第3話
「おい、おい、おいおぬし!」
「うにぁ?」
「そこの勇者よ!なぜ転生したことを喋った!」
「なんかいけなかったか?」
「いかんよ!それは喋っちゃいけないことなのだ!」
「そうか、それはすまない。しかし、俺の父と母は秘密は絶対守る。メイネには俺がしっかり言い聞かす。それでいいだろ?」
「ウーン、これ以上この事を知る人を増やさないと誓うなら許そう」
「ありがとござまーす。それじゃ、戻るわ」
「ああ、わかった」
そう言うと蚊は消えた。
「ばれちゃいかんのだよ。この人類の滅亡の未来は、我々の失態なのだから」
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ふあああ、欠伸をしながら起きる。
「おはようヤアル」
「ああメイネ、おはよう」
メイネはうちで引き取ることとなった。まあ、そらそうだろうな。しかし、メイネは昨日から顔色が優れない。そういうのになられると、調子狂うんだけどな。
「メイネ、すまないが昨日はなしたことは誰にも言うなよ?」
「話した、ことって?」
「俺が転生者だってことだよ」
「うん、わかったよ」
そう言ってメイネはどこかへ行った。さて、俺は父と母の所へ行くか。
「おおヤアル、おはよう」
「おはよう父さん。母さんも」
「うん、おはよう」
「さて、父さん、母さん、さっそくで申し訳無いがひとつ約束をしてほしい。この事を他言しないでくれ」
「それぐらいならいいが、ヤアル、昨日母さんと父さんで話し合ってな」
「うん」
「お前、旅に出るんだったら12歳まで待て。人類を救うと言う役目を果たすのは、もう少し家族と一緒に過ごしてからにしてくれ。お前が転生者であろうと俺達の家族ということにはかわりないからな」
「わかった」
「ほっ、良かったぁ。父さんはこんな堅苦しいしゃべり方は好きじゃないんだ」
「ねぇねぇヤアル、前世の話をしてくれない?」
「もちろん!」
そう言うと俺はウキウキしながら俺の前世のことを喋った。友達や親のこともそしてどれだけ人を憎んでいたかも。
「そうか」
「ああ、でもわかったよ。俺は勇者であるが人を憎んでいる。しかし、それ以上に弱いやつが強いやつに虐げられたり、暴力を振るわれたりする方がよっぽど嫌いなんだ。だから俺は魔族に侵略されてる人を、人類を救うんだ」
そう言うと父と母は沈黙した。その沈黙を破ったのは、メイネだった。メイネが帰ってきて、ただいまと言う。俺はすぐさまメイネのもとに行き、
「すまない!俺が…俺が未熟だからお前の両親をッ!」
そう叫び俺は頭を下げた。メイネは驚いていた。しかし、
「もう良いよ、頭をあげて?私の大事な幼なじみが私を救ってくれただけで十分嬉しいよ」
そう言いながらメイネはポロポロと涙を流す。そして「うわぁぁぁぁ」と俺に抱きついて泣き出した。俺にはそれをなだめることしかできない。父も母も顔を伏せていた。
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一時間ほど泣いていた。そしてメイネは泣き疲れ、寝てしまった。俺はメイネを布団までおぶっていった。布団に入れ、父と母のところへ戻ろうとするとメイネが俺のズボンの裾を掴み、
「待ってよお、私を置いていかないで」
「ああわかった。いくらでも待つさ」
そうして少し待った後「もういい、ありがとう」とメイネは言って手を離した。だけど俺はメイネの横に布団を敷き、そのまま横になった。
「なんで…」
「俺が眠いからだよ」
「うん…ありがとう」
感謝されるのはなんかムズムズするが、俺はメイネが眠るまで布団にいることにした。そのとき、ふと明日学校があることに気付いた。メイネが学校に行けるまでになっていればいいけどな。そんなことを考えていると俺は寝てしまっていた。
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俺が起きると横の布団には誰もいなかった。がばっと起き上がって、靴を履いて父と母のいるところに行くと、メイネが母と父と普通に話している。
「メイネ、大丈夫なのか?」
「ん?うん、大丈夫になったよ。あとヤアル、こっち来て」
そう誘われてメイネの方へ行くと、メイネが唇にキスをしてきた。
「?!?!」
「まぁ!」
「ヤアル、今日のお礼。ありがとね」
すると俺は顔が真っ赤になり、その場に倒れた。俺今日何回寝るんだろ。
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「ごめんね?ヤアル」
「んあ、問題ない」
外を見ると、結構暗くなっていた。さて、晩飯食って風呂入って寝るか。そう思い俺は起き上がり、食卓の方に向かった。
「おはようヤアル、どう?具合は」
「大丈夫だよ」
「そう。晩御飯出来るのまだかかりそうよ」
「んじゃ風呂入ってくる」
そう言って着替えを取り、俺は風呂に向かう。風呂につくと、無性に外で走りたくなったので着替えを置いて外に出てみた。すると黒い物体が空を飛んでいるのが見えた。まあ想像がつくが魔族だろうな。1、2、3…ざっと10匹か。刀なしでもいけるか。まあ一応対話はしてみよう。
「絶対的な力発動」
そうして俺は黒い物体の方向へ飛んだ。
「お前か?上位死神と上位悪魔を倒したのは」
「いかにもそれは俺だが」
「そうか、じゃあおれ達はお前を殺す。何か言い残すことはあるか?」
「そうだな、戦わないと言う手はあるか?」
「ないな」
「そうか。じゃあ全員でかかってこい。準備が整うまで待ってやる」
「残念ながらこっちは準備万端なんでな。いくぞお前らぁ!」
「おー!」
10匹位の魔族が突っ込んできた。んじゃ拳を構えて、一匹。んーそれでも突っ込んでくるか。じゃあ二匹、三匹、四匹。ここまで力を見せても挑んでくるとは、すごい精神を持ってるな。それじゃあ俺も殺りますか。五匹、六匹、七匹、八匹……合計で十三匹か。
しっかし連携の取れた動きだった。普通にすごいぞ。っと、さっさと風呂に入らないとまずいな。俺は家まで飛んでいった。
ふいいいい、戦った後の風呂は気持ちいいね。んー、にしても人類を滅亡まで追い詰める魔族ってなんなんだろ。もしかして魔族じゃない?そんなことないか。そんなことを考えているとぼーっとしてきた。のぼせるなこれ。さっさと出るか。風呂を上がり、服を着て、食卓に戻った。
「ヤアル、もうすぐご飯できるよ」
「わかった」
そう言い、俺は椅子に座って魔族について考えたが、どれも推測の域を越えない。だから別の可能性を考えようとしたとき
「ご飯できたよー」
見ると食卓に食事の用意がし終わってる。俺はスプーンとフォークを取り、ご飯を食べる。とても美味しかった。毎度思うが人の味覚のすごさには惚れ惚れする。血なんかより断然旨いものを食っていたなんて。そんなことを考えていると食事を食べ終わっていた。俺は食器を片付け、寝室へ向かった。そして布団を敷いて、その上に寝転んだ。明日は学校か、なにもなければ良いがな。そう思いながら眠りについた。