プロローグ
なんなんだ人間は、俺ら虫を簡単に殺しやがって。俺らだって生きるために必死なんだよ。それをただ気持ち悪いから潰しやがって。お前ら人間も虫と同じ命ある生物なんだぞ!なんでったってそんな理由で殺されなきゃいけないんだよ。
俺は頭が良かったからなんとか逃げていたが、仲間達は殺されてしまう。そのたびに悲しんでいる。お前らも親や友達が死んだら悲しむだろう?俺らだってそんなもんだ!ちったぁ俺らのことも考えやがれ!
バシン!「くっそ、当たりそうだったのに逃がした」
ああ、俺もそろそろ年だな、こんな遅い攻撃も避けにくくなってきた。俺も好きな相手と交尾して子孫を残したかったなぁ。あーあ、もうあと数分で寿命かぁ。悔いしかない人生だったなぁ。そんな感傷に浸っていると、少しの風を感じた。自然のものでない。まさか、まさか!
バシン!
「よっし蚊潰したぁ」
く…そ…やっ…ぱり…人…間は…くそ…やろぉ…だ…。
――――――――――――――――――
「おい、おいおぬし、聞いておるか。聞いておったら返事をせい」
ん…ここは?俺は子供に、人間の子供に潰されて死んだはずだが。
「おぬし!聞いておったら返事をせい!」
「なんだよ、俺になにかようか?しかもお前は誰なんだよ」
「わし?わしは神様じゃ。ただし、輪廻転生を司る神じゃ」
「輪廻転生?あれか?死んだら別の生物に生まれ変わるって言うやつだろ?」
「そうじゃ。そしてお前さんにはお前さんのいた世界と別の世界の人間の勇者になってもらいたいんじゃ」
……………は?
「なんで俺が人間に?」
「お前さんの人間より卓越した知恵を使って、人間達を救って欲しいんじゃ」
「はあ?なんで俺が人間なんかを救わないといけないんだよ!」
「頼む!そうしないと人類が絶滅してしまうのじゃ」
「は?神様よぉ、俺が人間に恨みを持っていること知ってていってんだよなぁ?」
「ああ、しかしおぬしの卓越した知恵と、その世界の人間が扱う力で人類を滅亡から救って欲しいんじゃ。この通り!」
そう言って神様は土下座した。神様がここまでするというということは本当に何かあるんだろう。しかし、そんなことがあっても俺は人間への恨みは拭えない。俺は少し考える。そして、
「わかった。勇者になって人類を救うんだろ?やってやるからさっさと転生しろ」
「本当か?本当に良いのか?」
「やってやるからさっさと転生しろよ」
「ありがとう、本当にありがとう!」
「さっさとしろって」
「ああ、では今から転生させる」
そう言うと神は何かよくわからない言葉を唱え始めた。そして俺がこの場所から存在ごといなくなってきているのがわかった。
「それでは…転生!」
神がそう言うと俺は別の世界へ、人間が絶滅の危機に瀕している世界に飛んだ。