみがしたみたいに。何をしたんだ?
俺は「魔力操作」を目に集中させ、次の人に先生が何をやっているか見る(ちなみに俺は魔力操作を宣言なしで発動できるようになった)。すると先生は魔力を手に集中させ、そして放出した。一点に集中して放出されている。そしてそれを受けた人の中のある場所が開いている。魔力源かな?そこが滅茶苦茶開いている。
そこからは推測だが、これ多分俺でもできるわ。そう思い、手に魔力を集中させ、俺の魔力源の場所に向かって放出させた。ぐらっと視界が揺れる。あっ、これヤバイかもな。先生が「大丈夫か!?」と叫んでるのが聞こえる。しかし段々と遠退いていく、保健室行きだなこりゃ。俺は気を失っていった。しかし、そんな中、ある声が聞こえた。
【固有能力発現、「神に近き者」】
起きるとそこはベッドの上だった。保健室だな。外で誰か喋ってるな。この声は先生と保健の先生だな。俺は上履きを履いて先生のもとへと向かった。
「ヤアル君起きたのか」
そう言う先生の顔はやつれている。本気で心配してくれたんだな。
「先生、勝手な行動をしてしまい、大変ご迷惑をおかけしました」
「いや、ちゃんと見てなかった俺が悪い」
「それで?ヤアル君は何をしようとしたのかな?」
保健の先生、仕事が増えてイライラしていやがる。
「はい、俺は先生が固有能力の手順を他の生徒にしているところを見ていて、僕にもできると思い、実行に移したまでです」
「それで?発現したのか?」
こうなった先生は面倒くさいだけだからな。
「はい、気を失っているときに発現しました」
「はっ、そんな簡単に発現して良いものか」
「では使います。固有能力、「神に近き者」」
先生達が呆然としている。俺もわかるが威圧感がすごくなった。しかしどういう能力なんだろう。これは実験する必要があるな。
「おい、どういうことだ?ヤアルお前、」
「先生のやり方をマネただけです。すごいのは先生で、この固有能力はぼくの才能です。何か他に言うことがおありですか?」
ふるふると首を振る先生たちを見て俺は「では、教室に戻らせていただきます」と言い保健室をあとにした。っと、解除しないと。
「固有能力、「神に近き者」解除」
ふう、これで普通に教室に戻れる。そう思ったとき、
「ねぇねぇ、これ読んで」
と後ろから声がした。…気配が感じれなかった。後ろを振り返ると俺よりちょっと小さいぐらいの女の子が手に手紙を持っている。「ありがとう」と言い手紙をもらうと一目散に逃げた。なんなんだろうと内容を読むと、
〔放課後、一時間ぐらいたったら校舎裏に来てください。〕
とある。ラブレターかな?それじゃ今逃げられたのは照れ隠しか。どうでも良いがとりあえず教室に戻らないとな。そう思い教室に戻る。そこにはみんながテンションMAXで騒ぎまくっていた。制止しようとする生徒がいたが意味がない。
「ヤアル、大丈夫だった?」
「ああ、問題なッ!?」
俺の教室にさっき手紙を渡してきた女の子がいた。それをよく見ると白い魔力に黒い魔力、両方見える。先生は気付いているんだろうか。まあいい、とりあえず席に座る。すると先生が「静かにしろ!」と怒鳴る。その一言でみんながシーンとなり、席に座り始めた。
「固有能力は本人の意志に関係なく発動される場合が多い!自分の能力を理解し、ちゃんと使うこと!以上!さようなら!」
「さ、さようなら」
そう言うと先生は走って教室を出ていった。何があるんだろうな。そう思わせるような顔だった。
「ねーねーヤアル、一緒に帰ろ」
「わかった」
先生は時間厳守だから、終わった時間が時間割通り4時半だった。そして用意し、メイネと家に帰って30分。20分でごろごろして、5分で用意を済ます。そして5分で学校に走って行った。そして校舎裏に行くと女の子がいた。いるのは普通か、
「それでなんだい?」
「手紙はちゃんと読んだ?」
「ん?ここに来いと言うこと以外には何かあったか?」
「ちゃんと読んでよ!もう!ここに来るとき誰も呼んでないよね?」
「誰も呼んでないが?」
「そう、ならよかった。これで安心して戦える」
そう言うと彼女は姿を変えた。いつぞやに見た悪魔と同じようなものに。
「なるほどな、俺を殺しに来たのか?」
「違う、仲間の敵をとりにきた!能力発動!悪魔の杖!」
そう叫ぶと彼女の手に杖が出てきた。その杖を使ってそのまま闇の魔術を使ってきた。やらないといけないか。
「こっちもいくぞ?」
「望むところだ!」
「能力発動、全属性魔法反射+魔力操作+絶対的な力!」
俺は武器を使わず、素手で戦った。相手は魔術を使ってくるが、全属性魔法反射のお陰で反射できる。そして絶対的な力で間合いを詰める、そうすると俺は一瞬で間合いをなくした。
「ッ?!」
「もうやめてくれ、俺は弱者をいたぶったりしない。俺は家族が殺されそうだったからあいつを殺したんだ。正当防衛だ」
「うるさい!うるさい!うるさい!気のせいだ!お前の…気の…せい」
彼女は泣き崩れ始めた。はあ、しゃーない、泣き止むまで付き合うか。俺はずっと、人の姿に戻らない彼女をそばでずっとなぐさめた。
独り言を聞いていると彼女は半人半魔らしい。そのせいで悪魔族のやつらから迫害されていたらしい。そして人間の世界まで逃げてきたらしいが一緒に来た親が人に殺されてしまったらしい。人かぁ、こんなとこで人の悪いとこを聞くとはな。余計憎くなってきたよ。
俺は泣き止むまで本当に付き合った。一時間ぐらい。そして泣き止むと、
「ごめんなさいね、八つ当たりしちゃった」
「大丈夫だよ。俺もさ、人を憎んでるんだよね」
「そうなの?」
「そうだよ。あと君、綺麗だね」
ボシュ!と彼女の顔が赤くなるのがわかった。
さて、
「送るよ、どこまで?」
「いいよ別に、気持ちだけで嬉しいよ」
「そうか、暗いんだから気をつけて帰れよ?」
「わかった。じゃあね」
そう言うと俺は帰った。やっべ、暗すぎる。こりゃ怒られるパターンかな?俺はそう思いながら全速力で家まで走った。
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行っちゃった。いい人だったなあ。ヤアル君。同じ人を憎む者としても、人としてもかっこいいな。はっ!いけない、いけない。ヤアル君にはメイネちゃんって言う彼女がいるんだから。
「それでも、好きになっちゃいけないかな」
きっと、好きになるぐらい許してくれるだろう。
さて、私も帰る………嘘、体が動かない。
「ようやくあのクソヤアルが行った。これでお前は俺のもんだ。悪魔野郎」
嘘でしょ誰かいたの?!ヤアル君が連れてくるとは考えにくい。まさか学校に人がいたの?!嫌よ!せっかくお友だちができると思ったのに!いやだよぉ、死にたくないよぉ。ヤアル君…助けて。