第1話
次の日、起きるとメイネはすっかり元気になっていた。元気150%ぐらいで。
「おはよーヤアル!学校の準備は済ませた?」
「ん、今からやる」
そう言って俺は今日の教材を鞄に詰める(つっても始業式と魔術訓練だけなので入れるものは少ない)。さて、用意も終わったし朝飯食うか。俺は食卓へと向かった。朝御飯はパンとミルクだった。席について食べるととても美味しかった。
「クヒメさん!とっても美味しいです!」
「うふふ、嬉しいわ。美味しいって言ってもらえて」
そんな会話をしているのを横で聞きながら俺は食べ終わった。
「ごちそうさまでした」
「何?それ」
「俺の前世で人がご飯を食べ終わった時にいっていた挨拶だ。確か、食べ物に感謝するみたいな意味だったと思う」
「へぇーじゃあ!ごちそうさまでした!」
そう言ってメイネは手を合わせる。普通言う前に合わせるんだが、そんなことはどうでも良いか。感謝できれば良いもんな。
「さてクヒメさん!いってきます!」
「いってらっしゃーい」
そうして、俺とメイネは学校に向かった。
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始業式、これほど憂鬱な時間はない。校長だかなんだかの話を延々と聞かされる。これは軽い拷問かな?先生達の魔術で眠れなくなってるからきついことのこの上無い。まあそろそろ終わりそうだから良いか。
「えーなので、皆さんも新学年になって気を抜かないよう気を付けましょう」
ふう、やっと終わった。なんなんだよほんと。一時間位喋ってんじゃねぇか。どんだけネタあんだよ。でもこれで教室に戻れるから良いか。俺の教室は6-A、天才が集まるクラス(らしい)
「んじゃ、魔術訓練用スーツに着替えて訓練所に来い」
そう言って先生は教室を出ていった。そうして教室内は男子と女子のグループに別れ、着替え始めた。俺は着替えの時間が一番嫌いだ。なんでって?そりゃぁ
「食らえ!あそこにダイレクトアタック!」
こんな感じでいたずらっ子がちょっかいをかけてくるからだ。まあそうやって伸ばしてきた手を俺が掴んでひねるんだけどな。「痛い痛い痛い痛いぃ!」と叫んでいる。このくらいにするか。俺は手を離し、訓練所に向かう。覚えてろよ!と叫んでいるが聞こえないふりをしよう。途中、いい木の枝があったので拾った。理由はまあ、察してくれ。訓練所に来るのは俺が一番だった。寝るか。始業式のせいで滅茶苦茶眠い。訓練が始まるぐらいになったら誰か起こすだろ。そう思った俺はすぐさま寝た。
――――――――――――――――――
「ヤアル!ヤアル!」
「んあ、なんだ?誰だ?」
「私だよ!メイネだよ!それよりいつまで寝てんの?もう訓練時間半分きったよ?」
どうやら本当のようだ。周りを見るとみんな魔術を使っている。
「どうだヤアル、俺は下級魔術火炎を使えるようになったぞ」
そう威張ってくるのはさっきいたずらしようとしていたやつだ。あいつ馬鹿なのに才能だけはあるんだよな。
「食らえ!火炎」
と、俺に向かって炎の塊を投げてくる。きゃあ!とメイネが叫ぶ。めんどくさいがやるか、俺は拾った木の枝に魔力操作をかけ、投げられた魔術を切った。
「ずるいぞ!道具使うなんて!」
「お前だって魔術使ってんじゃねぇか、お互い様だ」
「くそ!なら、これならどうだ!」
そう言って火炎とか言う魔術を周りに発動させた。こいつ本当に才能はあるんだよな。これで頭よかったらなぁ。友人になれたかもしれんのに。はあ、なんでったって魔術をまっすぐぶっぱなしてくんだよ。頭使え頭ぁ。そう思いながら俺は向かってくる魔術をはね返したり、弾いたりしている。
【能力発現、全属性魔術反射】
おっ、新しい能力か。なんだって?全属性魔術反射?んじゃあやってみるか。
「能力発動、全属性魔術反射」
俺は木の枝で跳ね返すのをやめ、発動させた。すると魔術の玉がなにもしなくてもあいつのもとへ帰っていく。
「はあ?!チートだろそれ!」
「しるか、お前が使えないのがいけないんだろうが」
しかし、あいつは跳ね返した魔術の玉を待機させていた魔術の玉で相殺させていった。本当に馬鹿なのが惜しい。
「お前ら、これ、」
俺らのやっていることを見た先生が呆然としている。そうして俺の方を見ると更に驚いた。そして俺の目の前に走ってきて、
「おま、いやヤアル、ちょっとこっちに来い」
「先生危ないです」
「先生もろともやっちゃえ!」
「先生の心配してくれてありがとう。でもね先生ね」
そう言って魔術の玉の向かってくる方向に手を伸ばし、
「このぐらいじゃやられないよ」
すると向かって来ていた魔術の玉が一瞬で消えた。
「おーいちょっとの間自習しとけー、魔術発動 隔離された空間」
そう唱えると俺と先生の空間に結界が張られた。
「この空間内では外の攻撃は上位魔法を使わないと通らないんでね。そして会話も外に聞こえない。ほぼほぼ完全に隔離された空間ってことだね。さてヤアル君、君さっき能力使ってたよね?」
「………」
俺がどうしようか悩んでいると
「もしかして、能力が何かわかってない?」
「わかっています。人が戦闘をする際に使う技術、『魔力』『能力』『白力』の内のひとつであり、魔力や白力とは違い、発現する力でしょう?僕はさっきそれを使っていました」
「わかってるよな、君はいくつ能力を持っているんだい?」
「魔力操作と全属性魔法反射の2つです」
「やっぱりか、おかしいと思ったんだ。普通、木の枝で魔術を返せるわけ無いもんな。能力使ってるよなぁ。
んー、よし、俺の魔術をお前の能力で返すことはできるか?」
「は、はぁ、いいですよ」
「よしわかった、んじゃあ上位魔術発動紅蓮炎」
「能力発動、全属性魔法反射」
先生の前にとても大きな炎が発生した。そしてそのまま俺にぶつけてきた。
「くっ!」
くそ、空気中の魔力の揺れが激しい!それに気付いたやつは俺の方を見ている。くそ!返しきれねぇ。熱い熱い熱い!そうだ!跳ね返すのと同じ要領で返しきれねぇ魔術を魔力にして吸収すれば!俺はそれをすぐさま実行に移した。すると、
【能力発現、全属性魔術吸収】
よし!新しい能力が発現した!それを今すぐ使って、
「能力発動、全属性魔法吸収。能力、全属性魔法反射解除!」
すると、先生の魔術が吸収され、消えていった。
「ごめんごめんちょっと本気でやり過ぎた」
全くだ。強すぎんだろあれ。
「おっと、そろそろ時間だね。魔術、隔離された空間解除。それじゃあみんなー、訓練を終わってー」そう言うと皆はすぐに魔術を解除し、こっちへ向かっていってきた。
「今日はこれで終わり。また明日ね」
「はーい」
生徒は全員教室に戻っていった。俺は教室に一番に戻り、さっさと着替えて帰る用意をした。すると、
「ヤアル君ちょっと」
なんだろう、何かあるのかな。そう思いながら呼ばれる方へ行くと
「ヤアル君、ずっと君が好きでした。私と付き合ってください」
なんだ告白か、と思い胸を撫で下ろした。
「残念だけど君とは付き合えない」
そう言うと彼女はしくしく泣きながら帰っていった。はあ、めんどいんだよなぁこれの後。良いか、別に。さて、メイネを待つとしよう。
「ごめん、ちょっと遅れた。」
「いいぞ全然」
そうやって俺達は下校していた。そんなとき、
「凄いよねヤアルは、女子からめちゃくちゃモテモテじゃん。あんな内気な子にも告白されるなんて」
…見られていたのか。はぁ、面倒なことになる。
「ヤアルはなんで付き合わないの?」
「何でだろうな」
「誰かと付き合うなら私と付き合ってほしいんだけどなぁ」
「いいぞ?」
「ふぇ?」
珍しいな、メイネがそんな声出すなんて
「へ?今なんて?」
「だから、お前とだったら付き合って良いぞって」
「い、良いの?」
「良いぞって何回言うんだよ」
「やっっったー!!!」
そう言ってメイネは思いっきりジャンプした。よほど嬉しかったんだろうな。俺達は(メイネは)会話がとても弾みながら、帰路についた。なので俺は後ろから誰かが見ているのを気付いていたが、無視して帰った。
学校編、始まります。